行政書士試験過去問解説 占有改定【昭和35年2月11日,最高裁判所第1小法廷,動産所有権確認同引渡請求】
民法では担保物権4種類(留置権・先取特権・質権・抵当権)があります。
そして,当事者の意思とは関係なく発生する権利が「留置権」「先取特権」です(法定担保物権)!これに対し,当事者の意思によって発生する「質権」,「抵当権」などは(約定担保物権)と言います。占有改定(せんゆうかいてい)のイメージは,占有の移転方式とイメージしましょう。占有改定で許されるものは,民法178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件),民法333条(先取特権と第三取得者)です。よく各種試験に出題されるのが,「占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第192条の適用はない。」部分です!
さっそく,用語の意味を理解しましょう。
【留置権】他人の物を占有している者が,その物に関して生じた債権が支払われるまで,その物を留置することができる権利。
【先取特権(さきどりとっけん)】債務者の財産から,他の債権者を排斥して優先的に支払ってもらえる権利。
【質権】債権者が債権の担保として債務者または第三者の物を受け取って,債務者が弁済をするまで手元に置き,弁済をしないときはその物から優先的に弁済を受けることができる権利。
ア〇 民法192条(昭和35年2月11日,最高裁判所第1小法廷,動産所有権確認同引渡請求)公務員試験上級・国税では,何回も出題されている有名な判例。
イ〇 民法295条 「債務者を占有代理人とした占有は含まれない。」そのまま,覚えましょうね。
ウ✖ 大判大6.7.26 後半部分が間違い。判例・通説は,引渡しには占有改定も含む。
エ〇 民法344条,345条
オ✖ 最判昭和30・6・2「債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができる」
解答4
【判事事項】
占有改定による占有の取得と民法第192条の適用の有無。
【裁判要旨】
占有取得の方法が外観上の占有状態に変更を来たさない占有改定にとどまるときは、民法第192条の適用はない。
【判事事項】
動産の売渡担保契約と債務者の所有権取得の対抗力の有無
【裁判要旨】
債務者が動産を売渡担保に供し引きつづきこれを占有する場合においては、債権者は、契約の成立と同時に、占有改定によりその物の占有権を取得し、その所有権取得をもつて第三者に対抗することができるものと解すべきである。
第178条(動産に関する物権の譲渡の対抗要件)
動産に関する物権の譲渡は、その動産の引渡しがなければ、第三者に対抗することができない。
第183条(占有改定)
代理人が自己の占有物を以後本人のために占有する意思を表示したときは、本人は、これによって占有権を取得する。
第192条(即時取得)
取引行為によって、平穏に、かつ、公然と動産の占有を始めた者は、善意であり、かつ、過失がないときは、即時にその動産について行使する権利を取得する。
第295条(留置権の内容)
他人の物の占有者は、その物に関して生じた債権を有するときは、その債権の弁済を受けるまで、その物を留置することができる。ただし、その債権が弁済期にないときは、この限りでない。
2 前項の規定は、占有が不法行為によって始まった場合には、適用しない。
第333条(先取特権と第三取得者)
先取特権は、債務者がその目的である動産をその第三取得者に引き渡した後は、その動産について行使することができない。
第344条(質権の設定)
質権の設定は、債権者にその目的物を引き渡すことによって、その効力を生ずる。
第345条(質権設定者による代理占有の禁止)
質権者は、質権設定者に、自己に代わって質物の占有をさせることができない。