行政書士試験民法過去問 相続【平成28年12月19日,最高裁判所大法廷】
【判事事項】
不法行為による慰藉料請求権は相続の対象となるか。
【裁判要旨】
不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。
【判事事項】共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は遺産分割の対象となるか。
【裁判要旨】
共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。
【試験ポイント】✨
1〇 民法897条第1項 祭祀(さいし)と読む。民法896条の例外として,一般の相続の対象とならない。祭祀主宰者の資格については,法律上の制限はない。
2✖ 【昭和42年11月1日,最高裁判所大法廷,慰藉料請求事件】不法行為による慰藉料請求権は、被害者が生前に請求の意思を表明しなくても、相続の対象となる。
3✖ 【平成28年12月19日,最高裁判所大法廷,遺産分割審判に対する抗告棄却決定に対する許可抗告事件】共同相続された普通預金債権,通常貯金債権及び定期貯金債権は,いずれも,相続開始と同時に当然に相続分に応じて分割されることはなく,遺産分割の対象となる。
4✖ 民法906条の2第1項
5✖ 民法907条第1項
第896条(相続の一般的効力)
相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する。ただし、被相続人の一身に専属したものは、この限りでない。
第897条(祭祀に関する権利の承継)
系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。
第906条の2(遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合の遺産の範囲)
遺産の分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分された財産が遺産の分割時に遺産として存在するものとみなすことができる。
2 前項の規定にかかわらず、共同相続人の一人又は数人により同項の財産が処分されたときは、当該共同相続人については、同項の同意を得ることを要しない。
第907条(遺産の分割の協議又は審判等)
共同相続人は、次条の規定により被相続人が遺言で禁じた場合を除き、いつでも、その協議で、遺産の全部又は一部の分割をすることができる。
2 遺産の分割について、共同相続人間に協議が調わないとき、又は協議をすることができないときは、各共同相続人は、その全部又は一部の分割を家庭裁判所に請求することができる。ただし、遺産の一部を分割することにより他の共同相続人の利益を害するおそれがある場合におけるその一部の分割については、この限りでない。
3 前項本文の場合において特別の事由があるときは、家庭裁判所は、期間を定めて、遺産の全部又は一部について、その分割を禁ずることができる。
第908条(遺産の分割の方法の指定及び遺産の分割の禁止)
被相続人は、遺言で、遺産の分割の方法を定め、若しくはこれを定めることを第三者に委託し、又は相続開始の時から5年を超えない期間を定めて、遺産の分割を禁ずることができる。