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行政書士試験過去問 権限の不行使と国家賠償責任

【平成21年行政書士試験出題】

【問題】権限の不行使と国家賠償責任に関する次の記述のうち、 最高裁判所の判例に照らし、誤っているものはどれか。

1 宅地建物取引業法に基づき免許を更新された業者が不正行為により個々の取引関係者に対して被害を負わせたとしても、当該免許制度は業者の人格 ・資質等を一般的に保証するものとはにわかに解しがたく、免許権者が更新を拒否しなかったことは、 被害を受けた者との関係において直ちに国家賠償法1条1項の適用上達法となるものではない。

2 医薬品の副作用による被害が発生した場合であっても、 監督権者が当該被害の発生を防止するために監督権限を行使しなかった不作為は、不作為当時の医学的 ・薬学的知見の下で当該医薬品の有用性が否定されるまでに至っていない場合には、被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上達法となるものではない。

3 国または公共団体の公務員による規制権限の不行使は、その権限を定めた法令の趣旨、目的や、その権限の性質等に照らし、具体的事情の下において、その不行使が許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、その不行使により被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上達法となる。

4 鉱山労働者を保護するための省令が後に科学的知見に適合しない不十分な内容となったとしても、制定当時の科学的知見に従った適切なものである場合には、省令を改正しないことが、 被害を受けた者との関係において国家賠償法1条1項の適用上違法となるものではない。

5 犯罪被害者が公訴の提起によって受ける利益は、公益上の見地に立って行われる公訴の提起によって反射的にもたらされる事実上の利益にすぎず、法律上保護された利益ではないので、検察官の不起訴処分は、犯罪被害者との関係で国家賠償法1条1項の適用上達法となるものではない。


【平成7年6月23日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償、民訴法198条2項 による返還及び損害賠償】

【判事事項】

一 厚生大臣による医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為と国家賠償法1条1項の違法性

二 厚生大臣による医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為が国家賠償法1条1項の適用上違法ではないとされた事例

三 厚生大臣が医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことと国家賠償法1条1項の違法性

四 厚生大臣が医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことが国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえないとされた事例


【裁判要旨】

一 厚生大臣による医薬品の日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為は、その時点における医学的、薬学的知見の下で、当該医薬品がその副作用を考慮してもなお有用性を肯定し得るときは、国家賠償法1条1項の適用上違法ではない。

二 厚生大臣がクロロキン製剤につき日本薬局方への収載及び製造の承認等の行為をした昭和35年から同39年までの間は、その副作用であるクロロキン網膜症に関する報告が内外の文献に現れ始めたばかりで、報告内容も長期連用の場合のクロロキン網膜症の発症の危険性及び早期発見のための眼科的検査の必要性を指摘するにとどまり、クロロキン製剤の有用性を否定するものではなく、我が国で報告されたクロロキン網膜症の症例は少数であったなど判示の事実関係の下においては、厚生大臣の右各行為は、国家賠償法1条1項の適用上違法ではない。

三 厚生大臣が医薬品の副作用による被害の発生を防止するために薬事法上の権限を行使しなかったことが、当該医薬品に関するその時点における医学的、薬学的知見の下において、薬事法の目的及び厚生大臣に付与された権限の性質等に照らし、その許容される限度を逸脱して著しく合理性を欠くと認められるときは、右権限の不行使は、国家賠償法1条1項の適用上違法となる。

四 昭和34年から同50年までの間にクロロキン製剤を服用した患者らがその副作用であるクロロキン網膜症にり患した場合において、この間のクロロキン網膜症に関する医学的、薬学的知見の内容がクロロキン製剤の有用性を否定するまでのものではなく、クロロキン製剤は、難病である腎疾患及びてんかんに対する有効性が認められ、クロロキン網膜症を考慮してもなお有用性を肯定し得るものとして臨床の現場でその使用が是認されていたこと、厚生大臣は、昭和四二年以降、クロロキン製剤を劇薬及び要指示医薬品に指定し、使用上の注意事項等を定めて医薬品製造業者等に対する行政指導によりこれを添付文書等に記載させるなどの措置を講じ、右各措置がその目的及び手段において一応の合理性を有することなど判示の事情があるときは、厚生大臣が右各措置以外に薬事法上の権限を行使してクロロキン製剤の日本薬局方からの削除、製造の承認の取消し等の措置を採らなかったことは、国家賠償法1条1項の適用上違法とはいえない。


【平成2年2月20日,最高裁判所第3小法廷,損害賠償】

【判事事項】

犯罪の被害者ないし告訴人からの捜査の不適正又は不起訴処分の違法を理由とする国家賠償請求の可否


【裁判要旨】

犯罪の被害者ないし告訴人は、捜査機関の捜査が適正を欠くこと又は検察官の不起訴処分の違法を理由として、国家賠償法の規定に基づく損害賠償請求をすることができない。


【試験ポイント】✨
権限の不行使と国家賠償責任の問題は,直近で令和3年度も同じ判例が出題されています!
1〇 【平成元年11月24日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償】詳しくは,こちら
2〇 上記のとおり【平成7年6月23日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償、民訴法198条2項による返還及び損害賠償】
3〇 【平成16年4月27日,最高裁判所第三小法廷,損害賠償,民訴法260条2項による仮執行の原状回復請求事件】詳しくは,こちら
4✖ 【平成16年4月27日,最高裁判所第三小法廷,損害賠償,民訴法260条2項による仮執行の原状回復請求事件】
5〇 上記のとおり【平成2年2月20日,最高裁判所第3小法廷,損害賠償】