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行政書士試験民法改正新設【第644条の2(復受任者の選任等)】

【新民法(改正後)】

第644四条の2(復受任者の選任等)
受任者は、委任者の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復受任者を選任することができない。
2 代理権を付与する委任において、受任者が代理権を有する復受任者を選任したときは、復受任者は、委任者に対して、その権限の範囲内において、受任者と同一の権利を有し、義務を負う。


【出典:民法(債権関係)の改正に関する検討事項(12)詳細版】

『(補足説明)
1 問題の所在
委任契約における受任者の自己執行義務について,明文の規定はない。民法第104条は,任意代理人は原則として復代理人を選任することができないことについて,同法第105条は復代理人を選任した場合に代理人が負う責任について,それぞれ規定しているが,これらの代理の規定は主に代理行為の外部関係を念頭に置くものであるし,また,代理権の授与を伴わない委任にはもともと適用されない。しかし,委任契約は信頼関係を基礎とするから,受任者は原則として自ら事務処理をしなければならず,復委任は例外的にのみ許容されると解されている。そこで,このような原則を明文で規定するかどうか,また,例外的に復委任が許容される場合としてどのような場合が考えられるかが問題となる。
2 自己執行義務に関する具体的規律
前記のとおり,委任契約は信頼関係を基礎とするから,受任者は原則として自ら事務処理をしなければならないとされている。しかし,復委任が常に許容されないとすればかえって当事者にとって不利益であるから,受任者に代理権があるときは民法第104条により,代理権がないときは同条の類推適用により,委任者の許諾を得たとき又はやむを得ない事由があるとき(復委任者を選任しなければかえって委任の本旨に反するとき)には復委任を認めるという見解が有力である。
他方,複雑化した今日の社会においては復委任を認める必要がある場合も多いところ,上記の見解はこれを許容する範囲を限定しすぎているとの批判もある。
以上を踏まえ,受任者の自己執行義務及びその例外として復委任をすることができる場合について,次のような考え方が提示されている。
一つの考え方として,委任者の許諾を得たときのほか,受任者に自ら委任事務を処理することを期待するのが相当でないときは復委任を認めるとの考え方が提示されている(参考資料1[検討委員会試案]・371頁)。この考え方によれば,受任者の知識,経験や専門的能力などに鑑みると,受任者が自ら委任事務を処理することを期待することが相当ではなく,むしろ第三者に復委任した方が委任者の利益の観点から見て合理的であると認められるような場合には,復委任が許容されるものとされる。
また,有償委任においては委任の本旨がそれを許すとき及びやむを得ない事由があるときでなければ復委任をすることができないが,無償委任においては委任の本旨が復委任を許さない場合を除いて復委任をすることができるとの考え方も示されている(参考資料2[研究会試案]・215頁,217頁)。以上のような考え方について,どのように考えるか。
3 復委任が認められる場合の受任者の責任
民法第105条は復代理人を選任した代理人の責任について規定しているが,代理権の授与を伴わない委任における復委任の場合には,同条は適用されないから,その場合における受任者の責任については規定が欠けている。そこで,代理権の授与を伴うかどうかを問わず,復委任が認められる場合の受任者の責任に関する規定を設けることが考えられる。なお,現行法の解釈としては,代理権の授与を伴わない場合についても同条を類推適用する見解が有力である。受任者が復受任者を選任した場合は,受任者はその債務の履行のために第三者を用いることになるから,この場合の受任者の責任を検討するに当たっては,第三者の行為によって債務不履行が生じた場合における債務者の責任に関する規律(部会資料5-1,第6,2(19頁)参照)との整合性に留意する必要がある。第三者の行為によって債務不履行が生じた場合における債務者の責任については様々な考え方が主張されているが,伝統的通説とされる見解に立てば,民法第105条第1項本文の規定は,履行代行者の使用が法律上明文で許されている場合の債務者の責任と同様の責任を認めたものといえる。
しかし,この場合の債務者の責任については,不当に軽いとの批判もある(部会資料5-2,第6,2(113頁)参照)。このほか,復受任者を選任した受任者の責任の具体的内容を検討するに当たっては,委任契約が有償であるか無償であるかによって責任の内容を区別するか,受任者が委任者の指名に従って復受任者を選任した場合の責任の内容を軽減するかなどの観点にも留意が必要であると考えられる。以上を踏まえ,復受任者を選任した場合における受任者の責任について,どのように考えるか。
4 委任者と復受任者との関係
(1)復委任が認められる場合であっても,委任者と復受任者との間には直接の契約関係がない以上,直接の権利義務関係は生じないのが原則である。しかし,民法第107条第2項は,復代理人は本人及び第三者に対して代理人と同一の権利義務を有すると規定しており,これは,本人・復代理人間に本人・代理人間におけるのと同様の内部関係を成立させたものと解する見解が有力である。
他方,代理権の授与を伴わない委任については,同項を類推適用して復受任者が委任者に対して直接の権利義務を負うとする見解もあるが,判例(最判昭和31年10月12日民集10巻10号1260頁)は,物品販売の委託を受けた問屋が他の問屋にこれを再委託した場合について,同項を準用すべきでないとしている。
(2)委任者と復受任者との関係には,2つの局面がある。その第1は,復受任者の委任者に対する義務という局面であり,善管注意義務,忠実義務,報告義務,受領物等の引渡義務等が問題とされる。この点について,委任契約に伴って代理権が授与される場合には復受任者が行った対外的な行為の効果が直接に委任者に帰属するため,委任者が復受任者の行為を直接コントロールすることができるようにする必要があるとして,復受任者は,委任者に対し,復委任において定めた範囲内で,受任者が原委任によって委任者に対して負うのと同一の義務を負うものとすべきであるという考え方が提示されている(参考資料1[検討委員会試案]・371頁以下)。このような考え方について,どのように考えるか。
(3)第2は,復受任者の委任者に対する権利という局面であり,報酬,費用及び損害賠償の請求が問題になる。この点については,復受任者がその報酬請求権について,受任者の委任者に対する金銭債権から優先弁済を受けるのを認めるか,受任者の委任者に対する金銭債権について復受任者と一般債権者が競合することを認めるかがポイントとなる。ここでも,委任契約に伴って代理権が授与される場合には,復受任者が行った対外的な行為の効果が委任者に直接帰属するという関係があるから,受任者の委任者に対する金銭債権から優先弁済を受けるのと同様の地位を復受任者に認めるべきであるとして,復受任者から委任者に対する直接請求権を認める考え方が提示されている(参考資料1[検討委員会試案]・371頁以下)が,どのように考えるか。また,復受任者の委任者に対する報酬等の直接請求権を認める場合には,その要件及び効果をどのように考えるかが問題となる。具体的には,例えば,直接請求権の行使に先立って受任者に対して報酬の支払を催告することを必要とすべきか,受任者の無資力を要件とするか,委任者に対する請求は書面をもって行うことが必要か,復受任者の委任者に対する請求に,受任者に対する弁済を禁止する効力を与えるかなどが問題となり得る。これらの問題は,民法第613条についても問題となり得るところであり,また,下請負人の注文者に対する直接請求権の議論(前記第2,7(2))との整合性にも留意する必要があるが,どのように考えるか。』


民法(債権関係)の改正に関する検討事項(12)詳細版,こちら


旧民法106条が105条に繰り上げ↓

第104条(任意代理人による復代理人の選任)
委任による代理人は、本人の許諾を得たとき、又はやむを得ない事由があるときでなければ、復代理人を選任することができない。

第105条(法定代理人による復代理人の選任)
法定代理人は、自己の責任で復代理人を選任することができる。この場合において、やむを得ない事由があるときは、本人に対してその選任及び監督についての責任のみを負う。

第106条(復代理人の権限等)
復代理人は、その権限内の行為について、本人を代表する。
2 復代理人は、本人及び第三者に対して、その権限の範囲内において、代理人と同一の権利を有し、義務を負う。