行政書士試験民法改正【第520条の4(指図証券の所持人の権利の推定)】
第520条の4(指図証券の所持人の権利の推定)
指図証券の所持人が裏書の連続によりその権利を証明するときは、その所持人は、証券上の権利を適法に有するものと推定する。
試験で出題されるとすれば,改正条文そのままだと思います。その理由は,改正された条文を勉強しているかを問う方式にならざるを得ないからです。また,条文の「推定する」と「見做す(みなす)」の違い,特に下記の補足説明でも指摘されていることからも,注意が必要です🌸
『(補足説明)1 商法第519条第1項は,小切手法第19条を準用することにより,裏書が連続する指図証券の所持に形式的資格を付与している。また,商法第519条第2項は,小切手法第21条を準用することにより,裏書が連続する指図証券を裏書により譲り受けた指図証券の譲受人が,譲渡人の無権利等について善意無重過失である場合には,当該指図証券を取得することができるとしている。これらの規定は,裏書の連続と最終被裏書人が所持人であるということを主張・立証するだけで,手形上の権利者であることを推定するという法律上の推定を認めるとともに(資格授与的効力),形式的資格を信頼して指図証券を譲り受けた譲受人に善意取得を認めることで,指図証券の流通の保護を図ろうとするものである。これは,指図証券の流通保護のために最も重要な規定の一つであるとともに,債権一般を表章する有価証券にも妥当する規律であることから,本文では,これらと同内容の規定を民法に置くことを提案している。2 本文①は,商法第519条第1項,小切手法第19条に相当する規定を設けることを提案するものである。もっとも,小切手法第19条第1文は,「裏書シ得ベキ小切手ノ占有者ガ裏書ノ連続ニ依リ其ノ権利ヲ証明スルトキハ之ヲ適法ノ所持人ト看做ス」と規定しているが,判例(最判昭和36年11月24日民集15巻 10号2519頁)は,手形法第16条第1項についてであるが,同条にいう「看做ス」とは,推定するという意味であると判示している。この点については,学説上も,同条は推定規定であり,反証を許す趣旨であるとする説が有力である。そこで,本文①の第1文については,みなし規定ではなく推定規定とすることを提案している。なお,小切手法第19条第4文については,反証を許さないみなし規定であると一般に考えられているが,これについても,推定規定として見直すべきであるという立法提案がある。3 本文②は,基本的に,商法第519条第2項,小切手法第21条に相当する規定を設けることを提案するものである。(1) 商法第519条第2項が準用する小切手法第21条は,「事由ノ何タルヲ問ハ ズ小切手ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合」に善意取得が認められると規定している。ここでは,無権利者からの譲受人が善意取得の対象となることは明記されているが,譲渡人が制限行為能力者である場合,譲渡人の意思表示に瑕疵がある場合又は代理人が無権限であった場合にも,それらの瑕疵が善意取得によって治癒されるかという点については明らかでないため,この文言の解釈をめぐって見解が対立している。譲渡人が無権利の場合にのみ,善意取得による譲受人の保護が認められるとする見解は,善意取得は,譲渡人の形式的資格に対する信頼を保護する制度であるところ,形式的資格の効果としては,証券の占有者が権利者として推定されるにとどまり,証券の占有者が代理権を有することや制限行為能力者でないことが推定されるわけではないため,善意取得の適用はないとするものである。これに対して,譲渡人の無権利以外の場合にも善意取得を認めるという見解は,譲渡人の行為能力等についても,手形の外形からは分かりにくく,善意取得によって保護する必要性があることや,「事由ノ何タルヲ問ハズ」という文言を根拠とするものである。指図証券の善意取得が認められる範囲については,以上のように見解が対立しており,適切な判例もない現段階においてこの点を立法的に解決することは 困難であり,引き続き解釈に委ねることが適当であると思われる。しかし,小切手法第21条の「事由ノ何タルヲ問ハズ小切手ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合」 という文言が不明確であることに起因して前記の見解の対立が生じていると指摘されているように,この文言は,善意取得の範囲を明らかにする役割を果たしていないと言える。そこで,有価証券に関する通則的な規定を設ける場合には,この「事由ノ何タルヲ問ハズ小切手ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合」という文言は盛り込まないこととした上で,善意取得が認められる範囲について解釈に委ねるとする立法提案が示されている。以上を踏まえて,本文②では,「事由ノ何タルヲ問ハズ小切手ノ占有ヲ失ヒタル者アル場合」という文言は承継しないことを提案するものである。(2)商法第519条第2項が準用する小切手法第21条や,手形法第16条第2項によって,善意取得が認められる前提となる裏書の連続の判断時期について,判例(最判昭和32年12月5日民集11巻13号2060頁)は,口頭弁論終結時と解しており,これによると手形等の取得時に裏書の連続がなくても善意取得が認められる可能性がある。しかし,有価証券に関する通則的な規定として,上記のような手形法等の解釈を承継し,善意取得を広く認めることには,異論があり得る。善意取得の制度は,裏書が連続する有価証券の所持に形式的資格が付与され,この形式的資格を信頼した者を保護する制度であることからすると,善意取得が認められるのは,手形等の取得時に裏書が連続していた場合に限るべきであるとの立法提案がある。このような立法提案を踏まえて,指図証券の取得時に裏書の連続があった場合に限り善意取得を認めるという趣旨に基づき,本文②では,「①で裏書の連続が認められる指図証券の占有者から裏書により指図証券を取得した者」であることを善意取得の要件とすることを提案している。民法(債権関係)部会資料一部引用』
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