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行政書士試験過去問判例 試験によく出る猿払事件

【昭和49年11月6日,最高裁判所大法廷,国家公務員法違反:猿払事件】

【判事事項】

一、国家公務員法102条1項、人事院規則1417・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止と憲法21条

二、国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法31条

三、国家公務員法110条1項19号の罰則と憲法21条

四、国家公務員法102条1項における人事院規則への委任の合憲性

五、国家公務員法102条1項、人事院規則1417・5項3号、6項13号の禁止に違反する文書の掲示又は配布に同法110条1項19号の罰則を適用することが憲法21条、31条に違反しないとされた事例


【裁判要旨】

一、国家公務員法102条1項、人事院規則1417・5項3号、6項13号による特定の政党を支持する政治的目的を有する文書の掲示又は配布の禁止は、憲法21条に違反しない。

二、国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法31条に違反しない。

三、国家公務員法110条1項19号の罰則は、憲法21条に違反しない。

四、国家公務員法102条1項における人事院規則への委任は、同法82条による懲戒処分及び同法110条1項19号による刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に人事院規則に委任しているからといって、憲法に違反する立法の委任ということはできない。

五、国家公務員法102条1項、人事院規則1417・5項3号、6項13号の禁止に違反する本件の文書の掲示又は配布(判文参照)に同法110条1項19号の罰則を適用することは、たとえその掲示又は配布が、非管理職の現業公務員であって、その職務内容が機械的労務の提供にとどまるものにより、勤務時間外 に、国の施設を利用することなく、職務を利用せず又はその公正を害する意図なく、かつ、労働組合活動の一環として行われた場合であつても、憲法21条、31条に違反しない。


ポイント1:合理的関連性
『そこで、まず、禁止の目的及びこの目的と禁止される行為との関連性について考えると、もし公務員の政治的行為のすべてが自由に放任されるときは、おのずから公務員の政治的中立性が損われ、ためにその職務の遂行ひいてはその属する行政機関の公務の運営に党派的偏向を招くおそれがあり、行政の中立的運営に対する国民の信頼が損われることを免れない。また、公務員の右のような党派的偏向は、逆に政治的党派の行政への不当な介入を容易にし、行政の中立的運営が歪められる可能性が一層増大するばかりでなく、そのような傾向が拡大すれば、本来政治的中立を保ちつつ一体となつて国民全体に奉仕すべき責務を負う行政組織の内部に深刻な政治的対立を醸成し、そのため行政の能率的で安定した運営は阻害され、ひいては議会制民主主義の政治過程を経て決定された国の政策の忠実な遂行にも重大な支障をきたすおそれがあり、このようなおそれは行政組織の規模の大きさに比例して拡大すべく、かくては、もはや組織の内部規律のみによつてはその弊害を防止することができない事態に立ち至るのである。したがつて、このような弊害の発生を防止し、行政の中立的運営とこれに対する国民の信頼を確保するため、公務員の政治的中立性を損うおそれのある政治的行為を禁止することは、まさしく憲法の要請に応え、公務員を含む国民全体の共同利益を擁護するための措置にほかならないのであつて、その目的は正当なものというべきである。また、右のような弊害の発生を防止するため、公務員の政治的中立性を損うおそれがあると認められる政治的行為を禁止することは、禁止目的との間に合理的な関連性があるものと認められるのであつて、たとえその禁止が、公務員の職種・職務権限、勤務時間の内外、国の施設の利用の有無等を区別することなく、あるいは行政の中立的運営を直接、具体的に損う行為のみに限定されていないとしても、右の合理的な関連性が失われるものではない。』

ポイント2:委任の限度を超えない
『なお、政治的行為の定めを人事院規則に委任する国公法102条1項が、公務員の政治的中立性を損うおそれのある行動類型に属する政治的行為を具体的に定めることを委任するものであることは、同条項の合理的な解釈により理解しうるところである。そして、そのような政治的行為が、公務員組織の内部秩序を維持する見地から課される懲戒処分を根拠づけるに足りるものであるとともに、国民全体の共同利益を擁護する見地から科される刑罰を根拠づける違法性を帯びるものであることは、すでに述べたとおりであるから、右条項は、それが同法82条による懲戒処分及び同法110条1項19号による刑罰の対象となる政治的行為の定めを一様に委任するものであるからといつて、そのことの故に、憲法の許容する委任の限度を超えることになるものではない。』

判決文は,こちら