行政書士試験過去問解説 平成29年12月6日, 最高裁判所大法廷,受信契約締結承諾等請求事件
1 国営放送制 2 党利党略 3 政府広報 4 特殊利益 5 良心 6 自由競争体制 7 品位 8 誠実 9 自律 10 二本立て体制 11 多元 12 国際 13 娯楽 14 全国 15 地域 16 部分規制 17 集中 18 免許制 19 自主管理 20 営利
【判事事項】
1 放送法64条1項の意義
2 放送法64条1項の合憲性
3 日本放送協会の放送の受信についての契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合に発生する受信料債権の範囲
4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権の消滅時効の起算点
【裁判要旨】
1 放送法64条1項は,日本放送協会の放送を受信することのできる受信設備を設置した者に対しその放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めた規定であり,日本放送協会からの上記契約の申込みに対して上記の者が承諾をしない場合には,日本放送協会がその者に対して承諾の意思表示を命ずる判決を求め,その判決の確定によって上記契約が成立する。
2 放送法64条1項は,同法に定められた日本放送協会の目的にかなう適正・公平な受信料徴収のために必要な内容の,日本放送協会の放送の受信についての契約の締結を強制する旨を定めたものとして,憲法13条,21条,29条に違反しない。
3 日本放送協会の放送の受信についての契約を締結した者は受信設備の設置の月から定められた受信料を支払わなければならない旨の条項を含む上記契約の申込みに対する承諾の意思表示を命ずる判決の確定により同契約が成立した場合,同契約に基づき,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権が発生する。
4 日本放送協会の放送の受信についての契約に基づき発生する,受信設備の設置の月以降の分の受信料債権(上記契約成立後に履行期が到来するものを除く。)の消滅時効は,上記契約成立時から進行する。(1につき補足意見,1,2につき補足意見,1,3につき補足意見,1~4につき反対意見がある。)
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1 放送法64条1項の意義
(1)ア 放送は,憲法21条が規定する表現の自由の保障の下で,国民の知る権利を実質的に充足し,健全な民主主義の発達に寄与するものとして,国民に広く普及されるべきものである。放送法が,「放送が国民に最大限に普及されて,その効用をもたらすことを保障すること」,「放送の不偏不党,真実及び自律を保障することによって,放送による表現の自由を確保すること」及び「放送に携わる者の職責を明らかにすることによって,放送が健全な民主主義の発達に資するようにする こと」という原則に従って,放送を公共の福祉に適合するように規律し,その健全な発達を図ることを目的として(1条)制定されたのは,上記のような放送の意義を反映したものにほかならない。上記の目的を実現するため,放送法は,前記のとおり,旧法下において社団法人日本放送協会のみが行っていた放送事業について,公共放送事業者と民間放送事業者とが,各々その長所を発揮するとともに,互いに他を啓もうし,各々その欠点を補い,放送により国民が十分福祉を享受することができるように図るべく,二本立て体制を採ることとしたものである。そして,同法は,二本立て体制の一方を担う公共放送事業者として原告を設立することとし,その目的,業務,運営体制等を前記のように定め,原告を,民主的かつ多元的な基盤に基づきつつ自律的に運営される事業体として性格付け,これに公共の福祉のための放送を行わせることとしたものである。
放送法が,前記のとおり,原告につき,営利を目的として業務を行うこと及び他人の営業に関する広告の放送をすることを禁止し(20条4項,83条1項),事業運営の財源を受信設備設置者から支払われる受信料によって賄うこととしているのは,原告が公共的性格を有することをその財源の面から特徴付けるものである。
すなわち,上記の財源についての仕組みは,特定の個人,団体又は国家機関等から財政面での支配や影響が原告に及ぶことのないようにし,現実に原告の放送を受信するか否かを問わず,受信設備を設置することにより原告の放送を受信することのできる環境にある者に広く公平に負担を求めることによって,原告が上記の者ら全体により支えられる事業体であるべきことを示すものにほかならない。
原告の存立の意義及び原告の事業運営の財源を受信料によって賄うこととしている趣旨が,前記のとおり,国民の知る権利を実質的に充足し健全な民主主義の発達に寄与することを究極的な目的とし,そのために必要かつ合理的な仕組みを形作ろうとするものであることに加え,前記のとおり,放送法の制定・施行に際しては,旧法下において実質的に聴取契約の締結を強制するものであった受信設備設置の許可制度が廃止されるものとされていたことをも踏まえると,放送法64条1項は,原告の財政的基盤を確保するための法的に実効性のある手段として設けられたものと解されるのであり,法的強制力を持たない規定として定められたとみるのは困難である。
【試験ポイント】✨
行政書士試験,特有の問題ですね。しかし,多岐選択式であるため,読解力があればなんとか解けます。
ア 自律
イ 二本立て体制
ウ 多元
エ 営利