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行政書士試験過去問 国家賠償法1条 最高裁判所の判例

【平成29年行政書士試験出題】

【問題】国家賠償法1条に関する次の記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 通達は、本来、法規としての性質を有しない行政組織内部の命令にすぎず、その違法性を裁判所が独自に判断できるから、国の担当者が、法律の解釈を誤って通達を定め、この通達に従った取扱いを継続したことは、国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法なものと評価される。

2 検察官は合理的な嫌疑があれば公訴を提起することが許されるのであるから、検察官が起訴した裁判において最終的に無罪判決が確定したからといって、当該起訴が国家賠償法1条1項の適用上も当然に違法となるわけではない。

3 裁判官のなす裁判も国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するが、裁判官が行う裁判においては自由心証主義が認められるから、裁判官の行う裁判が国家賠償法1条1項の適用上違法と判断されることはない。

4 国会議員の立法行為(立法不作為を含む。)は、国家賠償法1条の定める「公権力の行使」に該当するものではなく、立法の内容が憲法の規定に違反する場合であっても、国会議員の当該立法の立法行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることはない。

5 政府が、ある政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため当該目標を達成できなかった場合には、国家賠償法1条1項の適用上当然に違法の評価を受ける。


【平成19年11月1日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償請求事件】

【判事事項】

国の担当者が,原爆医療法及び原爆特別措置法の解釈を誤り,被爆者が国外に居住地を移した場合に健康管理手当等の受給権は失権の取扱いとなる旨定めた通達を作成,発出し,これに従った取扱いを継続したことが,国家賠償法1条1項の適用上違法であり,当該担当者に過失があるとされた事例


【裁判要旨】

国の担当者が,原爆医療法及び原爆特別措置法の解釈を誤り,原爆医療法に基づき被爆者健康手帳の交付を受けた被爆者が国外に居住地を移した場合には,原爆特別措置法は適用されず,同法に基づく健康管理手当等の受給権は失権の取扱いとなる旨定めた通達(昭和49年7月22日衛発第402号各都道府県知事並びに広島市長及び長崎市長あて厚生省公衆衛生局長通達)を作成,発出し,その後,上記二法を統合する形で被爆者援護法が制定された後も,平成15年3月まで上記通達に従った取扱いを継続したことは,次の(1),(2)などの判示の事情の下においては,公務員の職務上通常尽くすべき注意義務に違反するものとして,国家賠償法1条1項の適用上違法なものであり,当該担当者には過失がある。

(1)国の担当者は,原爆医療法及び原爆特別措置法について,当初,国内に居住関係を有する被爆者に対してのみ適用されるものであって国外に居住する在外被爆者に対しては一切適用されないとの解釈の下に,その運用を行ってきたが,上記通達発出の時点では,被爆者が国内に居住関係を有することは原爆医療法の適用要件ではないとする司法判断を受けて,従前の解釈及び運用が上記二法の客観的な解釈として正当なものといえるか否かを改めて検討した結果,従前の解釈及び運用が法律上の根拠を欠くことを認識するに至り,これを改め,在外被爆者に対しても,一定の場合には,上記二法の適用を認め,健康管理手当等の支給要件に該当すれば支給認定をするという取扱いを採用していた。

(2)国の担当者は,上記検討の機会に,その職務上通常尽くすべき注意義務を尽くしていれば,手当等の支給に関する他の制度においては国内に住所や居住地を有することが支給要件とされている場合には法律にその旨明記されるのが通例であることとの整合性等の観点から,被爆者の国外への居住地の移転という法律に明記されていない事由によって健康管理手当等の受給権が失われることになるという法解釈は,その正当性が疑問とされざるを得ないものであることを当然に認識することが可能であったのに,そのような法解釈の下に上記通達を発出し,これに従い,健康管理手当等の受給権を取得した在外被爆者は出国と同時にその受給権を失うものとする取扱いを継続した。

(反対意見がある。)


【昭和57年3月12日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償】

【判事事項】

争訟の裁判と国家賠償責任


【裁判要旨】

裁判官がした争訟の裁判につき国家賠償法1条1項の規定にいう違法な行為があつたものとして国の損害賠償責任が肯定されるためには、右裁判に上訴等の訴訟法上の救済方法によつて是正されるべき瑕疵が存在するだけでは足りず、当該裁判官が違法又は不当な目的をもつて裁判をしたなど、裁判官がその付与された権限の趣旨に明らかに背いてこれを行使したものと認めうるような特別の事情があることを必要とする。


【昭和60年11月21日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償】

【判事事項】

一 国会議員の立法行為と国家賠償責任

二 在宅投票制度を廃止しこれを復活しなかつた立法行為の違法性の有無


【裁判要旨】

一 国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらずあえて当該立法を行うというごとき例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の適用上、違法の評価を受けるものではない。

二 在宅投票制度を廃止しこれを復活しなかつた立法行為は、国家賠償法1条1項にいう違法な行為に当たらない。

『一 原審の適法に確定したところによれば、本件の事実関係はおおむね次のとおりである。1 公職選挙法の一部を改正する法律(昭和27年法律第307号)の施行前においては、公職選挙法及びその委任を受けた公職選挙法施行令は、疾病、負傷、妊娠若しくは身体の障害のため又は産褥にあるため歩行が著しく困難である選挙人( 公職選挙法施行令55条2項各号に掲げる選挙人を除く。以下「在宅選挙人」という。)について、投票所に行かずにその現在する場所において投票用紙に投票の記載をして投票をすることができるという制度(以下「在宅投票制度」という。)を定めていたところ、昭和26年4月の統一地方選挙において在宅投票制度が悪用され、そのことによる選挙無効及び当選無効の争訟が続出したことから、国会は、右の公職選挙法の一部を改正する法律により在宅投票制度を廃止し、その後在宅投票制度を設けるための立法を行わなかつた(以下この廃止行為及び不作為を「本件立法行為」と総称する。)。
2 上告人は、明治45年1月2日生まれの日本国民で、大正13年以来小樽市内に居住し、公職選挙法9条の規定による選挙権を有していた者であるが、昭和6年に自宅の屋根で雪降ろしの作業中に転落して腰部を打撲したのが原因で歩行困難となり、同28年の参議院議員選挙の際には車椅子で投票所に行き投票したものの、同30年ころからは、それまで徐々に進行していた下半身の硬直が悪化して歩行が著しく困難になつたのみならず、車椅子に乗ることも著しく困難となり、担架等によるのでなければ投票所に行くことができなくなつて、同43年から同47年までの間に施行された合計8回の国会議員、北海道知事、北海道議会議員、小樽市長又は小樽市議会議員の選挙に際して投票をすることができなかつた。
二 上告人の本訴請求は、在宅投票制度は在宅選挙人に対し投票の機会を保障するための憲法上必須の制度であり、これを廃止して復活しない本件立法行為は、在宅選挙人の選挙権の行使を妨げ、憲法13条、15条1項及び3項、14条1項、44条、47条並びに93条の規定に違反するもので、国会議員による違法な公権力の行使であり、上告人はそれが原因で前記8回の選挙において投票をすることができず、精神的損害を受けたとして、国家賠償法1条1項の規定に基づき被上告人に対し右損害の賠償を請求するものである。
三 国家賠償法1条1項は、国又は公共団体の公権力の行使に当たる公務員が個別の国民に対して負担する職務上の法的義務に違背して当該国民に損害を加えたときに、国又は公共団体がこれを賠償する責に任ずることを規定するものである。
したがつて、国会議員の立法行為(立法不作為を含む。以下同じ。)が同項の適用上違法となるかどうかは、国会議員の立法過程における行動が個別の国民に対して負う職務上の法的義務に違背したかどうかの問題であつて、当該立法の内容の違憲性の問題とは区別されるべきであり、仮に当該立法の内容が憲法の規定に違反する廉があるとしても、その故に国会議員の立法行為が直ちに違法の評価を受けるものではない。そこで、国会議員が立法に関し個別の国民に対する関係においていかなる法的義務を負うかをみるに、憲法の採用する議会制民主主義の下においては、国会は、国民の間に存する多元的な意見及び諸々の利益を立法過程に公正に反映させ、議員の自由な討論を通してこれらを調整し、究極的には多数決原理により統一的な国家意思を形成すべき役割を担うものである。そして、国会議員は、多様な国民の意向をくみつつ、国民全体の福祉の実現を目指して行動することが要請されているのであつて、議会制民主主義が適正かつ効果的に機能することを期するためにも、国会議員の立法過程における行動で、立法行為の内容にわたる実体的側面に係るものは、これを議員各自の政治的判断に任せ、その当否は終局的に国民の自由な言論及び選挙による政治的評価にゆだねるのを相当とする。さらにいえば、立法行為の規範たるべき憲法についてさえ、その解釈につき国民の間には多様な見解があり得るのであつて、国会議員は、これを立法過程に反映させるべき立場にあるのである。憲法51条が、「両議院の議員は、議院で行つた演説、討論又は表決について、院外で責任を問はれない。」と規定し、国会議員の発言・表決につきその法的責任を免除しているのも、国会議員の立法過程における行動は政治的責任の対象とするにとどめるのが国民の代表者による政治の実現を期するという目的にかなうものである、との考慮によるのである。このように、国会議員の立法行為は、本質的に政治的なものであつて、その性質上法的規制の対象になじまず、特定個人に対する損害賠償責任の有無という観点から、あるべき立法行為を措定して具体的立法行為の適否を法的に評価するということは、原則的には許されないものといわざるを得ない。ある法律が個人の具体的権利利益を侵害するものであるという場合に、裁判所はその者の訴えに基づき当該法律の合憲性を判断するが、この判断は既に成立している法律の効力に関するものであり、法律の効力についての違憲審査がなされるからといつて、当該法律の立法過程における国会議員の行動、すなわち立法行為が当然に法的評価に親しむものとすることはできないのである。
以上のとおりであるから、国会議員は、立法に関しては、原則として、国民全体に対する関係で政治的責任を負うにとどまり、個別の国民の権利に対応した関係での法的義務を負うものではないというべきであつて、国会議員の立法行為は、立法の内容が憲法の一義的な文言に違反しているにもかかわらず国会があえて当該立法を行うというごとき、容易に想定し難いような例外的な場合でない限り、国家賠償法1条1項の規定の適用上、違法の評価を受けないものといわなければならない。
四 これを本件についてみるに、前記のとおり、上告人は、在宅投票制度の設置は憲法の命ずるところであるとの前提に立つて、本件立法行為の違法を主張するのであるが、憲法には在宅投票制度の設置を積極的に命ずる明文の規定が存しないばかりでなく、かえつて、その47条は「選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。」と規定しているのであつて、これが投票の方法その他選挙に関する事項の具体的決定を原則として立法府である国会の裁量的権限に任せる趣旨であることは、当裁判所の判例とするところである(昭和38年(オ)第422号同39年2月5日大法廷判決・民集18巻2号270頁、昭和49年(行ツ)第75号同51年4月14日大法廷判決・民集30巻3号223頁参照)。そうすると、在宅投票制度を廃止しその後前記8回の選挙までにこれを復活しなかつた本件立法行為につき、これが前示の例外的場合に当たると解すべき余地はなく、結局、本件立法行為は国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けるものではないといわざるを得ない。五 以上のとおりであるから、上告人の本訴請求はその余の点について判断するまでもなく棄却を免れず、本訴請求を棄却した原審の判断は結論において是認することができる。論旨は、原判決の結論に影響を及ぼさない点につき原判決を非難するものであつて、いずれも採用することができない。』


【昭和57年7月15日,最高裁判所第1小法廷,庶民貯金減価損害賠償】

【判事事項】

政府の経済政策の立案施行と国家賠償責任


【裁判要旨】

政府が物価の安定等の政策目標を実現するためにとるべき具体的な措置についての判断を誤り、ないしはその措置に適切を欠いたため右目標を達成できなかつたとしても、法律上の義務違反ないし違法行為として、国家賠償法上の損害賠償責任の問題を生ずるものではない。


【試験ポイント】✨
1✖「当然に違法」が間違い。【平成19年11月1日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償請求事件】
2〇【昭和53年10月20日, 最高裁判所第2小法廷,国家賠償】詳しくは,こちら
3✖【昭和57年3月12日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償】
4✖【昭和60年11月21日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償】
5✖【昭和57年7月15日,最高裁判所第1小法廷,庶民貯金減価損害賠償】