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行政書士試験過去問民法判例 平成6年2月8日

【平成30年行政書士試験出題】

【問題】Aが登記簿上の所有名義人である甲土地をBが買い受ける旨の契約(以下「本件売買契約」という。)をA・B間で締結した場合に関する次のア~オの記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 甲土地は実際にはCの所有に属していたが、CがAに無断で甲土地の所有名義人をAとしていた場合において、Aがその事情を知らないBとの間で本件売買契約を締結したときであっても、BはCに対して甲土地の引渡しを求めることができない。

イ 甲土地はAの所有に属していたところ、Aの父であるDが、Aに無断でAの代理人と称して本件売買契約を締結し、その後Dが死亡してAがDを単独で相続したときは、Aは、Dの法律行為の追認を拒絶することができ、また、損害賠償の責任を免れる。

ウ 甲土地が相続によりAおよびEの共有に属していたところ、AがEに無断でAの単独所有名義の登記をしてBとの間で本件売買契約を締結し、Bが所有権移転登記をした場合において、Bがその事情を知らず、かつ、過失がないときは、Bは甲土地の全部について所有権を取得する。

エ 甲土地はAの所有に属していたところ、本件売買契約が締結され、B名義での所有権移転の仮登記がされた場合において、Aが甲土地をその事情を知らないFに売却し所有権移転登記をしたときは、Bは本登記をしない限りFに対して所有権の取得を対抗することができない。

オ 甲土地はAの所有に属していたところ、GがAに無断で甲土地上に建物を築造し、その建物の所有権保存登記をした場合において、本件売買契約により甲土地の所有者となったBは、Gが当該建物の所有権を他に譲渡していたとしても、登記名義がGにある限り、Gに対して当該建物の収去および土地の明渡しを求めることができる。

1 ア・ウ

2 ア・オ

3 イ・ウ

4 イ・エ

5 エ・オ


【昭和45年7月24日, 最高裁判所第二小法廷, 所有権確認等請求】

【判事事項】

一、不動産の所有者が他人名義を使用して不実の登記を経由した場合における民法94条2項の類推適用

二、民法94条2項にいう善意の第三者


【裁判要旨】

一、不動産の所有者甲が、乙にその所有権を移転する意思がないのに、乙名義を使用して他からの所有権移転登記を受けたときは、右登記について乙の承諾がない場合においても、民法94条2項を類推適用して、甲は、乙が不動産の所有権を取得しなかつたことをもつて、善意の第三者に対抗することができないものと解すべきである。

二、民法94条2項にいう第三者とは、虚偽表示の当事者またはその一般承継人以外の者であつて、その表示の目的につき法律上利害関係を有するに至つた者をいい、甲乙間における虚偽表示の相手方乙との間で右表示の目的につき直接取引関係に立つた丙が悪意の場合でも、丙からの転得者丁が善意であるときは、丁は同条項にいう善意の第三者にあたる。


【昭和48年7月3日,最高裁判所第三小法廷,貸金請求】

【判事事項】

民法117条と無権代理人を相続した本人の責任


【裁判要旨】

無権代理人を相続した本人は、無権代理人が民法117条により相手方に債務を負担していたときには、無権代理行為について追認を拒絶できる地位にあつたことを理由として、右債務を免れることができない。


【昭和38年2月22日,最高裁判所第二小法廷, 登記抹消登記手続請求】

【裁判要旨】

一 共同相続と登記

二 共有持分に基づく登記抹消請求の許否

三 当事者が所有権取得登記の全部抹消を求めている場合に更正登記を命ずる判決をすることの可否


【判事事項】

一 甲乙両名が共同相続した不動産につき乙が勝手に単独所有権取得の登記をし、さらに第三取得者丙が乙から移転登記をうけた場合、甲は丙に対し自己の持分を登記なくして対抗できる。

二 右の場合、甲が乙丙に対し請求できるのは、甲の持分についてのみの一部抹消(更正)登記手続であつて、各登記の全部抹消を求めることは許されない。

三 右の場合、甲が乙丙に対し右登記の全部抹消登記手続を求めたのに対し、裁判所が乙丙に対し前記一部抹消(更正)登記手続を命ずる判決をしても、民訴法第186条に反しない。


【昭和38年10月8日,最高裁判所第三小法廷,所有権移転登記抹消登記手続等請求】

【判事事項】

仮登記の効力。


【裁判要旨】

建物所有権移転請求権保全の仮登記権利は、本登記をなすに必要な要件を具備した場合でも、本登記を経由しないかぎり、登記の欠缺を主張しうる第三者に対し該建物の明渡を求めることは許されない。


【平成6年2月8日,最高裁判所第三小法廷,建物収去土地明渡】

【判事事項】

甲所有地上の建物所有者乙がこれを丙に譲渡した後もなお登記名義を保有する場合における建物収去・土地明渡義務者


【裁判要旨】

甲所有地上の建物を取得し、自らの意思に基づいてその旨の登記を経由した乙は、たとい右建物を丙に譲渡したとしても、引き続き右登記名義を保有する限り、甲に対し、建物所有権の喪失を主張して建物収去・土地明渡しの義務を免れることはできない。


【試験ポイント】✨

ア✖【昭和45年7月24日, 最高裁判所第二小法廷, 所有権確認等請求】

イ✖【昭和48年7月3日,最高裁判所第三小法廷,貸金請求】

ウ✖【昭和38年2月22日,最高裁判所第二小法廷, 登記抹消登記手続請求】

エ〇【昭和38年10月8日,最高裁判所第三小法廷,所有権移転登記抹消登記手続等請求】

オ〇【平成6年2月8日,最高裁判所第三小法廷,建物収去土地明渡】,令和3年にも出題