行政書士試験過去問解説 外国人の人権 判例
【判事事項】
一 みだりに指紋の押なつを強制されない自由と憲法13条
二 我が国に在留する外国人について指紋押なつ制度を定めた外国人登録法(昭和57年法律第75号による改正前のもの)14条1項、18条1項8号と憲法13条
【裁判要旨】
一 何人も個人の私生活上の自由の一つとしてみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有し、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、憲法13条の趣旨に反し許されない。
二 我が国に在留する外国人について指紋押なつ制度を定めた外国人登録法(昭和57年法律第75号による改正前のもの)14条1項、18条1項8号は、憲法13条に違反しない。
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【判事事項】
我が国に在留する外国人が外国へ一時旅行する自由と憲法の保障の有無
【裁判要旨】
我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていない。
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【判事事項】
一 外国人のわが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利と憲法の保障の有無
二 出入国管理令21条3項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断と法務大臣の裁量権
三 出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無についての判断と裁判所の審査の限界
四 わが国に在留する外国人と政治活動の自由に関する憲法の保障
五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障と在留の許否を決する国の裁量に対する拘束の有無
六 外国人の在留期間中の憲法の保障が及ばないとはいえない政治活動を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由がないとした法務大臣の判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできないとされた事例
【裁判要旨】
一 外国人は、憲法上、わが国に在留する権利ないし引き続き在留することを要求しうる権利を保障されていない。
二 出入国管理令21条3項に基づく在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断は「法務大臣の裁量に任されているものであり、上陸拒否事由又は退去強制事由に準ずる事由に該当しない限り更新を不許可にすることが許されないものではない。
三 裁判所は、出入国管理令21条3項に基づく法務大臣の在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由の有無の判断についてそれが違法となるかどうかを審査するにあたつては、右判断が法務大臣の裁量権の行使としてされたものであることを前提として、その判断の基礎とされた重要な事実に誤認があること等 により右判断が全く事実の基礎を欠くかどうか、又は事実に対する評価が明白に合理性を欠くこと等により右判断が社会通念に照らし著しく妥当性を欠くことが明らかであるかどうかについて審理し、それが認められる場合に限り、右判断が裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものとして違法であるとすることがで きる。
四 政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。
五 外国人に対する憲法の基本的人権の保障は、在留の許否を決する国の裁量を拘束するまでの保障すなわち、在留期間中の憲法の基本的人権の保障を受ける行為を在留期間の更新の際に消極的な事情として斟酌されないことまでの保障を含むものではない。
六 上告人の本件活動は、外国人の在留期間中の政治活動として直ちに憲法の保障が及ばないものであるとはいえないが、そのなかにわが国の出入国管理政策に対する非難行動あるいはわが国の基本的な外交政策を非難し日米間の友好関係に影響を及ぼすおそれがないとはいえないものが含まれており、法務大臣が右活動 を斟酌して在留期間の更新を適当と認めるに足りる相当の理由があるものとはいえないと判断したとしても、裁量権の範囲を超え又はその濫用があつたものということはできない。
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【判事事項】
1 地方公共団体が日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることと労働基準法3条,憲法14条1項
2 東京都が管理職に昇任するための資格要件として日本の国籍を有することを定めた措置が労働基準法3条,憲法14条1項に違反しないとされた事例
【裁判要旨】
1 地方公共団体が,公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員の職とこれに昇任するのに必要な職務経験を積むために経るべき職とを包含する一体的な管理職の任用制度を構築した上で,日本国民である職員に限って管理職に昇任することができることとする措置を執ることは,労働基準法3条, 憲法14条1項に違反しない。
2 東京都が管理職に昇任すれば公権力の行使に当たる行為を行うことなどを職務とする地方公務員に就任することがあることを当然の前提として任用管理を行う管理職の任用制度を設けていたなど判示の事情の下では,職員が管理職に昇任するための資格要件として日本の国籍を有することを定めた東京都の措置は,労 働基準法3条,憲法14条1項に違反しない。
(1,2につき補足意見,意見及び反対意見がある。)
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【判事事項】
国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前のもの)181条1項の障害福祉年金の支給について適用される同法56条1項ただし書と憲法25条、14条1項
【裁判要旨】
国民年金法(昭和56年法律第86号による改正前のもの)181条1項の障害福祉年金の支給について適用される同法56条1項ただし書は、憲法25条、14条1項に違反しない。
『一 原審の適法に確定したところによれば、本件の事実関係は次のとおりである。上告人は、昭和9年6月25日大阪市で出生し、幼少のころ罹患したはしかによつて失明し、昭和34年11月1日において昭和56年法律第86号による改正前の国民年金法(以下「法」という。)別表に定める一級に該当する程度の廃疾の状態にあつた。上告人は、昭和34年11月1日においては大韓民国籍であつたところ、昭和45年12月16日帰化によつて日本国籍を取得した。上告人は、法81条1項の障害福祉年金の受給権者であるとして、被上告人に対し右受給権の裁定を請求したところ、被上告人は、昭和47年8月21日同請求を棄却する旨の処分( 以下「本件処分」という。)をした。本件処分の理由は、上告人は昭和34年11月1日において日本国民でなかつたから法81条1項の障害福祉年金の受給権を有しないというものであつた。
二 法81条1項は、昭和14年11月1日以前に生まれた者が、昭和34年11月1日以前になおつた傷病により、昭和34年11月1日において法別表に定める一級に該当する程度の廃疾の状態にあるときは、法56条1項本文の規定にかかわらず、その者に同条の障害福祉年金を支給する旨規定しているが、法56条1項ただし書は廃疾認定日において日本国民でない者に対しては同条の障害福祉年金を支給しない旨規定しており、法81条1項の障害福祉年金の支給に関しても当然に法56条1項ただし書の規定の適用があるから、法81条1項の障害福祉年金は、廃疾の認定日である昭和34年11月1日において日本国民でない者に対しては支給されないものと解すべきである。
三 そこで、まず、法81条1項が受ける法56条1項ただし書の規定(以下「国籍条項」という。)及び昭和34年11月1日より後に帰化によつて日本国籍を取得した者に対し法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことが、憲法25条の規定に違反するかどうかについて判断する。憲法25条は、いわゆる福祉国家の理念に基づき、すべての国民が健康で文化的な最低限度の生活を営みうるよう国政を運営すべきこと(1項)並びに社会的立法及び社会的施設の創造拡充に努力すべきこと(2項)を国の責務として宣言したものであるが、同条1項は、国が個々の国民に対して具体的・現実的に右のような義務を有することを規定したものではなく、同条2項によつて国の責務であるとされている社会的立法及び社会的施設の創造拡充により個々の国民の具体的・現実的な生活権が設定充実されてゆくものであると解すべきこと、そして、同条にいう「健康で文化的な最低限度の生活」なるものは、きわめて抽象的・相対的な概念であつて、その具体的内容は、その時々における文化の発達の程度、経済的・社会的条件、一般的な国民生活の状況等との相関関係において判断決定されるべきものであるとともに、同条の規定の趣旨を現実の立法として具体化するに当たつては、国の財政事情を無視することができず、また、多方面にわたる複雑多様な考察とそれに基づいた政策的判断を必要とするから、同条の規定の趣旨にこたえて具体的にどのような立法措置を講ずるかの選択決定は、立法府の広い裁量にゆだねられており、それが著しく合理性を欠き明らかに裁量の逸脱・濫用と見ざるをえないような場合を除き、裁判所が審査判断するに適しない事柄であるというべきことは、当裁判所大法廷判決(昭和23年(れ)第205号同年9月29日判決・刑集2巻10号1235頁、昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日判決・民集36巻7号1235頁)の判示するところである。
そこで、本件で問題とされている国籍条項が憲法25条の規定に違反するかどうかについて考えるに、国民年金制度は、憲法25条2項の規定の趣旨を実現するため、老齢、障害又は死亡によつて国民生活の安定が損なわれることを国民の共同連帯によつて防止することを目的とし、保険方式により被保険者の拠出した保険料を基として年金給付を行うことを基本として創設されたものであるが、制度発足当時において既に老齢又は一定程度の障害の状態にある者、あるいは保険料を必要期間納付することができない見込みの者等、保険原則によるときは給付を受けられない者についても同制度の保障する利益を享受させることとし、経過的又は補完的な制度として、無拠出制の福祉年金を設けている。法81条1項の障害福祉年金も、制度発足時の経過的な救済措置の一環として設けられた全額国庫負担の無拠出制の年金であつて、立法府は、その支給対象者の決定について、もともと広範な裁量権を有しているものというべきである。加うるに、社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。したがつて、法81条1項の障害福祉年金の支給対象者から在留外国人を除外することは、立法府の裁量の範囲に属する事柄と見るべきである。
また、経過的な性格を有する右障害福祉年金の給付に関し、廃疾の認定日である制度発足時の昭和34年11月1日において日本国民であることを要するものと定めることは、合理性を欠くものとはいえない。昭和34年11月1日より後に帰化により日本国籍を取得した者に対し法81条1項の障害福祉年金を支給するための措置として、右の者が昭和34年11月1日に遡り日本国民であつたものとして扱うとか、あるいは国籍条項を削除した昭和56年法律第86号による国民年金法の改正の効果を遡及させるというような特別の救済措置を講ずるかどうかは、もとより立法府の裁量事項に属することである。そうすると、国籍条項及び昭和34年11月1日より後に帰化によつて日本国籍を取得した者に対し法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことは、憲法25条の規定に違反するものではないというべく、以上は当裁判所大法廷判決(昭和51年(行ツ)第30号同57年7月7日判決・民集36巻7号1235頁、昭和50年(行ツ)第120号同53年10月4日判決・民集32巻7号1223頁)の趣旨に徴して明らかというべきである。
四 次に、国籍条項及び昭和34年11月1日より後に帰化によつて日本国籍を取得した者に対し法81条1項の障害福祉年金の支給をしないことが、憲法14条1項の規定に違反するかどうかについて考えるに、憲法14条1項は法の下の平等の原則を定めているが、右規定は合理的理由のない差別を禁止する趣旨のものであつて、各人に存する経済的、社会的その他種々の事実関係上の差異を理由としてその法的取扱いに区別を設けることは、その区別が合理性を有する限り、何ら右規定に違反するものではないのである(最高裁昭和37年(あ)第927号同39年11月18日大法廷判決・刑集18巻9号579頁、同昭和37年(オ)第1472号同39年5月27日大法廷判決・民集18巻4号676頁参照)。ところで、法81条1項の障害福祉年金の給付に関しては、廃疾の認定日に日本国籍がある者とそうでない者との間に区別が設けられているが、前示のとおり、右障害福祉年金の給付に関し、自国民を在留外国人に優先させることとして在留外国人を支給対象者から除くこと、また廃疾の認定日である制度発足時の昭和34年11月1日において日本国民であることを受給資格要件とすることは立法府の裁量の範囲に属する事柄というべきであるから、右取扱いの区別については、その合理性を否定することができず、これを憲法14条1項に違反するものということはできない。
五 さらに、国籍条項が憲法98条2項に違反するかどうかについて判断する。 所論の社会保障の最低基準に関する条約(昭和51年条約第4号。いわゆるILO第102号条約)68条1の本文は「外国人居住者は、自国民居住者と同一の権利を有する。」と規定しているが、そのただし書は「専ら又は主として公の資金を財源とする給付又は給付の部分及び過渡的な制度については、外国人及び自国の領域外で生まれた自国民に関する特別な規則を国内の法令で定めることができる。」 と規定しており、全額国庫負担の法81条1項の障害福祉年金に係る国籍条項が同条約に違反しないことは明らかである。また、経済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(昭和54年条約第6号)9条は「この規約の締約国は、社会保険その他の社会保障についてのすべての者の権利を認める。」と規定しているが、これは、締約国において、社会保障についての権利が国の社会政策により保護されるに値するものであることを確認し、右権利の実現に向けて積極的に社会保障政策を推進すべき政治的責任を負うことを宣明したものであつて、個人に対し即時に具体的権利を付与すべきことを定めたものではない。このことは、同規約2条1が締約国において「立法措置その他のすべての適当な方法によりこの規約において認められる権利の完全な実現を漸進的に達成する」ことを求めていることからも明らかである。したがつて、同規約は国籍条項を直ちに排斥する趣旨のものとはいえない。さらに、社会保障における内国民及び非内国民の均等待遇に関する条約(いわゆるILO第118号条約)は、わが国はいまだ批准しておらず、国際連合第3回総会の世界人権宣言、同第26回総会の精神薄弱者の権利宣言、同第30回総会の障害者の権利宣言及び国際連合経済社会理事会の1975年5月6日の障害防止及び障害者のリハビリテーシヨンに関する決議は、国際連合ないしその機関の考え方を表明したものであつて、加盟国に対して法的拘束力を有するものではない。以上のように、所論の条約、宣言等は、わが国に対して法的拘束力を有しないか、法的拘束力を有していても国籍条項を直ちに排斥する趣旨のものではないから、国籍条項がこれらに抵触することを前提とする憲法98条2項違反の主張は、その前提を欠くと いうべきである。』
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【試験ポイント】✨
1✖【平成7年12月15日,最高裁判所第三小法廷,外国人登録法違反】『何人も個人の私生活上の自由の一つとしてみだりに指紋の押なつを強制されない自由を有し、国家機関が正当な理由もなく指紋の押なつを強制することは、憲法13条の趣旨に反し許されない。』
2〇【平成4年11月16日,最高裁判所第一小法廷,再入国不許可処分取消等】,『我が国に在留する外国人は、憲法上、外国へ一時旅行する自由を保障されていない。』
3〇【昭和53年10月4日,最高裁判所大法廷,在留期間更新不許可処分取消】,『政治活動の自由に関する憲法の保障は、わが国の政治的意思決定又はその実施に影響を及ぼす活動等外国人の地位にかんがみこれを認めることが相当でないと解されるものを除き、わが国に在留する外国人に対しても及ぶ。』
4〇【平成17年1月26日,最高裁判所大法廷,管理職選考受験資格確認等請求事件】
5〇【平成元年3月2日,最高裁判所第一小法廷,国民年金裁定却下処分取消請求事件】『加うるに、社会保障上の施策において在留外国人をどのように処遇するかについては、国は、特別の条約の存しない限り、当該外国人の属する国との外交関係、変動する国際情勢、国内の政治・経済・社会的諸事情等に照らしながら、その政治的判断によりこれを決定することができるのであり、その限られた財源の下で福祉的給付を行うに当たり、自国民を在留外国人より優先的に扱うことも、許されるべきことと解される。』