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行政書士試験過去問 民法 利益相反行為

【平成26年行政書士試験出題】

【問題】利益相反行為に関する以下の記述のうち、民法の規定および判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 親権者が、共同相続人である数人の子を代理して遺産分割協議をすることは、その結果、数人の子の間の利害の対立が現実化しない限り、利益相反行為にはあたらない。

イ 親権者である母が、その子の継父が銀行から借り入れを行うにあたり、子の所有の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

ウ 親権者が、自己の財産を、子に対して有償で譲渡する行為は当該財産の価額の大小にかかわらず利益相反行為にあたるから、その子の成年に達した後の追認の有無にかかわらず無効である。

エ 親権者が、自らが債務者となって銀行から借り入れを行うにあたって、子の所有名義である土地に抵当権を設定する行為は、当該行為がどのような目的で行なわれたかに関わりなく利益相反行為にあたる。

オ 親権者が、他人の金銭債務について、連帯保証人になるとともに、子を代理して、子を連帯保証人とする契約を締結し、また、親権者と子の共有名義の不動産に抵当権を設定する行為は、利益相反行為にあたる。

1 ア・イ

2 ア・エ

3 イ・ウ

4 ウ・エ

5 エ・オ


【昭和49年7月22日,最高裁判所第一小法廷,登記抹消等請求】

【判事事項】

一、民法826条2項所定の利益相反行為の意義

二、遺産分割の協議と民法826条2項


【裁判要旨】

一、民法826条2項所定の利益相反行為とは、行為の客観的性質上数人の子ら相互間に利害の対立を生ずるおそれのあるものを指称し、その行為の結果現実にその子らの間に利害の対立を生ずるか否かは問わない。

二、遺産分割の協議は、民法826条2項の適用上は、利益相反行為に該当し、共同相続人中の数人の未成年者が、相続権を有しない一人の親権者の親権に服するときは、右未成年者らのうち当該親権者によつて代理される一人の者を除くその余の未成年者については、各別に選任された特別代理人がその各人を代理して遺産分割の協議に加わることを要する。


【昭和35年7月15日,最高裁判所第二小法廷,抵当権設定登記等抹消請求】
『原判決の認定するところによれば、上告人の親権者(母)であつたDは、当時その夫であつたE(上告人には継父にあたる)が被上告人から金員を借受けるについて、上告人の法定代理人として、上告人を債務者とし、上告人所有の本件各不動産に抵当権を設定し、かつ判示賃借権設定の契約を締結し、それぞれ判示登記を経由したというのであるが、右金銭貸借、抵当権設定等は、Dはその夫たるEのためにしたものであつて、D自身の利益のために為されたものでないことは原判決の認定するところである。とすれば、右の行為をもつて、親権者たるDと上告人との間の民法826条にいわゆる「利益が相反する行為」というにあたらないとした原判決は正当であつて、論旨は採用することはできない。』

【昭和46年4月20日,最高裁判所第三小法廷,建物収去土地明渡請求】

【判事事項】

親権者と子の利益相反行為につき親権者が法定代理人としてなした行為の効力


【裁判要旨】

親権者と子の利益相反行為につき親権者が法定代理人としてなした行為は民法132条所定の無権代理行為にあたる。


【昭和37年10月2日,最高裁判所第三小法廷,持分移転登記抹消登記手続履行請求】

【判事事項】

民法第826条の利益相反行為と行為の動機。


【裁判要旨】

親権者が自己の負担する貸金債務につき未成年の子の所有する不動産に抵当権を設定する行為は、借受金を右未成年の子の養育費に供する意図であつても、民法第826条にいう「利益が相反する行為」にあたる。


【昭和43年10月8日,最高裁判所第三小法廷,土地建物所有権移転登記抹消登記手続(本訴)家屋明渡(反訴)請求】

【判事事項】

一、抵当権の設定契約の無効とその抵当権に基づく競売手続の効果

二、民法第826条の利益相反行為にあたるとされた事例


【裁判要旨】

一、抵当権の設定契約が無効のときには、その抵当権に基づく競売により、抵当物件が競落されても、競落人はその所有権を取得することができない。

二、第三者の金銭債務について、親権者がみずから連帯保証をするとともに、子の代理人として、同一債務について連帯保証をし、かつ、親権者と子が共有する不動産について抵当権を設定するなどの判示事実関係のもとでは、子のためにされた連帯保証債務負担行為および抵当権設定行為は、民法第826条にいう利益相反行為にあたる。


ア✖【昭和49年7月22日,最高裁判所第一小法廷,登記抹消等請求】

イ✖【昭和35年7月15日,最高裁判所第二小法廷,抵当権設定登記等抹消請求】

ウ✖「追認の有無にかかわらず無効である」が間違い。【昭和46年4月20日,最高裁判所第三小法廷,建物収去土地明渡請求】

エ〇【昭和37年10月2日,最高裁判所第三小法廷,持分移転登記抹消登記手続履行請求】

オ〇【昭和43年10月8日,最高裁判所第三小法廷,土地建物所有権移転登記抹消登記手続(本訴)家屋明渡(反訴)請求】


【民法(改正対応)】↓

第826条(利益相反行為)
親権を行う父又は母とその子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その子のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。
2 親権を行う者が数人の子に対して親権を行う場合において、その一人と他の子との利益が相反する行為については、親権を行う者は、その一方のために特別代理人を選任することを家庭裁判所に請求しなければならない。