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行政書士試験過去問 最高裁判所が示した判断

【平成21年行政書士試験出題】

【問題】次の手紙の文中に示された疑問をうけて、これまで類似の規制について最高裁判所が示した判断を説明するア~オの記述のうち、妥当なものの組合せはどれか。

前略 大変ご無沙汰しております。お取り込み中申し訳ありませんが、私の進路選択について、折り入って貴兄にご相談したいことができました。演劇三昧だった学生生活を切り上げて、行政書士をめざして勉強を始めたのですが、 最近、自らの職業選択が抱える不条理に、少々悩んでおります。

行政書士になりたい私が、試験に合格しなければ行政書士になれない、というのは、職業選択の自由という、私のかけがえのない人権の侵害にはあたらないのでしょうか。他方で、もし行政書士になれたとしても、行政書士法1条の2で行政書士の独占業務とされている書類の作成に関する限り、他者の営業の自由を排除しているわけですから、 私は、かけがえのない人権であるはずの、 他人の職業選択の自由を侵害して生きることになるのでしょうか……


拝復 お悩みのご様子ですね。行政書士業を一定の資格要件を具備する者に限定する以上、それ以外の者の開業は禁止されるのですから、あなたのご疑問にはあたっているところもあります。問題はそうした制限を正当化できるかどうかで、この点は意見が分かれます。ご参考までに、最高裁判所がこれまでに示した判断についてだけ申しますと、


ア 医薬品の供給を資格制にすることについては、重要な公共の福祉のために必要かつ合理的な措置ではないとして、違憲判決が出ていますよ。

イ 小売市場の開設経営を都道府県知事の許可にかからしめる法律については、 中小企業保護を理由として、合憲判決が出ていましたよね。

ウ 司法書士の業務独占については、登記制度が社会生活上の利益に重大な影響を及ぼすものであることなどを指摘して、合憲判決が出ています。

工 公衆浴場を開業する場合の適正配置規制については、健全で安定した浴場経営による国民の保健福祉の維持を理由として、合憲とされていますね。

オ 酒販免許制については、職業活動の内容や態様を規制する点で、許可制よりも厳しい規制であるため、適用違憲の判決が下された例があります。


1 ア ・ イ ・ ウ

2 ア ・ イ ・ エ

3 イ ・ ウ ・ エ

4 イ ・ ウ ・ オ

5 ウ ・ エ ・ オ


【昭和47年11月22日,最高裁判所大法廷,小売商業調整特別措置法違反】

【判事事項】

一 個人の経済活動に対し社会経済政策の実施の一手段としてなされる法的規制措置の合憲性

二 個人の経済活動に対する法的規制措置と違憲判断

三 小売商業調整特別措置法3条1項、同法施行令1条、2条所定の小売市場の許可規制の合憲性

四 違憲の主張が上告適法の理由にあたらないとされた事例

五 憲法25条1項違反の主張が前提を欠くとされた事例


【裁判要旨】

一 国が、積極的に、国民経済の健全な発達と国民生活の安定を期し、社会経済全体の均衡のとれた調和的発展を図るため、その社会経済政策の実施の一手段として、立法により、個人の経済活動に対し、一定の規則措置を講ずることは、それが右目的達成のために必要かつ合理的な範囲にとどまる限り、憲法の禁ずるところではない。

二 個人の経済活動に対する法的規制措置については、裁判所は、立法府がその裁量権を逸脱し、当該法的規制措置が著しく不合理であることの明白な場合に限つて、これを違憲とすることができる。

三 小売商業調整特別措置法3条1項、同法施行令1条、2条所定の小売市場の許可規制は、憲法22条1項、14条に違反しない。

四 小売商業調整特別措置法5条1号に基づく大阪府小売市場許可基準内規(一)は、それ自体、法的拘束力を有するものではなく、単に同法3条1項に基づく許可申請にかかる許可行政の運用基準を定めたものにすぎないから、その当否は、具体的な不許可処分の適否を通じて争えば足り、右許可申請をしない者が右内規の一般的合憲性を争うことは許されない。

五 小売商業調整特別措置法所定の小売市場の許可規制のために、国民の健康で文化的な最低限度の生活に具体的に特段の影響を及ぼしたという事実は、本件記録上もこれを認めることができないから、所論憲法25条1項違反の主張は、その前提を欠き、上告適法の理由にあたらない。


【平成12年2月8日,最高裁判所第三小法廷,司法書士法違反被告事件】

【判事事項】

一 司法書士法19条1項、25条1項と憲法22条1項

二 行政書士が業として登記申請手続について代理することと司法書士法19条1項


【裁判要旨】

一 司法書士及び公共嘱託登記司法書士協会以外の者が他人の嘱託を受けて登記に関する手続について代理する業務及び登記申請書類を作成する業務を行うことを禁止し、これに違反した者を処罰する司法書士法19条1項、25条1項は、憲法22条1項に違反しない。

二 行政書士が業として登記申請手続について代理することは、司法書士法19条1項に違反する。


【昭和30年1月26日,最高裁判所大法廷,公衆浴場法違反】

【判事事項】

一 公衆浴場法(昭和25年法律第187号による改正後のもの)第2条第2項後段の規定並びに昭和25年福岡県条例第54号第3条の規定と憲法第22条

二 同条例第3条ないし第5条と憲法第94条


【裁判要旨】

一 公衆浴場法(昭和25年法律第187号による改正後のもの)第2条第2項後段の、「公衆浴場の設置場所が配置の適正を欠くと認められる場合には、都道府県知事は公衆浴場の経営を許可しないことができる」旨の規定並びに昭和25年福岡県条例第54号3条の、公衆浴場の設置場所の配置の基準等を定めている規定は、いずれも職業選択の自由を保証する憲法第22条に違反しない。

二 同条例第3条ないし第5条の規定は、公衆浴場法第2条の範囲内で同法が例外的に不許可とする場合の細則を定めたもので、憲法第94条に違反しない。


【平成4年12月15日, 最高裁判所第三小法廷,酒類販売業免許拒否処分取消】

【判事事項】

酒税法9条、10条10号と憲法22条1項


【裁判要旨】

酒税法9条、10条10号は、憲法22条1項に違反しない。

(補足意見及び反対意見がある。)


【試験ポイント】

ア✖【昭和50年4月30日,最高裁判所大法廷,行政処分取消請求】,『供給業者を一定の資格要件を具備する者に限定し、それ以外の者による開業を禁止する許可制を採用したことは、それ自体としては公共の福祉に適合する目的のための必要かつ合理的措置として肯認することができる』詳しくは,こちらの記事
イ〇【昭和47年11月22日,最高裁判所大法廷,小売商業調整特別措置法違反】
ウ〇【平成12年2月8日,最高裁判所第三小法廷,司法書士法違反被告事件】
エ〇【昭和30年1月26日,最高裁判所大法廷,公衆浴場法違反】
オ✖【平成4年12月15日, 最高裁判所第三小法廷,酒類販売業免許拒否処分取消】