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行政書士試験過去問 よく出題される留置権判例

【平成27年行政書士試験出題】

【問題】留置権に関する次の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当でないものはどれか。

1 Aは自己所有の建物をBに売却し登記をBに移転した上で、建物の引渡しは代金と引換えにすることを約していたが、Bが代金を支払わないうちにCに当該建物を転売し移転登記を済ませてしまった場合、Aは、Cからの建物引渡請求に対して、Bに対する代金債権を保全するために留置権を行使することができる。

2 Aが自己所有の建物をBに売却し引き渡したが、登記をBに移転する前にCに二重に売却しCが先に登記を備えた場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することができる。

3 AがC所有の建物をBに売却し引き渡したが、Cから所有権を取得して移転することができなかった場合、Bは、Cからの建物引渡請求に対して、Aに対する損害賠償債権を保全するために留置権を行使することはできない。

4 Aが自己所有の建物をBに賃貸したが、Bの賃料不払いがあったため賃貸借契約を解除したところ、その後も建物の占有をBが続け、有益費を支出したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する有益費償還請求権を保全するために留置権を行使することはできない。

5 Aが自己所有の建物をBに賃貸しBからAへ敷金が交付された場合において、賃貸借契約が終了したときは、Bは、Aからの建物明渡請求に対して、Aに対する敷金返還請求権を保全するために、同時履行の抗弁権を主張することも留置権を行使することもできない。


【昭和47年11月16日,最高裁判所第一小法廷,建物明渡請求】

【判事事項】

一、甲所有の物を買受けた乙が売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合における丙の甲に対する物の引渡請求と甲の留置権の抗弁

二、物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合においてその被担保債権の支払義務者が第三者であるときの判決主文


【裁判要旨】

一、甲所有の物を買受けた乙が、売買代金を支払わないままこれを丙に譲渡した場合には、甲は、丙からの物の引渡請求に対して、未払代金債権を被担保債権とする留置権の抗弁権を主張することができる。

二、物の引渡請求に対する留置権の抗弁を認容する場合において、その物に関して生じた債務の支払義務を負う者が、原告ではなく第三者であるときは、被告に対し、その第三者から右債務の支払を受けるのと引換えに物の引渡をすることを命ずるべきである。


【 昭和43年11月21日,最高裁判所第一小法廷,家屋明渡請求】

【判事事項】

不動産の二重売買の場合の履行不能を理由とする損害賠償債権をもつてする留置権の主張の許否


【裁判要旨】

不動産の二重売買において、第二の買主のため所有権移転登記がされた場合、第一の買主は、第二の買主の右不動産の所有権に基づく明渡請求に対し、売買契約不履行に基づく損害賠償債権をもつて、留置権を主張することは許されない。


【昭和51年6月17日,最高裁判所第一小法廷,所有権移転登記抹消等請求】

【判事事項】

農地買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により失効した場合と被売渡人から右土地を買い受けた者の有益費償還請求権に基づく土地留置権の行使


【裁判要旨】

農地買収・売渡処分が買収計画取消判決の確定により当初にさかのぼつて効力を失つた場合において、被売渡人から右土地を買い受けた者が土地につき有益費を支出していても、その支出をした当時、買主が被買収者から買収・売渡処分の無効を理由として所有権に基づく土地返還請求訴訟を提起されており、買主において買収・売渡処分が効力を失うかもしれないことを疑わなかつたことにつき過失があるときには、買主は、右有益費償還請求権に基づく土地の留置権を行使することができない。


【昭和46年7月16日,最高裁判所第二小法廷,家屋明渡等請求】

【判事事項】

建物賃貸借契約解除後の不法占有と民法295条2項の類推適用


【裁判要旨】

建物の賃借人が、債務不履行により賃貸借契約を解除されたのち、権原のないことを知りながら右建物を不法に占有する間に有益費を支出しても、その者は、民法295条2項の類推適用により、右費用の償還請求権に基づいて右建物に留置権を行使することはできない。


【昭和49年9月2日,最高裁判所第一小法廷,家屋明渡請求】

【判事事項】

賃借家屋明渡債務と敷金返還債務との間の同時履行関係の有無


【裁判要旨】

家屋の賃貸借終了に伴う賃借人の家屋明渡債務と賃貸人の敷金返還債務とは、特別の約定のないかぎり、同時履行の関係に立たない。


【留置権が成立しない重要判例】↓

①造作買取請求権(昭和29年1月14日)

②不動産の二重売買(昭和43年11月21日)

③借地上の家屋に関する費用償還請求権とその敷地の留置権(昭和44年11月6日)

④建物賃貸借契約解除後の不法占有と民法295条2項の類推適用(昭和46年7月16日)

⑤賃借家屋明渡債務と敷金返還債務との間の同時履行関係の有無(昭和49年9月2日)

⑥他人物売買:有益費償還請求権(昭和51年6月17日)


【不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たるか】

【平成29年12月14日,最高裁判所第一小法廷,建物明渡等請求事件】,こちら
【判事事項】
 不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たるか
【裁判要旨】
不動産は,商法521条が商人間の留置権の目的物として定める「物」に当たる。


【試験ポイント】✨

1〇【昭和47年11月16日,最高裁判所第一小法廷,建物明渡請求】

2✖【昭和43年11月21日,最高裁判所第一小法廷,家屋明渡請求】

3〇【昭和51年6月17日,最高裁判所第一小法廷,所有権移転登記抹消等請求】

4〇【昭和46年7月16日,最高裁判所第二小法廷,家屋明渡等請求】

5〇【昭和49年9月2日,最高裁判所第一小法廷,家屋明渡請求】


【民法(改正対応)】↓

第295条(留置権の内容)
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。