業務・試験対策

MEASURES

行政書士試験過去問 代物弁済 買主の追完請求権

【平成27年行政書士試験出題】

【問題】代物弁済(担保目的の代物弁済契約によるものは除く。)に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

1 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、土地所有権の移転の効果は、原則として代物弁済契約の意思表示によって生じる。

2 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する土地を譲渡した場合、債務消滅の効果は、原則として移転登記の完了時に生じる。

3 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が占有する時計を引き渡した場合、当該時計が他人から借りた時計であったとしても、債権者が、善意、無過失で、平穏に、かつ、公然と占有を開始したときには、時計の所有権を取得できる。

4 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて自己が所有する時計を引き渡した場合、その時計に隠れた瑕疵があるときでも、債権者は、債務者に対し瑕疵担保責任を追及することはできない。

5 債務者が債権者と合意して、債権者に対し本来の債務の弁済に代えて手形または小切手を交付した場合、これによって債務消滅の効果が生じるので、それらの不渡りがあっても、債権者は、債務者に対し損害賠償を請求することはできない。


【昭和57年6月4日,最高裁判所第二小法廷,所有権移転登記抹消登記手続】

【判事事項】

不動産を目的とする代物弁済と該不動産所有権移転の時期


【裁判要旨】

不動産を目的とする代物弁済契約の意思表示がされたときは、これにより該不動産の所有権移転の効果が生ずる。


【昭和39年11月26日,最高裁判所第一小法廷,貸金請求】

【判事事項】

民法第482条にいう「他ノ給付」が不動産の所有権を移転することにある場合と代物弁済成立の要件。


【裁判要旨】

民法第482条にいう「他ノ給付」が不動産の所有権を移転することにある場合には、当事者がその意思表示をするだけではたりず、登記その他引渡行為を終了し、第三者に対する対抗要件を具備したときでなければ、代物弁済は成立しないと解すべきである。


民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(11):出典法務省
『代物弁済として不動産を給付した事案において,代物弁済による債務消滅の効果は原則として所有権移転登記手続を完了した時に生ずるが,代物弁済の目的である不動産の所有権移転の効果は,原則として当事者間の代物弁済契約の成立した時に,その意思表示の効果として生ずることを妨げないとしている(最判昭和57年6月4日判時1048号97頁,最判昭和60年12月20日判時1207号53頁)。』

民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(11)は,こちら


【試験ポイント】✨

1〇【昭和57年6月4日,最高裁判所第二小法廷,所有権移転登記抹消登記手続】

2〇【昭和39年11月26日,最高裁判所第一小法廷,貸金請求】

3〇 第192条(即時取得),代物弁済も取引行為なので即時取得成立

4✖ 第559条(有償契約への準用),第562条(買主の追完請求権),民法改正によって,問題文の「瑕疵担保責任」が「契約不適合責任」に改められました。

5〇 原文のまま


【民法(改正対応)】↓

第192条(即時取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。

第482条(代物弁済)
弁済をすることができる者(以下「弁済者」という。)が、債権者との間で、債務者の負担した給付に代えて他の給付をすることにより債務を消滅させる旨の契約をした場合において、その弁済者が当該他の給付をしたときは、その給付は、弁済と同一の効力を有する。

第559条(有償契約への準用)
この節の規定は、売買以外の有償契約について準用する。ただし、その有償契約の性質がこれを許さないときは、この限りでない。

第562条 (買主の追完請求権)
引き渡された目的物が種類品質又は数量に関して契約の内容に適合しないものであるときは、買主は、売主に対し、目的物の修補代替物の引渡し又は不足分の引渡しによる履行の追完を請求することができる。ただし、売主は、買主に不相当な負担を課するものでないときは、買主が請求した方法と異なる方法による履行の追完をすることができる。
2 前項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、同項の規定による履行の追完の請求をすることができない。

第563条(買主の代金減額請求権)
前条第1項本文に規定する場合において、買主が相当の期間を定めて履行の追完の催告をし、その期間内に履行の追完がないときは、買主は、その不適合の程度に応じて代金の減額を請求することができる。
2 前項の規定にかかわらず、次に掲げる場合には、買主は、同項の催告をすることなく、直ちに代金の減額を請求することができる。
一 履行の追完が不能であるとき。
二 売主が履行の追完を拒絶する意思を明確に表示したとき。
三 契約の性質又は当事者の意思表示により、特定の日時又は一定の期間内に履行をしなければ契約をした目的を達することができない場合において、売主が履行の追完をしないでその時期を経過したとき。
四 前3号に掲げる場合のほか、買主が前項の催告をしても履行の追完を受ける見込みがないことが明らかであるとき。
3 第1項の不適合が買主の責めに帰すべき事由によるものであるときは、買主は、前2項の規定による代金の減額の請求をすることができない。

第564条(買主の損害賠償請求及び解除権の行使)
前二条の規定は、第415条の規定による損害賠償の請求並びに第541条及び第542条の規定による解除権の行使を妨げない。

第569条(債権の売主の担保責任)
債権の売主が債務者の資力を担保したときは、契約の時における資力を担保したものと推定する。
2 弁済期に至らない債権の売主が債務者の将来の資力を担保したときは、弁済期における資力を担保したものと推定する。


※ 民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(15)記事は,こちら