Q 送り付け詐欺 一方的に送付された商品!?
第59条(売買契約に基づかないで送付された商品)
販売業者は、売買契約の申込みを受けた場合におけるその申込みをした者及び売買契約を締結した場合におけるその購入者(以下この項において「申込者等」という。)以外の者に対して売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合又は申込者等に対してその売買契約に係る商品以外の商品につき売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない。
2 前項の規定は、その商品の送付を受けた者が営業のために又は営業として締結することとなる売買契約の申込みについては、適用しない。
第59条の二
販売業者は、売買契約の成立を偽つてその売買契約に係る商品を送付した場合には、その送付した商品の返還を請求することができない。
『1 法律的には、一方的に商品を送り付ける又は配置する行為は、事前にカタログ等の送付をしているといないとにかかわらず、売買契約の申込み行為である。したがって、この申込みを行った販売業者が勝手に、「購入の意思がない旨の通知がなければ購入を承諾したものとみなす。」と言っても売買契約は成立しない。また、勝手に商品を送付して、「購入しなければ返送せよ。返送しなければ購入とみなす。」と言っても商品の返送義務は生じない。このように商品代金の支払義務も商品の返送義務も生じないので、実際のネガティブ・オプションに際して問題となる点は、民法でも十分解決されるものである。しかし、その商品を受領した後においては、民法第659条(無償受寄者の保管義務)の類推により、自己の財産と同一の注意義務を課されると解するかどうかは問題であるところであるが、他人の所有物である以上は、勝手に処分することはできないと解される。このような状態を長期にわたって続けることは、消費者に過重な負担を強いることにな るので、一定の期間経過後は、勝手に処分できることとしたものである。
2 「売買契約の申込みをし、かつ、その申込みに係る商品を送付した場合」
本条の適用がある場合の要件としては、①売買契約の申込み行為であること、及び② 商品の送付が行われたことの2つである。
したがって、まず、売買契約の申込みでない場合については、適用がない。例えば、1年間雑誌の購読を契約した際、1年経過前に購読者から購読を継続しないときにはその旨を通知すること及びその通知がない場合には継続することについて両当事者間で合意がなされている場合において、1年経過後当該雑誌を送付してもそれは売買契約の申込みとはならない。しかし、事前に何等の契約もない状態において勝手に商品を送付すれば、商品を送った行為が申込み行為にも該当する場合が多いであろうから、この場合2つの要件を充足することとなるので本条は適用される。予めカタログを送付し、その際、購入しない旨の返事がなければ(購入の意思ありとみなして)商品を送付する旨をあわせて通知しても、その段階では本条の適用はまだない。
しかし、その後返事がないからといって商品を送付すれば、その段階で本条の対象となってくる。
①及び②の要件は、時点が異なってもかまわない。両方の要件が充足された時点において、本条の適用対象となる。なお、「送付した」とは、ある場所や人から他の場所や人に物を送り届けることであり、その手段は問わない。つまり、通常の場合、発送から到達までの過程を包括した観念として用いられている。 したがって、郵便や運送等の手段により送付された場合はもちろん、販売業者自身が消費者のもとに商品を送り届けることも該当する。 例えば、配置販売で消費者の意思を確認しないままあるいは、消費者がいらない旨の意思表示をしたにもかかわらず、販売業者が勝手に置いていった場合も本条が適用となる。本条は、送付された「商品」の種類を問わない。商品について限定を付していない理由は、およそ、かかる行為の対象となり得る商品についてかかる行為が行われた場合、一部商品について本条を適用しない合理的理由がないためである。』