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行政書士試験過去問判例 国家賠償法1条

【平成30年行政書士試験出題】

【問題】国家賠償法1条に関する次のア〜オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア 建築主事は、建築主の申請に係る建築物の計画について建築確認をするに当たり、建築主である個人の財産権を保護すべき職務上の法的義務を負うものではないから、仮に当該建築主の委託した建築士が行った構造計算書の偽装を見逃したとしても、そもそもその点について職務上の法的義務違反も認められないことから、当該建築確認は国家賠償法1条1項の適用上違法にはならない。

イ 警察官が交通法規等に違反して車両で逃走する者をパトカーで追跡する職務の執行中に、逃走車両の走行により第三者が損害を被った場合において、当該追跡行為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるか否かについては、当該追跡の必要性、相当性に加え、当該第三者が被った損害の内容および性質ならびにその態様および程度などの諸要素を総合的に勘案して決せられるべきである。

ウ 法令に基づく水俣病患者認定申請をした者が、相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされないという利益は、内心の静穏な感情を害されない利益として、不法行為法上の保護の対象になるが、当該認定申請に対する不作為の違法を確認する判決が確定していたとしても、そのことから当然に、国家賠償法1条1項に係る不法行為の成立が認められるわけではない。

エ 所得金額を過大に認定して行われた所得税の更正は、直ちに国家賠償法1条1項の適用上違法の評価を受けることとなるが、税務署長が資料を収集し、これに基づき課税要件事実を認定、判断する上において、職務上通常尽くすべき注意義務を尽くすことなく漫然と更正をしたと認め得るような事情がある場合に限り、過失があるとの評価を受けることとなる。

オ 公立学校における教師の教育活動も国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」に該当するから、学校事故において、例えば体育の授業において危険を伴う技術を指導する場合については、担当教師の指導において、事故の発生を防止するために 十分な措置を講じるべき注意義務が尽くされたかどうかが問題となる。


1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 ウ・オ


【昭和61年2月27日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償】

【判事事項】

警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において右追跡行為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるというための要件


【裁判要旨】

警察官のパトカーによる追跡を受けて車両で逃走する者が惹起した事故により第三者が損害を被つた場合において、右追跡行為が国家賠償法1条1項の適用上違法であるというためには、追跡が現行犯逮捕、職務質問等の職務の目的を遂行するうえで不必要であるか、又は逃走車両の走行の態様及び道路交通状況等から予測される被害発生の具体的危険性の有無・内容に照らして追跡の開始、継続若しくは方法が不相当であることを要する。


【平成3年4月26日,最高裁判所第2小法廷,水俣病認定業務に関する熊本県 知事の不作為違法に対する損害賠償】

【判事事項】

一 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法3条1項又は公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号による改正前のもの)4条2項に基づき水俣病患者認定申請をした者が相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされない利益と法的保護の対象

二 右認定申請を受けた処分庁が不当に長期間にわたらないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務に違反したといえるための要件


【裁判要旨】

一 公害に係る健康被害の救済に関する特別措置法3条1項又は公害健康被害補償法(昭和62年法律第97号による改正前のもの)4条2項に基づき水俣病患者認定申請をした者が相当期間内に応答処分されることにより焦燥、不安の気持ちを抱かされないという利益は、内心の静穏な感情を害されない利益として、不法行為法上の保護の対象になる。

二 右認定申請を受けた処分庁には、不当に長期間にわたちないうちに応答処分をすべき条理上の作為義務があり、右の作為義務に違反したというためには、客観的に処分庁がその処分のために手続上必要と考えられる期間内に処分ができなかったことだけでは足りず、その期間に比して更に長期間にわたり遅延が続き、かつ、その間、処分庁として通常期待される努力によって遅延を解消できたのに、これを回避するための努力を尽くさなかったことが必要である。


【平成5年3月11日, 最高裁判所第1小法廷,損害賠償】

【判事事項】

収入金額を確定申告の額より増額しながら必要経費の額を確定申告の額のままとしたため所得金額を過大に認定した所得税の更正が国家賠償法上違法でないとされた事例


【裁判要旨】

税務署長が収入金額を確定申告の額より増額しながら必要経費の額を確定申告の額のままとして所得税の更正をしたため、所得金額を過大に認定する結果となったとしても、確定申告の必要経費の額を上回る金額を具体的に把握し得る客観的資料等がなく、また、納税義務者において税務署長の行う調査に協力せず、資料等によって確定申告の必要経費が過少であることを明らかにしないために、右の結果が生じたなど判示の事実関係の下においては、右更正につき国家賠償法1条1項にいう違法があったということはできない。


【昭和62年2月6日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償】

【判事事項】

一 公立学校における教師の教育活動と国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」

二 損害賠償請求権者が一時金による支払を訴求している場合と定期金による支払を命ずる判決の許否


【裁判要旨】

一 国家賠償法1条1項にいう「公権力の行使」には、公立学校における教師の教育活動も含まれる。

二 損害賠償請求権者が訴訟上一時金による支払を求めている場合には、定期金による支払を命ずる判決をすることはできない。


【試験ポイント】✨
ア✖ 【平成25年3月26日,最高裁判所第3小法廷,損害賠償請求事件】,
詳しくは,こちら
イ✖ 【昭和61年2月27日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償】
ウ〇 【平成3年4月26日,最高裁判所第2小法廷,水俣病認定業務に関する熊本県知事の不作為違法に対する損害賠償】
エ✖ 【平成5年3月11日, 最高裁判所第1小法廷,損害賠償】
詳しくは,こちら
オ〇【昭和62年2月6日,最高裁判所第2小法廷,損害賠償】