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消防署の職員が出火の残り火の点検を怠ったことに起因して再出火した場合

【令和3年行政書士試験出題】

【問題】次の文章は、消防署の職員が出火の残り火の点検を怠ったことに起因して再出火した場合において、それにより損害を被ったと主張する者から提起された国家賠償請求訴訟にかかる最高裁判所の判決の一節である。空欄ア~オに当てはまる語句の組合せとして、妥当なものはどれか。

失火責任法は、失火者の責任条件について民法709条を規定したものであるから、国家賠償法4条の「民法」にと解するのが相当である。また、失火責任法の趣旨にかんがみても、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任についてのみ同法の適用を合理的理由も存しない。したがって、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法4条により失火責任法がされ、当該公務員に重大な過失のあることをものといわなければならない。(最二小判昭和53年7月17日民集32巻5号1000頁)


1 アの特則 イ含まれる ウ排除すべき エ適用 オ必要とする

2 アが適用されないこと イ含まれない ウ認めるべき エ排除 オ必要としない

3 アが適用されないこと イ含まれない ウ排除すべき エ適用 オ必要としない

4 アが適用されないこと イ含まれる ウ認めるべき エ排除 オ必要とする

5 アの特則 イ含まれない ウ排除すべき エ適用 オ必要としない


【昭和53年7月17日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償】

【判事事項】

公権力の行使にあたる公務員の失火と失火の責任に関する法律の適用


【裁判要旨】

公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、失火の責任に関する法律が適用される。

『原判決は、本件火災は第一次出火の際の残り火が再燃して発生したものであるが、上告人の職員である消防署職員の消火活動について失火ノ責任ニ関スル法律(以下 「失火責任法」という。)は適用されず、第一次出火の消火活動に出動した消防署 職員に残り火の点検、再出火の危険回避を怠つた過失がある以上、上告人は被上告 人に対し国家賠償法1条1項により損害を賠償する義務があるとし、被上告人の請求のうち一部を認容した。思うに、国又は公共団体の損害賠償の責任について、国家賠償法4条は、同法1条1項の規定が適用される場合においても、民法の規定が補充的に適用されることを明らかにしているところ、失火責任法は、失火者の責任条件について民法709条の特則を規定したものであるから、国家賠償法4条の「民法」に含まれると解するのが相当である。
また、失火責任法の趣旨にかんがみても、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任についてのみ同法の適用を排除すべき合理的理由も存しない。したがつて、公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法4条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。しかるに、本件において、消防署職員の重大な過失の有無を判断することなく、被上告人の請求の一部を認容した原判決には、法令の解釈を誤り、ひいて審理不尽の違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであるから、この点に関する論旨は理由があり、その余の論旨について判断するまでもなく、原判決中上告人敗訴部分は破棄を免れない。そして更に消防署職員の重大な過失の有無につき審理を尽くす必要があるので、右部分を原審に差し戻すこととする。
上告人の民訴法198条2項の裁判を求める申立について  
上告人が右申立の理由として主張する事実関係は、被上告人の認めるところである。そして原判決中上告人敗訴部分が破棄を免れないことは前説示のとおりであるから、原判決に付された仮執行宣言がその効力を失うことは、論をまたない。したがつて、右仮執行宣言に基づいて給付した金員及びこれに対する右支払の日から完済まで年5分の割合による民法所定の損害金の支払を求める上告人の申立は、これを正当として認容しなければならない。
よつて、民訴法407条、198条2項、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。』


【試験ポイント】✨

有名な判例なので,一回は読んでおこう!ポイントは,公権力の行使にあたる公務員の失火による国又は公共団体の損害賠償責任については、国家賠償法4条により失火責任法が適用され、当該公務員に重大な過失のあることを必要とするものといわなければならない。

解答1