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行政書士試験民法改正【第609条(減収による賃料の減額請求)】

【新民法(改正後)】

第609条(減収による賃料の減額請求)
耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人は、不可抗力によって賃料より少ない収益を得たときは、その収益の額に至るまで、賃料の減額を請求することができる。


【試験ポイント】✨

改正ポイントは,耕作又は牧畜を目的とする土地の賃借人のみを対象


【出典:民法(債権関係)の改正に関する検討事項(11)詳細版】

『(補足説明)

1 民法は,収益を目的とする土地の賃貸借(宅地の賃貸借を除く。)について,一定の事情変更があった場合における賃料の減額請求の規定を設けている(同法第609条)。この規定は,主に農地の賃貸借を念頭に置いて,凶作の場合における小作料の減額を認めた規定であるとされているが,今日では,後述する農地法上の借賃の増減請求権の存在により(同法第20条),実質的に機能していないと言われている。

他方,特に長期にわたる賃貸借契約においては,将来,事情の変更によって適切な賃料が変わり得ることが想定されるものの,契約時点で見通しを立てて,適正な賃料を定めることが困難であるとの指摘がある。そのため,将来,賃料の算定の基礎となった事情に変化が生じた場合に備えて,合理的な賃料改定の仕組みを設ける必要があるとの指摘がされている。特別法では,すでに借地借家法において,契約締結後の事情変更に応じて地代等を増減額する仕組みが用意されている(同法第11条,第32条)。

また,農地法にも,これに類するものとしての借賃等の増額又は減額の請求権の規定が設けられている(同法第20条)。以上を踏まえ,民法上の一般的な制度として,賃料の増減額請求権について規定を設けるべきであるという考え方が提示されている。もっとも,借地借家法上の制度は生存権的な性格を有するため一定の強行法規性があると言われているが,賃貸借一般を対象とする制度として導入する場合には,任意規定であることを明示することが併せて提案されている(参考資料1検討委員会試案・322頁)。以上のような考え方について,どのように考えるか。

2 他方で,民法第609条の賃料減額請求権の規定については,前述のように,農地法第20条の存在により今日では実質的に機能していないと言われており,この規定及び関連する民法第610条の規定は削除すべきであるという考え方が提示されているが,どのように考えるか。このほか,賃料の支払時期に関する同法第614条は,そのただし書において農地の賃貸借(収穫の季節がある土地の賃貸借)のみに適用される規定を設けているところ,このように専ら農地に適用される断片的な規定が民法上維持されることについては,疑問を呈する見解もある。同法第617条第2項も,これと同様に農地の賃貸借(収穫の季節がある土地の賃貸借)のみに適用される規定であって,同様の疑問が呈せられている。』


民法(債権関係)の改正に関する検討事項(11)詳細版,こちら


【農地法】↓

第20条(借賃等の増額又は減額の請求権)
借賃等(耕作の目的で農地につき賃借権又は地上権が設定されている場合の借賃又は地代(その賃借権又は地上権の設定に付随して、農地以外の土地についての賃借権若しくは地上権又は建物その他の工作物についての賃借権が設定され、その借賃又は地代と農地の借賃又は地代とを分けることができない場合には、その農地以外の土地又は工作物の借賃又は地代を含む。)及び農地につき永小作権が設定されている場合の小作料をいう。以下同じ。)の額が農産物の価格若しくは生産費の上昇若しくは低下その他の経済事情の変動により又は近傍類似の農地の借賃等の額に比較して不相当となつたときは、契約の条件にかかわらず、当事者は、将来に向かつて借賃等の額の増減を請求することができる。ただし、一定の期間借賃等の額を増加しない旨の特約があるときは、その定めに従う。

2 借賃等の増額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、増額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃等を支払うことをもつて足りる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払つた額に不足があるときは、その不足額に年10パーセントの割合による支払期後の利息を付してこれを支払わなければならない。

3 借賃等の減額について当事者間に協議が調わないときは、その請求を受けた者は、減額を正当とする裁判が確定するまでは、相当と認める額の借賃等の支払を請求することができる。ただし、その裁判が確定した場合において、既に支払を受けた額が正当とされた借賃等の額を超えるときは、その超過額に年10パーセントの割合による受領の時からの利息を付してこれを返還しなければならない。