業務・試験対策

MEASURES

行政書士試験過去問 会社法解説

【令和3年行政書士試験出題】

【問題】株券が発行されない株式会社の株式であって、振替株式ではない株式の質入れに関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

1 株主が株式に質権を設定する場合には、質権者の氏名または名称および住所を株主名簿に記載または記録しなければ、質権の効力は生じない。

2 株主名簿に質権者の氏名または名称および住所等の記載または記録をするには、質権を設定した者は、質権者と共同して株式会社に対してそれを請求しなければならない。

3 譲渡制限株式に質権を設定するには、当該譲渡制限株式を発行した株式会社の取締役会または株主総会による承認が必要である。

4 株主名簿に記載または記録された質権者は、債権の弁済期が到来している場合には、当該質権の目的物である株式に対して交付される剰余金の配当(金銭に限る。) を受領し、自己の債権の弁済に充てることができる。

5 株主名簿に記載または記録された質権者は、株主名簿にしたがって株式会社から株主総会の招集通知を受け、自ら議決権を行使することができる。


相対的無効説↓

【昭和48年6月15日,最高裁判所第2小法廷,株式譲渡担保契約無効確認請求】

【判事事項】

一、商法204条1項但書による株式の譲渡制限と取締役会の承認のない株式譲渡の譲渡当事者間における効力

二、株式の譲渡担保と商法204条1項


【裁判要旨】

一、定款をもつて株式の譲渡につき取締役会の承認を要する旨定められている場合に、その承認をえないで株式が譲渡されても、右株式の譲渡は、譲渡当事者間においては有効であると解すべきである。

二、株式を譲渡担保に供することは、商法204条1項にいう株式の譲渡にあたると解すべきである。

『商法204条1項但書は、株式の譲渡につき、定款をもつて取締役会の承認を要する旨定めることを妨げないと規定し、株式の譲渡性の制限を許しているが、その立法趣旨は、もつぱら会社にとつて好ましくない者が株主となることを防止することにあると解される。そして、右のような譲渡制限の趣旨と、一方株式の譲渡が本来自由であるべきこととに鑑みると、定款に前述のような定めがある場合に取締役会の承認をえずになされた株式の譲渡は、会社に対する関係では効力を生じないが、 譲渡当事者間においては有効であると解するのが相当である。


【その他,重要判例】↓

【平成5年3月30日,最高裁判所第三小法廷,株主総会決議不存在等確認】

【判事事項】

一 代表取締役が取締役と認めていない者と株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律24条1項にいう取締役

二 いわゆる一人会社の株主が定款所定の取締役会の承認を得ないでした株式譲渡の効力


【裁判要旨】

一 代表取締役が取締役と認めていない者は、株式会社の監査等に関する商法の特例に関する法律24条1項にいう取締役に当たらない。

二 いわゆる一人会社の株主がした株式譲渡は、定款所定の取締役会の承認がなくても、会社に対する関係においても有効である。


【試験ポイント】✨
1✖ 会社法146条2項 株券発行会社の株式の質入れは、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。
2✖ 会社法148条 参照
3✖ 譲渡制限株式に質権を設定するには,当該譲渡制限株式を発行した株式会社の取締役会または株主総会による承認は不要。【昭和48年6月15日,最高裁判所第2小法廷株式譲渡担保契約無効確認請求】
4〇 会社法151条1項2項 154条1項 参照
5✖ 肢5のような条文は存在しない。


会社法(改正対応)↓

第146条(株式の質入れ)
株主は、その有する株式に質権を設定することができる。
2 株券発行会社の株式の質入れは、当該株式に係る株券を交付しなければ、その効力を生じない。

第148条(株主名簿の記載等)
株式に質権を設定した者は、株式会社に対し、次に掲げる事項を株主名簿に記載し、又は記録することを請求することができる。
一 質権者の氏名又は名称及び住所
二 質権の目的である株式

第151条(株式の質入れの効果)
株式会社が次に掲げる行為をした場合には、株式を目的とする質権は、当該行為によって当該株式の株主が受けることのできる金銭等(金銭その他の財産をいう。以下同じ。)について存在する。
一 第167条第1項の規定による取得請求権付株式の取得
二 第170条第1項の規定による取得条項付株式の取得
三 第173条第1項の規定による第171条第1項に規定する全部取得条項付種類株式の取得
四 株式の併合
五 株式の分割
六 第185条に規定する株式無償割当て
七 第277条に規定する新株予約権無償割当て
八 剰余金の配当
九 残余財産の分配
十 組織変更
十一 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)
十二 株式交換
十三 株式移転
十四 株式の取得(第1号から第3号までに掲げる行為を除く。)
2 特別支配株主(第179条第1項に規定する特別支配株主をいう。第154条第3項において同じ。)が株式売渡請求(第179条第2項に規定する株式売渡請求をいう。)により売渡株式(第179条の2第1項第2号に規定する売渡株式をいう。以下この項において同じ。)の取得をした場合には、売渡株式を目的とする質権は、当該取得によって当該売渡株式の株主が受けることのできる金銭について存在する。

第154条 登録株式質権者は、第151条第1項の金銭等(金銭に限る。)又は同条第2項の金銭を受領し、他の債権者に先立って自己の債権の弁済に充てることができる。
2 株式会社が次の各号に掲げる行為をした場合において、前項の債権の弁済期が到来していないときは、登録株式質権者は、当該各号に定める者に同項に規定する金銭等に相当する金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。
一 第151条第1項第1号から第6号まで、第8号、第9号又は第14号に掲げる行為 当該株式会社
二 組織変更 第744条第1項第1号に規定する組織変更後持分会社
三 合併(合併により当該株式会社が消滅する場合に限る。)第749条第1項に規定する吸収合併存続会社又は第753条第1項に規定する新設合併設立会社
四 株式交換 第767条に規定する株式交換完全親会社
五 株式移転 第773条第1項第1号に規定する株式移転設立完全親会社
3 第151条第2項に規定する場合において、第1項の債権の弁済期が到来していないときは、登録株式質権者は、当該特別支配株主に同条第2項の金銭に相当する金額を供託させることができる。この場合において、質権は、その供託金について存在する。