行政書士試験判例過去問【昭和56年11月27日,最高裁判所第2小法廷】
【判事事項】
兄が弟に兄所有の自動車を運転させこれに同乗して自宅に帰る途中で発生した交通事故につき兄弟間に民法715条1項にいう使用者・被用者の関係が成立していたとされた事例
【裁判要旨】
兄が、その出先から自宅に連絡して弟に兄所有の自動車で迎えに来させたうえ、弟に右自動車の運転を継続させ、これに同乗して自宅に帰る途中で交通事故が発生した場合において、兄が右同乗中助手席で運転上の指示をしていた等判示の事情があるときは、兄と弟との間には右事故当時兄を自動車により自宅に送り届けるという仕事につき、民法715条1項にいう使用者・被用者の関係が成立していたと解するのが相当である。
『原審が適法に確定したところによれば、上告人は、本件事故の当日、出先から自宅に連絡し、弟の訴外Dをして上告人所有の本件自動車を運転して迎えに来させたうえ、更に、右訴外人をして右自動車の運転を継続させこれに同乗して自宅に戻る途中、本件事故が発生したものであるところ、右同乗後は運転経験の長い上告人が助手席に坐つて、運転免許の取得後半年位で運転経歴の浅い右訴外人の運転に気を配り、事故発生の直前にも同人に対し「ゴー」と合図して発進の指示をした、というのである。右事実関係のもとにおいては、上告人は、一時的にせよ右訴外人を指揮監督して、その自動車により自己を自宅に送り届けさせるという仕事に従事させていたということができるから、上告人と右訴外人との間に本件事故当時上告人の右の仕事につき民法715条1項にいう使用者・被用者の関係が成立していたと解するのが相当である。したがつて、これと同旨の原審の判断は正当として是認することができ、原判決に所論の違法はない。論旨は、採用することができない。よつて、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。』
解答〇