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行政書士は街の法律家 警察職員の職務執行に対する苦情の適正な処理について(通達)

警察法第78条の2に係る解釈・運用基準
この解釈・運用基準は、警察法第78条の2の規定に基づき公安委員会に対して文書により申し出られる苦情について定めるものである。
1 警察職員の職務執行に関する苦情
(1)警察職員の職務執行に関する苦情の定義
・警察職員が職務執行において違法、不当な行為をしたり、なすべきことをしなかったことにより何らかの不利益を受けたとして個別具体的にその是正を求める不服
・警察職員の不適切な執務の態様に対する不平不満をいう。
したがって、捜査、交通取締り、告訴・告発の取扱い、警察職員の執務の態様について、日時、場所、内容、被った不利益の内容又は警察職員の執務の態様に対する不満を個別具体的に摘示する苦情は本制度の対象となる。しかし、明らかに警察の任務とはいえない事項についての警察職員の不作為を内容とするものはもちろんのこと、申出者本人と直接関係のない一般論として申し出られた苦情、提言、悲憤慷慨等は対象とならない。


(2)相談との関係
相談とは、例えば犯罪の被害者等が、警察に対して、防犯指導、助言、相手方への警告、検挙等何らかの権限行使その他の措置を求めることを意味するものと解されるが、「苦情」と「相談」は明確に区別できるものではなく、公安委員会は、申出の内容を実質的に判断し、苦情に該当するものであれば、警察法第78条の2の規定に従い適切に処理し、その結果を申出者に通知することとなる。
2 文書の範囲
公安委員会を名あて人として提出された書面をいう。なお、現行法令上、各種申請手続においてEメール又はファクシミリによることを可能とする場合には、その旨を明確に規定することが通例であり、ここにいう文書にはEメール又はファクシミリは含まれない。
3 申出の手続
(1)受理
ア 体制
公安委員会事務担当部署のほか、申出者の利便に配慮する観点から、警察本部及び警察署の苦情担当部署においても受け付けることとする
イ 文書の様式
今般設けた苦情申出制度については、国民の利便性に配慮した柔軟な運用を行うことがその制度の趣旨にかなうものである。したがって、法令により様式を定めることとはしなかったものであり、様式の如何にかかわらず、全体の記載から警察職員の職務執行についての苦情と認められるものは、苦情として受理する。なお、都道府県公安委員会規則等により文書の様式を定めることは、同様の趣旨で不適当である。
ウ 文書作成の援助
苦情の申出の手続に関する規則第3条における「苦情申出書を作成することが困難であると認める場合」とは、文書作成に支障を生ずる身体上の障害を有している者、子供、外国人等文書作成が困難な者等を想定している。
エ 文書の補正
苦情の申出の手続に関する規則第4条において、定められた事項が記載されていない場合には、申出者に対し、期間を定めて補正を求めることができるとしているが、申出者に過重な負担を課すことを避ける観点から、できる限り申出時に補足説明を求め、又は電話等による補充調査を行うなどの方法により対応することとし、同条の規定の適用はこのような対応によっては、申出者の特定、苦情申出の意思及び内容の確認が困難な場合に行うこととする。
(2)公安委員会に対する報告等
公安委員会事務担当部署が、自ら直接受理した苦情申出書のほか、警察本部の他の所属や警察署において受理した苦情申出書すべてについてその整理に当たるとともに、速やかに公安委員会に対する報告を行うこととする。ただし、定型的な処理その他迅速な処理が可能な苦情については、公安委員会のあらかじめの指示の下で、調査及びその結果を踏まえた措置を講じ、その結果の報告と併せて受理の報告を行うことは許容される。公安委員会に対する報告については、公安委員会の議事運営の効率化の観点から、その指示により、合理的な方法がとられるものである。


4 苦情の処理
(1)公安委員会の指示
公安委員会は、都道府県警察に対し、事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置を行わせるとともに、その結果の報告を求めることとなる。また、当該調査が不十分であると認められる場合等必要に応じて苦情処理に関する指示を行うこととなる。なお、「法令又は条例の規定に基づき」とあるのは、上記の公安委員会の指示は、警察法第38条第3項又は第4項その他の法令の規定の範囲内で行われるべきものであるとの趣旨である。
(2)都道府県警察における調査等
警視総監及び道府県警察本部長(以下「本部長」という。)は、(1)の公安委員会の指示に従い、事実関係の調査及びそれを踏まえた措置をとることとなる。
(3)調査及び措置の結果の公安委員会に対する報告
公安委員会事務担当部署は、事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置状況について苦情担当者等から連絡を受けることとなる。公安委員会に対する報告については、公安委員会事務担当部署又は本部長等が行うこととなるが、公安委員会の議事運営の効率化の観点から、その指示により、合理的な方法がとられるものである。
5 処理結果の通知
(1)通知内容の決定
事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置についての都道府県警察からの報告を基に、公安委員会が通知内容を決定する。
(2)処理結果の通知文書の記載事項
通知文書には、申出の内容に応じて、
申し出られた苦情に係る事実関係の有無
事実関係が確認できた場合には、苦情の対象である職務執行の問題点の有無
問題点のある職務執行については、講じた措置等について記載することとなるが、どの程度の詳細さが求められるかについては事案に応じて適切なものであればよく、簡素かつ定型的なもので足りる場合もあると考えられる。
(3)処理結果の通知方法
公安委員会において郵送、手渡し等一定の方法を定めることとなる。
なお、この場合の「文書」には、苦情の申出の場合と同様に、Eメール及びファクシミリは含まれない。
6 苦情の処理及び処理結果の通知義務解除
(1)警察法第78条の2第2項各号の趣旨
第2項各号は、苦情の処理結果の通知義務が解除される場合についての規定である。
第2項各号に該当するか否かの判断は、公安委員会が行う。なお、第2項各号は、申出の受理に係る要件ではなく、公安委員会の処理結果通知義務を解除する要件であることから、第2項各号に該当するか否かを問わず第1項の苦情の申出に該当する限りすべて受理し、その内容等を公安委員会に報告する必要がある。
(2)第2項各号の解釈
ア 第1号
同号は、いわゆる「権利の濫用」に相当する場合を想定しており、
・同一人により同一内容に係る苦情申出が反復してなされた場合であって、客観的事情から合理的に判断して苦情としての実質的要件を欠いているとき
・極左暴力集団等が警察権力の弱体化手段であることを標榜しつつ苦情申出を行う場合等「申出者の都道府県警察の事務の適正な遂行を妨害する意図が外形的に表象される場合」に限られるものとなる。
したがって、捜査対象者(関係者)が当該捜査の中止を求めるもの等これまで「適法妥当な職務執行に対するいわれなき抗議・けん制」として受け付けないことが多かったと思われる苦情であっても必ず受理し、申出者の上記の意図が客観的に明らかでない限り、所要の処理を行い、その結果を申出者に通知することとなる。
イ 第2号
苦情申出者が申出後に転居等したため、申出を受けた公安委員会が新たな所在を知り得ないために申出者に通知できない場合を想定している。
ウ 第3号
複数人が同一内容の苦情について共同して申し出る場合を想定している。なお、このような場合には、苦情の申出の手続に関する規則第2条第2項に基
づき苦情を申し出る文書に記載された処理結果の通知先である代表者に処理結果を通知することで足りる。
(3)第2項各号が適用される場合の申出者への連絡
第1号に該当する場合には、同号に該当すると認められるため処理結果の通知は行わない旨を、何らかの方法により申出者に対して連絡するものとする。


7 その他
(1)苦情処理の標準的な期間
警察職員の職務執行は、個人の生命、身体及び財産の保護と公共の安全と秩序の維持全般にわたるものである。したがって、これに対する苦情は様々であり、その処理に要する時間も区々であることから、行政手続法第6条のような標準処理期間を定める旨の規定を置かなかったものである。ただし、警察法第78条の2第2項に「誠実に処理し」とあるとおり、社会通念上相当と認められる期間内に苦情の処理及び処理結果の通知を行うことは当然であり、苦情の処理に長い時間を要している場合であって、申出者からその処理の状況について問い合わせがあったときは、処理の経過を連絡するなどの配慮が必要である。
(2)申し出られた苦情が他の都道府県警察の職員に係るものであった場合の取扱い処理結果を通知する文書により申出者にその旨を教示の上、改めて当該職員が所属する都道府県公安委員会に申出をしてもらうこととなるが、苦情の処理の円滑化を図るために、当該苦情の処理に当たる公安委員会に対し、当該苦情について連絡することが望ましい。
(3)苦情の処理及び処理結果の通知に係る処分性
ア 行政不服審査法及び行政事件訴訟法の適用の有無
苦情処理及びその通知は、申出者その他の国民に対して何らの具体的な法律上の効果を発生させるものではないことから、行政庁が法令に基づき優越的立場において国民に権利を設定し、義務を課し、その他具体的な法律上の効果を発生させる行為をいうこれらの法律における処分には当たらず、これらの法律は適用されない。
イ 行政手続法の適用の有無
苦情処理及びその通知は、申出者その他の国民に対して何らの具体的な法律上の効果を発生させるものではないことから、申請に対する処分にも不利益処分にも当たらず、行政手続法は適用されない。
(4)苦情申出と、請願法における請願及び行政不服審査法における不服申立てとの関係
本制度による苦情申出は請願法に基づく請願に該当する場合もあり、その場合の苦情申出は請願の手続をより具体化した側面を有するものといえる。この場合において、苦情申出と請願は互いに排斥するものではなく、同一事項について重畳的に苦情申出及び請願を行うのか、又はいずれかを選択するのかについては申出者(請願者)の判断にゆだねられるものである。また、行政不服審査法に規定する不服申立ては行政庁の処分その他公権力の行使を対象とし、その取消し等を求めるものであるのに対し、警察法第78条の2の苦情申出は警察職員の職務執行全般を対象としている。したがって、不服申立ての対象となるものにつき苦情申出がなされた場合には、
・申出者に対し行政不服審査法の規定による不服申立てを行うことが可能であることを告知する。
・告知後もなお、申出者が苦情申出制度による処理を求め、かつ、当該申出内容が警察職員の職務執行に係る苦情に該当する場合には、当該申出者が行政不服審査法の規定による不服申立てを行うか否かを問わず、苦情申出制度による処理を行うこととなる。
別紙3
警察法に規定する苦情以外の苦情の処理の指針
1 公安委員会あてに申し出られた警察法に規定する苦情以外の苦情の処理
(1)所属(警視庁若しくは道府県警察本部の部に置かれる課若しくはこれに準ずる室、隊等の組織又は警察署をいう。)長は、その所属の職員が都道府県公安委員会(以下「公安委員会」という。)あての警察法に規定する苦情以外の苦情を受理した場合には、公安委員会事務担当部署に連絡し、当該連絡を受けた公安委員会事務担当部署は、公安委員会に報告するものとする。
(2)警視総監及び道府県警察本部長(以下「警察本部長」という。)は、公安委員会の指示を受け、当該苦情について、事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置を講じ、公安委員会に報告するものとする。
(3)公安委員会は、警察本部長からの報告に係る事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置について、申出者に対し、文書その他適当と認められる方法により通知するものとする。ただし、次のいずれかに該当する場合は、この限りでない。
ア 申出が都道府県警察の事務の適正な遂行を妨げる目的で行われたと認められる
とき。
イ 申出者の所在が不明であるとき。
ウ 申出者が他の者と共同で苦情の申出を行ったと認められる場合において、当該他の者に当該苦情に係る処理の結果を通知したとき。
エ 申出者が通知を求めていないと認められるとき。
オ 申出者の氏名が明らかでないとき。
2 警察あてに申し出られた文書による苦情の処理
(1)所属長は、その所属の職員が警察あての文書による苦情を受理した場合には、苦情担当課を経由して警察本部長に報告するものとする。
(2)警察本部長は、事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置について、申出者に対し、文書により、自ら通知を行い、又は所属長その他の職員に通知を行わせるものとする。ただし、1の(3)のただし書に規定する場合に該当するときは、この限りでない。
(3)警察本部長は、当該苦情についての事実関係の調査及びその結果を踏まえた措置を公安委員会に報告するものとする。
3 警察あてに申し出られた文書によらない苦情の処理
(1)警察あての文書によらない苦情については、2に準じて処理するものとする。ただし、申出者に対する処理結果の通知は、文書その他適当と認められる方法によるものとする。
(2)所属長は、(1)にかかわらず、その所属の職員が警察あての文書によらない苦情で迅速な処理を要するものを受理した場合には、その所属の職員に速やかに処理させるとともに、申出者に対しその結果を通知させた後、苦情担当課を経由して警察本部長に報告するものとし、当該報告を受けた警察本部長は、公安委員会に報告するものとする。
4 警察法第78条の2に係る解釈・運用基準の準用
1から3までに定めるもののほか、警察法に規定する苦情以外の苦情の処理については、警察法第78条の2に係る解釈・運用基準に準じて行うものとする。


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