行政書士試験過去問 裁判の公開
【判事事項】
一 報道のための取材活動と憲法第21条
二 刑訴規則第215条は憲法第21条に違反するか
【裁判要旨】
一 新聞が真実を報道することは、憲法第21条の認める表現の自由に属し、またそのための取材活動も認められなければならないことはいうまでもないが、その自由も無制限であるということはできず、たとい公判廷の情況を一般に報道するための取材活動であつても、その活動が公判廷における審判の秩序を乱し、被告人その他訴訟関係人の正当な利益を不当に害するが如きものはもとより許されないところである。
二 刑訴規則第215条は憲法第21条に違反しない。
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【判事事項】
一 非訟事件手続法による過料の裁判の合憲性
二 前項の裁判に対する不服申立についての裁判の合憲性
【裁判要旨】
一 非訟事件手続法による過料の裁判は、憲法第31条、第32条、第82条に違反しない。
二 前項の裁判に対する不服申立についての裁判は、公開・対審の手続によらなくても、憲法第32条、第82条に違反しない。
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【判事事項】
刑訴法157条の3,157条の4と憲法82条1項,37条1項,2項前段
【裁判要旨】
刑訴法157条の3,157条の4は,憲法82条1項,37条1項,2項前段に違反しない。
『刑訴法157条の3は,証人尋問の際に,証人が被告人から見られていることによって圧迫を受け精神の平穏が著しく害される場合があることから,その負担を軽減するために,そのようなおそれがあって相当と認められるときには,裁判所が,被告人と証人との間で,一方から又は相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採り,同様に,傍聴人と証人との間でも,相互に相手の状態を認識することができないようにするための措置を採ることができる(以下,これらの措置を「遮へい措置」という。)とするものである。また,同法157条の4は,いわゆる性犯罪の被害者等の証人尋問について,裁判官及び訴訟関係人の在席する場所において証言を求められることによって証人が受ける精神的圧迫を回避するために,同一構内の別の場所に証人を在席させ,映像と音声の送受信により相手の状態を相互に認識しながら通話することができる方法によって尋問することができる(以下,このような方法を「ビデオリンク方式」という。)とするものである。証人尋問が公判期日において行われる場合,傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られ,あるいはビデオリンク方式によることとされ,さらには,ビデオリンク方式によった上で傍聴人と証人との間で遮へい措置が採られても,審理が公開されていることに変わりはないから,【要旨】これらの規定は,憲法82条1項,37条1項に違反するものではない。また,証人尋問の際,被告人から証人の状態を認識できなくする遮へい措置が採られた場合,被告人は,証人の姿を見ることはできないけれども,供述を聞くことはでき,自ら尋問することもでき,さらに,この措置は,弁護人が出頭している場合に限り採ることができるのであって,弁護人による証人の供述態度等の観察は妨げられないのであるから,前記のとおりの制度の趣旨にかんがみ,被告人の証人審問権は侵害されていないというべきである。ビデオリンク方式によることとされた場合には,被告人は,映像と音声の送受信を通じてであれ,証人の姿を見ながら供述を聞き,自ら尋問することができるのであるから,被告人の証人審問権は侵害されていないというべきである。さらには,ビデオリンク方式によった上で被告人から証人の状態を認識できなくする遮へい措置が採られても,映像と音声の送受信を通じてであれ,被告人は,証人の供述を聞くことはでき,自ら尋問することもでき,弁護人による証人の供述態度等の観察は妨げられないのであるから,やはり被告人の証人審問権は侵害されていないというべきことは同様である。したがって,【要旨】刑訴法157条の3,157条の4は,憲法37条2項前段に違反するものでもない。以上のように解すべきことは,当裁判所の判例(最高裁昭和24年(れ)第731号同25年3月15日大法廷判決・刑集4巻3号355頁,最高裁昭和24年(れ)第1873号同25年3月15日大法廷判決・刑集4巻3号371頁,最高裁昭和26年(れ)第2518号同30年4月6日大法廷判決・刑集9巻4号663頁,最高裁昭和29年(あ)第1400号同31年12月26日大法廷判決・刑集10巻12号1746頁,最高裁昭和29年(秩ち)第1号同33年2月17日大法廷決定・刑集12巻2号253頁)の趣旨に徴して明らかである。』
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【判事事項】
一 法定で傍聴人がメモを取ることと憲法82条1項
二 法廷で傍聴人がメモを取ることと憲法21条1項
三 法廷警察権行使についての裁量の範囲
四 法廷でメモを取ることを報道機関の記者に対してのみ許可することと憲法14条1項
五 法廷警察権の行使と国家賠償法1条1項の違法性
【裁判要旨】
一 憲法82条1項は、法廷で傍聴人がメモを取ることを権利として保障しているものではない。
二 法廷で傍聴人がメモを取ることは、その見聞する裁判を認識記憶するためにされるものである限り、憲法21条1項の精神に照らし尊重に値し、故なく妨げられてはならない。
三 法廷警察権の行使は、裁判長の広範な裁量に委ねられ、その行使の要否、執るべき措置についての裁判長の判断は、最大限に尊重されなければならない。
四 法廷でメモを取ることを司法記者クラブ所属の報道機関の記者に対してのみ許可し、一般傍聴人に対して禁止する裁判長の措置は、憲法14条1項に違反しない。
五 法廷警察権の行使は、法廷警察権の目的、範囲を著しく逸脱し、又はその方法が甚だしく不当であるなどの特段の事情のない限り、国家賠償法1条1項にいう違法な公権力の行使ということはできない。
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【判事事項】
一 裁判所法52条1号にいう「積極的に政治運動をすること」の意義
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法52条1号と憲法21条1項
三 裁判官が積極的に政治運動をしたとされた事例
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことがその職務上の義務に違反するとして当該裁判官に対し戒告がされた事例
五 裁判官分限事件への憲法82条1項の適用の有無
六 民事訴訟又は非訟の手続において期日に立ち会う代理人の数を制限することの可否
【裁判要旨】
一 裁判所法52条1号にいう「積極的に政治運動をすること」とは、組織的、計画的又は継続的な政治上の活動を能動的に行う行為であって裁判官の独立及び中立・公正を害するおそれがあるものをいい、具体的行為の該当性を判断するに当たっては、行為の内容、行為の行われるに至った経緯、行われた場所等の客観的な事情のほか、行為をした裁判官の意図等の主観的な事情をも総合的に考慮して決するのが相当である。
二 裁判官が積極的に政治運動をすることを禁止する裁判所法52条1号の規定は、憲法21条1項に違反しない。
三 裁判官が、その取扱いが政治的問題となっていた法案を廃案に追い込もうとする党派的な運動の一環として開かれた集会において、会場の一般参加者席から、裁判官であることを明らかにした上で、「当初、この集会において、盗聴法と令状主義というテーマのシンポジウムにパネリストとして参加する予定であったが、事前に所長から集会に参加すれば懲戒処分もあり得るとの警告を受けたことから、パネリストとしての参加は取りやめた。自分としては、仮に法案に反対の立場で発言しても、裁判所法に定める積極的な政治運動に当たるとは考えないが、パネリストとしての発言は辞退する。」との趣旨の発言をした行為は、判示の事実関係の下においては、右集会の参加者に対し、右法案が裁判官の立場からみて令状主義に照らして問題のあるものであり、その廃案を求めることは正当であるという同人の意見を伝えるものというべきであり、右集会の開催を決定し右法案を廃案に追い込むことを目的として共同して行動している諸団体の組織的、計画的、継続的な反対運動を拡大、発展させ、右目的を達成させることを積極的に支援しこれを推進するものであって、裁判所法52条1号が禁止している「積極的に政治運動をすること」に該当する。
四 裁判官が積極的に政治運動をしたことは、裁判所法49条所定の懲戒事由である職務上の義務違反に該当し、当該行為の内容、その後の態度等判示の事情にかんがみれば、当該裁判官を戒告することが相当である。
五 裁判官分限事件には、憲法82条1項は適用されない。
六 民事訴訟又は非訟の手続を主宰する裁判所は、その手続を円滑に進行させるために与えられた指揮権に基づいて、期日を開く場所の収容能力、当該期日に予定されている手続の内容、裁判所の法廷警察権ないし指揮権行使の難易等を考慮して、必要かつ相当な場合には、期日に立ち会う代理人の数を合理的と認められる限度にまで制限することができる。
『憲法82条1項は、裁判の対審及び判決は公開の法廷で行わなければならない旨を規定しているが、右規定にいう「裁判」とは、現行法が裁判所の権限に属するものとしている事件について裁判所が裁判という形式をもってする判断作用ないし法律行為のすべてを指すのではなく、そのうちの固有の意味における司法権の作用に属するもの、すなわち、裁判所が当事者の意思いかんにかかわらず終局的に事実を確定し当事者の主張する実体的権利義務の存否を確定することを目的とする純然たる訴訟事件についての裁判のみを指すものと解すべきである(最高裁昭和41年(ク)第402号同45年6月24日大法廷決定・民集24巻6号610頁等)。裁判官に対する懲戒は、裁判所が裁判という形式をもってすることとされているが、一般の公務員に対する懲戒と同様、その実質においては裁判官に対する行政処分の性質を有するものである。したがって、裁判官に懲戒を課する作用は、固有の意味における司法権の作用ではなく、懲戒の裁判は、純然たる訴訟事件についての裁判には当たらないことが明らかである。また、その手続の構造をみても、法及び規則の規定中には、監督権を行う裁判所の申立てにより手続を開始し、申立裁判所を代表する裁判官に審問への立会権を認め、申立裁判所にも裁判に対する即時抗告権を認めるなど、当事者対立構造を思わせる定めもみられるけれども、申立てを受けた裁判所は、申立裁判所に懲戒事由の主張立証をさせ、その主張の当否を判断するのではなく、右申立てを端緒として、職権で事実を探知し、必要な証拠調べを行って(規則7条、非訟事件手続法11条)、当該裁判官に対する処分を自ら行うのである(申立てを受けた裁判所は、懲戒事由に該当する事実を認定したとしても、懲戒を課するか否か、課するとしていかなる内容の懲戒とするかについて、懲戒権者としての裁量権を行使して第一次的判断をするのであり、その点に関する申立裁判所の主張の当否を判断するのではない。)から、分限事件は、訴訟とは全く構造を異にするというほかはない。したがって、分限事件については憲法82条1項の適用はないものというべきである(最高裁昭和37年(ク)第64号同41年12月27日大法廷決定・民集20巻10号2279頁参照)。 なお、憲法82条2項ただし書の規定は、同条1項の適用がある裁判の対審に関する規定であるから、同項の適用がない分限事件に適用される余地がないことは、 いうまでもない。』
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【試験ポイント】✨
過去に出題された判例は,何回も出題されるのでポイントだけは理解しておこう!例えば,寺西裁判官懲戒処分事件については,「裁判官分限事件には、憲法82条1項は適用されない。」など。
1✖【昭和33年2月17日,最高裁判所大法廷,法廷等秩序維持に関する法律による制裁事件についてなした抗告棄却決定に対する特別抗告】
2✖【昭和41年12月27日,最高裁判所大法廷,過料決定に対する抗告棄却の決定に対する抗告】
3〇【平成17年4月14日,最高裁判所第一小法廷,傷害,強姦被告事件】
4✖【平成元年3月8日,最高裁判所大法廷,メモ採取不許可国家賠償請求事件】
5✖【平成10年12月1日,最高裁判所大法廷,裁判官分限事件の決定に対する即時抗告】