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行政書士試験過去問 同時履行の抗弁権

【令和2年行政書士試験出題】

【問題】同時履行の抗弁権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものはどれか。

1 双務契約が一方当事者の詐欺を理由として取り消された場合においては、詐欺を行った当事者は、当事者双方の原状回復義務の履行につき、同時履行の抗弁権を行使することができない。

2 家屋の賃貸借が終了し、賃借人が造作買取請求権を有する場合においては、賃貸人が造作代金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができる。

3 家屋の賃貸借が終了し、賃借人が敷金返還請求権を有する場合においては、賃貸人が敷金を提供するまで、賃借人は、家屋の明渡しを拒むことができる。

4 請負契約においては仕事完成義務と報酬支払義務とが同時履行の関係に立つため、物の引渡しを要する場合であっても、特約がない限り、仕事を完成させた請負人は、目的物の引渡しに先立って報酬の支払を求めることができ、注文者はこれを拒むことができない。

5 売買契約の買主は、売主から履行の提供があっても、その提供が継続されない限り、同時履行の抗弁権を失わない。


【昭和47年9月7日,最高裁判所第一小法廷,登記抹消手続等本訴請求、所有権移転登記手続等反訴請求】

【判事事項】

売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務と同時履行


【裁判要旨】

売買契約が詐欺を理由として取り消された場合における当事者双方の原状回復義務は、同時履行の関係にあると解するのが相当である。


【昭和29年7月22日, 最高裁判所第一小法廷,家屋明渡等請求】

【判事事項】

造作買取請求権行使の場合における造作代金支払義務と家屋明渡義務との関係・留置権または同時履行抗弁権の成否


【裁判要旨】

借家法第5条により造作の買収を請求した家屋の賃借人は、その代金の不払を理由として右家屋を留置し、または右代金の提供がないことを理由として同時履行の抗弁により右家屋の明渡を拒むことはできない。


【昭和49年9月2日,最高裁判所第一小法廷,家屋明渡請求】

【判事事項】

賃借家屋明渡債務と敷金返還債務との間の同時履行関係の有無

【裁判要旨】

家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のないかぎり、同時履行の関係に立たない。


【昭和34年5月14日,最高裁判所第一小法廷,引受債務金請求】

【判事事項】

履行の提供と同時履行の抗弁権の消滅。


【裁判要旨】

双務契約の当事者の一方は、相手方の履行の提供があつても、その提供が継続されないかぎり、同時履行の抗弁権を失うものではない。


【その他,よく出る重要判例:民法533条】↓

【昭和57年1月19日,最高裁判所第三小法廷,抵当権設定登記抹消登記手続】

【判事事項】

抵当債務の弁済と抵当権設定登記の抹消登記手続との同時履行関係の有無


【裁判要旨】

抵当債務は、抵当権設定登記の抹消登記手続より先に履行すべきもので、後者とは同時履行の関係に立たない。


【平成6年9月8日,最高裁判所第一小法廷,株式返還】

【判事事項】

債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還との同時履行関係の有無


【裁判要旨】

債務の弁済と譲渡担保の目的物の返還とは、前者が後者に対し先履行の関係にあり、同時履行の関係に立たない。


【試験ポイント】✨

1✖【昭和47年9月7日,最高裁判所第一小法廷,登記抹消手続等本訴請求、所有権移転登記手続等反訴請求】

2✖【昭和29年7月22日, 最高裁判所第一小法廷,家屋明渡等請求】

3✖【昭和49年9月2日,最高裁判所第一小法廷,家屋明渡請求】

4✖ 民法第633条(報酬の支払時期)『報酬は、仕事の目的物の引渡しと同時に、支払わなければならない。ただし、物の引渡しを要しないときは、第624条第1項の規定を準用する。』

5〇【昭和34年5月14日,最高裁判所第一小法廷,引受債務金請求】