行政書士試験民法改正【第626条(期間の定めのある雇用の解除)】
第626条(期間の定めのある雇用の解除)
雇用の期間が5年を超え、又はその終期が不確定であるときは、当事者の一方は、5年を経過した後、いつでも契約の解除をすることができる。
2 前項の規定により契約の解除をしようとする者は、それが使用者であるときは3箇月前、労働者であるときは2週間前に、その予告をしなければならない。
『(補足説明)
1 問題の所在
民法第626条は,5年を超える期間を定めた雇用契約(商工業の見習を目的とする雇用については,10年)について,当事者はいつでも解除をすることができるとしている。この規定は,期間の定めのある雇用契約では,やむを得ない事由がない限り,契約を途中で解除することができない(同法第628条)とされることから,長期の定めのある雇用契約が締結された場合に,一方当事者の意に反して契約の継続が強制される結果となるのは公益に反することから,これを防止する趣旨の規定であるとされている。
しかし,現在では,労働基準法によって,雇用期間の上限は,原則として3年(特例の上限が5年)とされている(同法第14条第1項)。この規定は,労働者の人身拘束の弊害に鑑み,契約による拘束期間を民法より短期に定めたものであるとされており,同項所定の期間を超える期間の契約を締結した場合には,同法第13条により,当該超過部分の期間の定めが無効になるという見解が通説であるとされる。
この見解を前提とすると,民法第626条の規定は,実質的にその存在意義を失っていると指摘されている。
2 立法提案
上記のとおり,労働基準法の規定との関係で民法第626条の実質的な存在意義は失われているという理解に基づき,同条の規定を削除すべきであるという考え方が提示されている。もっとも,この考え方に対しては,以下のような問題があると言われている。
第一に,「一定の事業の完了に必要な期間を定める」雇用契約については,労働基準法第14条第1項の期間制限が適用されないが,この「一定の事業の完了に必要な期間」が5年を超える場合には,民法第626条の規定が適用されるとことになるのだから,同条を削除すると,このような場合に当事者の解除権が認められないことになるというものである。
第二に,労働基準法第14条第1項所定の期間を超える期間の契約を締結した場合に関する問題である。通説や裁判例(東京地判平成2年5月18日労判563号24頁(読売日本交響楽団事件))は,同項所定の期間を超える期間の契約を締結した場合には,同法第13条により,超過部分の期間の定めが無効となり,契約期間 は3年(特例に該当する場合は5年)に縮減されるが,この縮減後の期間を過ぎても労働関係が継続されたときは,黙示の更新(民法第629条第1項)がされるとする。
しかし,この点については,学説上,労働者の人身拘束の弊害を防止するために民法よりも短い期間を定めたという労働基準法第14条の趣旨から,3年(特例に該当する場合は5年)を超える期間について,使用者の側から労働者に労務の提供を強制することはできないが,労働者の側からは,当該期間の定めは有効であり,使用者に対して当該期間の雇用を主張することができるとする見解も有力に主張されている(片面的無効説)。この有力説を前提とすると,労働基準法第14条第1項所定の期間を超える期間の契約が締結された場合には,使用者からの解除に民法第626条が適用されると解する余地があり,その場合には,同条を削除することには問題があると言われている。 以上を踏まえて,民法第626条を削除すべきであるという考え方について,どのように考えるか。』
民法(債権関係)の改正に関する検討事項(12)詳細版,こちら
第13条
この法律で定める基準に達しない労働条件を定める労働契約は、その部分については無効とする。この場合において、無効となつた部分は、この法律で定める基準による。
第14条
労働契約は、期間の定めのないものを除き、一定の事業の完了に必要な期間を定めるもののほかは、3年(次の各号のいずれかに該当する労働契約にあつては、5年)を超える期間について締結してはならない。
一 専門的な知識、技術又は経験(以下この号において「専門的知識等」という。)であつて高度のものとして厚生労働大臣が定める基準に該当する専門的知識等を有する労働者(当該高度の専門的知識等を必要とする業務に就く者に限る。)との間に締結される労働契約
二 満60歳以上の労働者との間に締結される労働契約(前号に掲げる労働契 約を除く。)