【民法改正】行政書士試験過去問民法 相殺
相殺とは
AとBが互いに100万円の債権を有する場合に,一方の意思表示により,互いの債権を消滅させること。Aが相殺をする場合には,Aの債権を自働債権,相手方Bの債権を受働債権という。
【問題の所在】
例えば,AとBが双方の過失で交通事故(物損)を起こし,相互に不法行為債権を有している場合に,Bが無資力であっても,Aは相殺できず、自己の債務のみ全額弁済。 相殺禁止の理由に照らして合理的な範囲に限定すべきではないか
【改正法の内容】
相殺禁止の対象となる不法行為債権を次の①②に限定し,それ以外は相殺可能に
① 加害者の悪意による不法行為に基づく損害賠償(←誘発防止という観点)
② 生命・身体を侵害する不法行為に基づく損害賠償(← 現実弁償が必要という観点)
※ ②に関連して,一般の債務不履行に基づく生命・身体の侵害による損害賠償も相殺を禁止している。
1〇 民法511条(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)第1項・2項
2〇 第508条(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
3〇 第505条(相殺の要件等)2項
4〇 民法第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)1項1号
5✖ 民法第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)1項2号
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第505条(相殺の要件等)
二人が互いに同種の目的を有する債務を負担する場合において、双方の債務が弁済期にあるときは、各債務者は、その対当額について相殺によってその債務を免れることができる。ただし、債務の性質がこれを許さないときは、この限りでない。
2 前項の規定にかかわらず、当事者が相殺を禁止し、又は制限する旨の意思表示をした場合には、その意思表示は、第三者がこれを知り、又は重大な過失によって知らなかったときに限り、その第三者に対抗することができる。
第508条(時効により消滅した債権を自働債権とする相殺)
時効によって消滅した債権がその消滅以前に相殺に適するようになっていた場合には、その債権者は、相殺をすることができる。
第509条(不法行為等により生じた債権を受働債権とする相殺の禁止)
次に掲げる債務の債務者は、相殺をもって債権者に対抗することができない。ただし、その債権者がその債務に係る債権を他人から譲り受けたときは、この限りでない。
一 悪意による不法行為に基づく損害賠償の債務
二 人の生命又は身体の侵害による損害賠償の債務(前号に掲げるものを除く。)
第511条(差押えを受けた債権を受働債権とする相殺の禁止)
差押えを受けた債権の第三債務者は、差押え後に取得した債権による相殺をもって差押債権者に対抗することはできないが、差押え前に取得した債権による相殺をもって対抗することができる。
2 前項の規定にかかわらず、差押え後に取得した債権が差押え前の原因に基づいて生じたものであるときは、その第三債務者は、その債権による相殺をもって差押債権者に対抗することができる。ただし、第三債務者が差押え後に他人の債権を取得したときは、この限りでない。