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行政書士試験判例 平成27年3月3日,最高裁判所第3小法廷,営業停止処分取消請求事件

【令和元年行政書士試験出題】

【問題】次の文章の空欄 ア ~エに当てはまる語句を、枠内の選択肢(1~20)から選びなさい。


行政手続法は、行政運営におけるの確保と透明性の向上を図り、もって国民の権利利益の保護に資することをその目的とし(1条1項)、行政庁は、処分をするかどうか又はどのような処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準である(2条8号ハ)を定め、かつ、これを公にしておくよう努めなければならないものと規定している(12条1項)。上記のような行政手続法の規定の文言や趣旨等に照らすと、同法12条1項に基づいて定められ公にされているは、単に行政庁の行政運営上の便宜のためにとどまらず、処分に係る判断過程のと透明性を確保し、その相手方の権利利益の保護に資するために定められ公にされるものというべきである。したがって、行政庁が同項の規定により定めて公にしているにおいて、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨のな取扱いの定めがある場合に、当該行政庁が後行の処分につき当該の定めと異なる取扱いをするならば、の行使におけるかつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から、当該の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り、そのような取扱いはの範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され、この意味において、当該行政庁の後行の処分におけるは当該に従って行使されるべきことがき束されており、先行の処分を受けた者が後行の処分の対象となるときは、上記特段の事情がない限り当該の定めにより所定の量定の加重がされることになるものということができる。以上に鑑みると、行政手続法12条1項の規定により定められ公にされているにおいて、先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨のな取扱いの定めがある場合には、上記先行の処分に当たる処分を受けた者は、将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは、上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても、当該の定めにより上記のな取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。(最三小判平成27年3月3日民集69巻2号143頁)

1処分基準 2合理的 3衡平 4適正 5迅速性 6公正 7利益 8侵害 9授益 10不平等 11審査基準 12不利益 13解釈基準 14行政規則 15法規命令 16解釈権 17判断権 18処分権 19裁量権 20決定権


【平成27年3月3日,最高裁判所第3小法廷,営業停止処分取消請求事件】

【判事事項】

行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準に先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の定めがある場合における先行の処分の取消しを求める訴えの利益


【裁判要旨】

行政手続法12条1項により定められ公にされている処分基準において,先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には,上記先行の処分を受けた者は,将来において上記後行の処分の対象となり得るときは,上記先行の処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても,当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する。

『(1)上告人は,北海道函館方面公安委員会から複数の営業所につき風俗営業の許可を受けて,法2条1項7号のぱちんこ屋の営業に該当する風俗営業を営む株式会社である。
(2)北海道函館方面公安委員会は,上告人に対し,平成24年10月24日付けで,法26条1項に基づき,上記(1)の営業所の一つにつき,期間を同年11月2日から同年12月11日までの40日間と定めて,上記風俗営業の停止を命ずる処分(以下「本件処分」という。)を行った。
(3)法26条1項は,風俗営業者等が当該営業に関し法令等の規定に違反した場合において著しく善良の風俗又は清浄な風俗環境を害するおそれ等があると認めるときにおいて,公安委員会は,当該風俗営業者に対し,当該風俗営業の許可を取り消し,又は6月を超えない範囲内で期間を定めて当該風俗営業の全部若しくは一部の停止を命ずることができる旨を定めている。法26条1項に基づく営業停止命令等につき,北海道函館方面公安委員会は,行政手続法12条1項に基づく処分の量定等に関する処分基準として,風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律に基づく営業停止命令等の量定等の基準に関 する規程(平成18年北海道函館方面公安委員会規程第5号。以下「本件規程」と いう。)を定め,これを公にしている。 本件規程は,4条及び別表において,風俗営業者に対し営業停止命令を行う場合の停止期間について,各処分事由ごとにその量定における上限及び下限並びに標準となる期間を定めた上で,過去3年以内に営業停止命令を受けた風俗営業者に対し更に営業停止命令を行う場合の上記量定の加重について,10条2項において,上記の上限及び下限にそれぞれ過去3年以内に営業停止命令を受けた回数の2倍の数を乗じた期間をその上限及び下限とし,11条1項2号において,上記の標準の2倍の期間をその標準とする旨を定めている。
3 原審は,上記事実関係等の下において,要旨次のとおり判断し,本件訴えを却下すべきものとした。法26条1項は公安委員会がいかなる内容の営業停止を命ずるかをその裁量に委ねており,法令において過去に営業停止処分を受けたことを理由に処分の加重などの不利益な取扱いができることを定めた規定は存しないところ,本件規程は法令の性質を有するものではなく,将来の処分の際に過去に本件処分を受けたことが本件規程により裁量権の行使における考慮要素とされるとしても,そのような取扱いは本件処分の法的効果によるものとはいえない。そうすると,上告人は,処分の効果が期間の経過によりなくなった後においてもなお処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有する者(行政事件訴訟法9条1項)には当たらないから,本件訴えは不適法である。4 しかしながら,原審の上記判断は是認することができない。その理由は,次のとおりである。行政手続法は,行政運営における公正の確保と透明性の向上を図り,もって国民の権利利益の保護に資することをその目的とし(1条1項),行政庁は,不利益処分をするかどうか又はどのような不利益処分とするかについてその法令の定めに従って判断するために必要とされる基準である処分基準(2条8号ハ)を定め,かつ,これを公にしておくよう努めなければならないものと規定している(12条1項)。上記のような行政手続法の規定の文言や趣旨等に照らすと,同法12条1項に基づいて定められ公にされている処分基準は,単に行政庁の行政運営上の便宜のためにとどまらず,不利益処分に係る判断過程の公正と透明性を確保し,その相手方の権利利益の保護に資するために定められ公にされるものというべきである。したがって,行政庁が同項の規定により定めて公にしている処分基準において,先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合に,当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば,裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から,当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り,そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解され,この意味において, 当該行政庁の後行の処分における裁量権は当該処分基準に従って行使されるべきことがき束されており,先行の処分を受けた者が後行の処分の対象となるときは,上記特段の事情がない限り当該処分基準の定めにより所定の量定の加重がされることになるものということができる。以上に鑑みると,行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準において,先行の処分を受けたことを理由として後行の処分に係る量定を加重する旨の不利益な取扱いの定めがある場合には,上記先行の処分に当たる処分を受けた者は,将来において上記後行の処分に当たる処分の対象となり得るときは,上記先行の処分に当たる処分の効果が期間の経過によりなくなった後においても,当該処分基準の定めにより上記の不利益な取扱いを受けるべき期間内はなお当該処 分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものと解するのが相当である。
そうすると,本件において,上告人は,行政手続法12条1項の規定により定められ公にされている処分基準である本件規程の定めにより将来の営業停止命令における停止期間の量定が加重されるべき本件処分後3年の期間内は,なお本件処分の取消しによって回復すべき法律上の利益を有するものというべきである。
5 以上と異なる見解の下に,本件訴えを却下すべきものとした原審の判断には,判決に影響を及ぼすことが明らかな法令の違反がある。論旨は上記の趣旨をいうものとして理由があり,原判決は破棄を免れない。そして,第1審判決を取り消し,本件処分の違法事由の有無につき審理させるため,本件を第1審に差し戻すべきである。よって,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。(裁判長裁判官 岡部喜代子 裁判官 大谷剛彦 裁判官 大橋正春 裁判官 木内道祥 裁判官 山崎敏充)』


当該行政庁が後行の処分につき当該処分基準の定めと異なる取扱いをするならば,裁量権の行使における公正かつ平等な取扱いの要請や基準の内容に係る相手方の信頼の保護等の観点から,当該処分基準の定めと異なる取扱いをすることを相当と認めるべき特段の事情がない限り,そのような取扱いは裁量権の範囲の逸脱又はその濫用に当たることとなるものと解される。


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