行政書士試験過去問解説【行政上の義務の履行確保手段】
【試験ポイント】✨
以下のとおり,イメージで覚えてしまいましょう。行政目的を実現する手段として,行政強制と行政罰がある!
そして,行政強制は大別して行政上の強制執行と即時強制に分けられる!
さらに,行政上の強制執行は,代執行(建築基準法),執行罰(砂防法),直接強制(難民認定法),強制徴収に分けられる!
1✖ 即時強制とは,行政上の義務を強制するためにではない。
2✖ 直接強制は,代替的・非代替的・作為・不作為を問わず,一切の義務に適用できる。「代執行を補完するものとして、その手続が行政代執行法に規定されている。」が間違い。行政上の強制執行は,代執行(建築基準法),執行罰(砂防法),直接強制(難民認定法),強制徴収に分けられる。
3✖ 行政代執行2条 条例は含まれる。
【法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段に よつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
4〇 原文のまま 非訟事件手続法第5編119条
5✖【昭和57年7月15日,最高裁判所第1小法廷,行政処分取消事件】
道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付の通告は、抗告訴訟の対象とならない。【判事事項】
道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付の通告と抗告訴訟
【裁判要旨】
道路交通法127条1項の規定に基づく反則金の納付の通告は、抗告訴訟の対象とならない。
『交通反則通告制度は、車両等の運転者がした道路交通法違反行為のうち、比較的軽微であつて、警察官が現認する明白で定型的なものを反則行為とし、反則行為をした者に対しては、警察本部長が定額の反則金の納付を通告し、その通告を受けた者が任意に反則金を納付したときは、その反則行為について刑事訴追をされず、一定の期間内に反則金の納付がなかつたときは、本来の刑事手続が進行するということを骨子とするものであり、これによつて、大量に発生する車両等の運転者の道路交通法違反事件について、事案の軽重に応じた合理的な処理方法をとるとともに、その処理の迅速化を図ろうとしたものである。 このような見地から、道路交通法は、反則行為に関する処理手続の特例として、 警察官において、反則者があると認めるときは、その者に対し、すみやかに反則行為となるべき事実の要旨及び当該反則行為が属する反則行為の種別等を告知し(126条1項)、警察官から報告を受けた警察本部長は、告知を受けた者が当該告知に係る種別に属する反則行為をした反則者であると認めるときは、その者に対し、当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付を書面で通告し(127条1項)、通告を受けた者は、反則行為に関する処理手続の特例の適用を受けようとする場合には、当該通告を受けた日の翌日から起算して10日以内に通告に係る反則金を国に対して納付しなければならず(128条1項、125条3項)、右反則金を納付した者は、当該通告の理由となつた行為に係る事件について、公訴を提起されないことになり(128条2項)、反則者は、当該反則行為についてその者が当該反則行為が属する種別に係る反則金の納付の通告を受け、かつ、前記10日の期間が経過した後でなければ、当該反則行為に係る事件について、公訴を提起されないこと (130条)等を定めている。 右のような交通反則通告制度の趣旨とこれを具体化した道路交通法の諸規定に徴すると、反則行為は本来犯罪を構成する行為であり、したがつてその成否も刑事手続において審判されるべきものであるが、前記のような大量の違反事件処理の迅速化の目的から行政手続としての交通反則通告制度を設け、反則者がこれによる処理に服する途を選んだときは、刑事手続によらないで事案の終結を図ることとしたものと考えられる。道路交通法127条1項の規定による警察本部長の反則金の納付の通告(以下「通告」という。)があつても、これにより通告を受けた者において 通告に係る反則金を納付すべき法律上の義務が生ずるわけではなく、ただその者が任意に右反則金を納付したときは公訴が提起されないというにとどまり、納付しないときは、検察官の公訴の提起によつて刑事手続が開始され、その手続において通告の理由となつた反則行為となるべき事実の有無等が審判されることとなるものとされているが、これは上記の趣旨を示すものにほかならない。してみると、道路交通法は、通告を受けた者が、その自由意思により、通告に係る反則金を納付し、これによる事案の終結の途を選んだときは、もはや当該通告の理由となつた反則行為の不成立等を主張して通告自体の適否を争い、これに対する抗告訴訟によつてその効果の覆滅を図ることはこれを許さず、右のような主張をしようとするのであれば、 反則金を納付せず、後に公訴が提起されたときにこれによつて開始された刑事手続 の中でこれを争い、これについて裁判所の審判を求める途を選ぶべきであるとしているものと解するのが相当である。もしそうでなく、右のような抗告訴訟が許されるものとすると、本来刑事手続における審判対象として予定されている事項を行政訴訟手続で審判することとなり、また、刑事手続と行政訴訟手続との関係について複雑困難な問題を生ずるのであつて、同法がこのような結果を予想し、これを容認しているものとは到底考えられない。右の次第であるから、通告に対する行政事件訴訟法による取消訴訟は不適法というべきであり、これと趣旨を同じくする原審の判断は正当である。所論は、憲法32条違反をいうが、通告が通告に係る反則金納付の法律上の義務を課するものではなく、また、通告の理由となつた反則行為となるべき事実の有無等については刑事手続においてこれを争う途が開かれていることは前記のとおりであるから、通告自体に対する不服申立ての途がないからといつて、所論憲法の条規に違反するものではなく、このことは従来の判例の趣旨に徴して明らかである(最高裁判所昭和38年(オ)第1081号同39年2月26日大法廷判決・民集18巻2号353頁参照)。また、所論中憲法31条、76条2項後段違反をいう点は、通告は、前記のような性質の行政行為であつて、刑罰を科するものではなく、行政機関のする裁判でもないから、いずれもその前提を欠くものというべきである。論旨はすべて理由がなく、採用することができない。よつて、行政事件訴訟法7条、民訴法401条、95条、89条に従い、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。』
第1条 行政上の義務の履行確保に関しては、別に法律で定めるものを除いては、この法律の定めるところによる。
第2条 法律(法律の委任に基く命令、規則及び条例を含む。以下同じ。)により直接に命ぜられ、又は法律に基き行政庁により命ぜられた行為(他人が代つてなすことのできる行為に限る。)について義務者がこれを履行しない場合、他の手段によつてその履行を確保することが困難であり、且つその不履行を放置することが著しく公益に反すると認められるときは、当該行政庁は、自ら義務者のなすべき行為をなし、又は第三者をしてこれをなさしめ、その費用を義務者から徴収することができる。
第119条(管轄裁判所)
過料事件(過料についての裁判の手続に係る非訟事件をいう。)は、他の法令に特別の定めがある場合を除き、当事者(過料の裁判がされた場合において、その裁判を受ける者となる者をいう。以下この編において同じ。)の普通裁判籍の所在地を管轄する地方裁判所の管轄に属する。
第120条(過料についての裁判等)
過料についての裁判には、理由を付さなければならない。
2 裁判所は、過料についての裁判をするに当たっては、あらかじめ、検察官の意見を聴くとともに、当事者の陳述を聴かなければならない。
3 過料についての裁判に対しては、当事者及び検察官に限り、即時抗告をすることができる。この場合において、当該即時抗告が過料の裁判に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。
4 過料についての裁判の手続(その抗告審における手続を含む。次項において同じ。)に要する手続費用は、過料の裁判をした場合にあっては当該裁判を受けた者の負担とし、その他の場合にあっては国庫の負担とする。
5 過料の裁判に対して当事者から第3項の即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料についての裁判をしたときは、前項の規定にかかわらず、過料についての裁判の手続に要する手続費用は、国庫の負担とする。
第121条(過料の裁判の執行)
過料の裁判は、検察官の命令で執行する。この命令は、執行力のある債務名義と同一の効力を有する。
2 過料の裁判の執行は、民事執行法(昭和54年法律第4号)その他強制執行の手続に関する法令の規定に従ってする。ただし、執行をする前に裁判の送達をすることを要しない。
3 刑事訴訟法(昭和23年法律第131号)第507条の規定は、過料の裁判の執行について準用する。
4 過料の裁判の執行があった後に当該裁判(以下この項において「原裁判」という。)に対して前条第3項の即時抗告があった場合において、抗告裁判所が当該即時抗告を理由があると認めて原裁判を取り消して更に過料の裁判をしたときは、その金額の限度において当該過料の裁判の執行があったものとみなす。この場合において、原裁判の執行によって得た金額が当該過料の金額を超えるときは、その超過額は、これを還付しなければならない。
第122条(略式手続)
裁判所は、第120条第2項の規定にかかわらず、相当と認めるときは、当事者の陳述を聴かないで過料についての裁判をすることができる。
2 前項の裁判に対しては、当事者及び検察官は、当該裁判の告知を受けた日から1週間の不変期間内に、当該裁判をした裁判所に異議の申立てをすることができる。この場合において、当該異議の申立てが過料の裁判に対するものであるときは、執行停止の効力を有する。
3 前項の異議の申立ては、次項の裁判があるまで、取り下げることができる。この場合において、当該異議の申立ては、遡ってその効力を失う。
4 適法な異議の申立てがあったときは、裁判所は、当事者の陳述を聴いて、更に過料についての裁判をしなければならない。
5 前項の規定によってすべき裁判が第1項の裁判と符合するときは、裁判所は、同項の裁判を認可しなければならない。ただし、同項の裁判の手続が法律に違反したものであるときは、この限りでない。
6 前項の規定により第1項の裁判を認可する場合を除き、第4項の規定によってすべき裁判においては、第1項の裁判を取り消さなければならない。
7 第120条第5項の規定は、第1項の規定による過料の裁判に対して当事者から第2項の異議の申立てがあった場合において、前項の規定により当該裁判を取り消して第4項の規定により更に過料についての裁判をしたときについて準用する。
8 前条第4項の規定は、第1項の規定による過料の裁判の執行があった後に当該裁判に対して第2項の異議の申立てがあった場合において、第6項の規定により当該裁判を取り消して第4項の規定により更に過料の裁判をしたときについて準用する。