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行政書士試験過去問一般知識解説 包括的核実験禁止条約(CTBT)中距離核戦力(INF)核拡散防止条約(NPT)

【平成26年行政書士試験一般知識】

【問題】核軍縮・核兵器問題への国際社会の対応に関する次のア〜オの記述のうち、妥当でないものの組合せはどれか。


ア 包括的核実験禁止条約(CTBT)は、国連総会で採択され、その後、米中やインド・パキスタンを含む多くの国連加盟国が署名・批准を済ませ発効した。

イ 東南アジア・中南米・アフリカなどの地域では、非核兵器地帯を創設する多国間条約が締結されている。

ウ 冷戦中、米ソ両国は中距離核戦力(INF)の全廃に向けて何度も交渉を行ったが難航し、条約の締結までには至らなかった。

エ 核兵器非保有国への核兵器移譲や核兵器非保有国の核兵器製造を禁止する核拡散防止条約(NPT)では、米露英仏中の5カ国が核兵器保有国と規定されている。

オ 核拡散防止条約(NPT)では、核兵器非保有国の原子力(核)の平和利用は認められているが、軍事転用を防止するために国際原子力機関(IAEA)の査察を受ける義務を負う。


1 ア・イ

2 ア・ウ

3 イ・エ

4 ウ・オ

5 エ・オ


【試験ポイント】✨

INF=中距離核戦略全廃条約は,今後も出題が予想されます!特に1987年アメリカ大(レーガン大統領)とソ連連邦(ゴルバチョフ)の間に結ばれた軍縮条約は来年の各試験でも上位ですね。


ア✖ 包括的核実験禁止条約(CTBT)は1996年に採択。条約の発効に批准が必要な核技術保有44カ国のうち、8カ国がまだ批准していない。アメリカ,中国,朝鮮民主主義人民共和国,エジプト,インド,イラン,イスラエル,パキスタンである。インド,北朝鮮,パキスタンは署名もしていない。

署名済・未批准国(5か国):米国,中国,エジプト,イラン,イスラエル

未署名・未批准国(3か国):北朝鮮,インド,パキスタン(令和3年2月現在)

「包括的核実験禁止条約機関準備委員会」(CTBTO)ウイーンに本部。

イ〇 原文のまま 非核兵器地帯を創設する多国間条約

【東南アジア】バンコク条約(東南アジア非核兵器地帯条約、署名1995年,発効1997年)

【中南米】トラテロルコ条約(ラテンアメリカ及びカリブ核兵器禁止条約,署名1967年,発効1968年)

【アフリカ】ペリンダバ条約(アフリカ非核兵器地帯条約,署名1996年,発効2009年)

ウ✖ 条約の締結に至っていたが,アメリカは2019年2月INF条約の破棄をロシアに通告し,8月2日に失効。

エ〇 原文のまま 第9条3「この条約の適用上,「核兵器国」とは,1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう。」

オ〇 原文のまま 原子力の平和的利用が軍事目的に転用されることを防止するため,非核兵器国が国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受諾する義務を規定(第3条)。


【包括的核実験禁止条約(CTBT)】↓

【概要】

(1)宇宙空間,大気圏内,水中,地下を含むあらゆる空間における核兵器の実験的爆発及び他の核爆発を禁止する。

(2)この条約の趣旨及び目的を達成し,この条約の規定の実施を確保する等のため,包括的核実験禁止条約機関(CTBTO)を設立する。

(3)条約の遵守について検証するために,国際監視制度,現地査察,信頼醸成措置等から成る検証制度を設ける。


【意義】

(1)核兵器の開発あるいは改良を行うためには,核実験の実施が必要であると考えられており,CTBTは,従来の部分的核実験禁止条約(PTBT)が禁止の対象としていなかった地下核実験を含む,すべての核実験を禁止するという点において,核軍縮・不拡散上で極めて重要な意義を有する。

(2)わが国はCTBTを,国際原子力機関(IAEA)の保障措置と並び,核兵器不拡散条約(NPT)を中核とする核不拡散・核軍縮体制の不可欠の柱として捉え,その発効促進を核軍縮・核不拡散分野の最優先課題の一つとして重視している。


【現状(令和3年2月現在)】

CTBTが発効するためには,特定の44か国(発効要件国)すべての批准が必要とされている(第14条)。しかし,現在のところ,米,印,パキスタン等,一部の発効要件国の批准の見通しはたっておらず,条約は未発効。

(1)署名国185か国、批准170か国

(2)発効要件国44か国のうち,署名国41か国,批准国36か国

発効要件国のうち,

署名済・未批准国(5か国):米国,中国,エジプト,イラン,イスラエル

未署名・未批准国(3か国):北朝鮮,インド,パキスタン


【核兵器不拡散条約(NPT)】↓

【条約の成立及び締結国】

ア 核兵器の不拡散に関する条約(Treaty on the Non-Proliferation of Nuclear Weapons : NPT)は,1968年7月1日に署名開放され,1970年3月5日に発効(我が国は1970年2月署名,1976年6月批准)。

イ 締約国数は191か国・地域(2021年5月現在)。非締約国はインド、パキスタン、イスラエル、南スーダン。

【核不拡散】

米,露,英,仏,中の5か国を「核兵器国」と定め,「核兵器国」以外への核兵器の拡散を防止。

※ 第9条3「この条約の適用上,「核兵器国」とは,1967年1月1日以前に核兵器その他の核爆発装置を製造しかつ爆発させた国をいう。」

原子力の平和的利用が軍事目的に転用されることを防止するため,非核兵器国が国際原子力機関(IAEA)の保障措置を受諾する義務を規定(第3条)


【NPTの主要規定】↓

核兵器国の核不拡散義務(第1条)

非核兵器国の核不拡散義務(第2条)

非核兵器国によるIAEAの保障措置受諾義務(第3条)

締約国の原子力平和利用の権利(第4条)

非核兵器国による平和的核爆発の利益の享受(第5条)

締約国による核軍縮誠実交渉義務(第6条)

条約の運用を検討する5年毎の運用検討会議の開催(第8条3)

「核兵器国」の定義(第9条3)

条約の効力発生の25年後,条約が無期限に効力を有するか追加の一定期間延長されるかを決定するための会議の開催(第10条2)

(注)1995年5月,条約の無期限延長が決定。


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