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国家賠償法2条にいう公の営造物 行政書士試験過去問

【平成21年行政書士試験出題】

【問題】国家賠償法2条にいう公の営造物に関する次の記述のうち、妥当なものはどれか。

1 公の営造物とは、 国や公共団体が所有するすべての物的施設をいうわけではなく、公の用に供しているものに限られる。

2 公の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、公の営造物が通常有すべき安全性を欠いていることをいうが、賠償責任が成立するのは、当該安全性の欠如について過失があった場合に限られる。

3 河川 ・海浜等の自然公物は公の営造物に当たらないが、これに付随する堤防や防波堤は人工公物であり公の営造物に当たるので、賠償責任が成立するのは、堤防等に起因する損害の場合に限られる。

4 公の営造物の管理者と費用負担者とが異なる場合、 被害者に対して損害賠償責任 を負うのは、費用負担者に限られる。

5 公の営造物の設置または管理に起因する損害について賠償を請求することができるのは、その利用者に限られる。


【昭和45年8月20日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償請求】

【判事事項】

一、国道への落石の事故につき道路の管理にかしがあると認められた事例

二、国家賠償法2条1項に基づく損害賠償責任と過失の要否


【裁判要旨】

一、国道に面する山地の上方部分が崩壊し、土砂とともに落下した直径約1メートルの岩石が、たまたま該道路を通行していた貨物自動車の運転助手席の上部にあたり、その衝撃により、助手席に乗つていた者が即死した場合において、従来右道路の付近ではしばしば落石や崩土が起き、通行上危険があつたにもかかわらず、道路管理者において、「落石注意」の標識を立てるなどして通行車に対し注意を促したにすぎず、道路に防護柵または防護覆を設置し、危険な山側に金網を張り、あるいは、常時山地斜面部分を調査して、落下しそうな岩石を除去し、崩土のおそれに対しては事前に通行止めをするなどの措置をとらなかつたときは、通行の安全性の確保において欠け、その管理にかしがあつたものというべきである。

二、国家賠償法2条1項による営造物の設置または管理のかしに基づく国および公共団体の損害賠償責任については、過失の存在を必要としない。


【昭和56年12月16日,最高裁判所大法廷,大阪国際空港夜間飛行禁止等】

【判事事項】

一 民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えの適否

二 営造物の利用の態様及び程度が一定の限度を超えるために利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある場合と国家賠償法2条1項にいう営造物の設置又は管理の瑕疵

三 国営空港に離着陸する航空機の騒音が一定の程度に達しており空港周辺地域の住民の一部により右騒音を原因とする空港供用の差止請求等の訴訟が提起されているなどの状況のもとに右地域に転入した者が右騒音により被害を受けたとして国に対し慰藉料を請求した場合につき右請求を排斥すべき事由がないとした認定判断に経験則違背等の違法があるとされた事例

四 将来にわたつて継続する不法行為に基づく損害賠償請求権が将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有するとされるための要件


【裁判要旨】

一 民事上の請求として一定の時間帯につき航空機の離着陸のためにする国営空港の供用の差止めを求める訴えは、不適法である。

二 営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて利用者又は第三者に対して危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物につき国家賠償法二条一項にいう設置又は管理の瑕疵があるものというべきである。

三 当該空港に離着陸する航空機の騒音がその頻度及び大きさにおいて一定の程度に達しており、また、空港周辺住民の一部により右騒音を原因とする空港供用差止請求等の訴訟が提起され、主要日刊新聞紙上に当該空港周辺における騒音問題が頻々として報道されていたなど、判示のような状況のもとに空港周辺地域に転入した者が空港の設置・管理者たる国に対し右騒音による被害について慰藉料の支払を求めたのに対し、特段の事情の存在を確定することなく、転入当時右の者は航空機騒音が問題になつている事情ないしは航空機騒音の存在の事実をよく知らなかつたものとし、右請求を排斥すべき理由はないとした原審の認定判断には、経験則違背等の違法がある。

四 現在不法行為が行われており、同一態様の行為が将来も継続することが予想されても、損害賠償請求権の成否及びその額をあらかじめ一義的に明確に認定することができず、具体的に請求権が成立したとされる時点においてはじめてこれを認定することができ、かつ、右権利の成立要件の具備については債権者がこれを立証すべきものと考えられる場合には、かかる将来の損害賠償請求権は、将来の給付の訴えを提起することのできる請求権としての適格性を有しない。

『国家賠償法2条1項の営造物の設置又は管理の瑕疵とは、営造物が有すべき安全性を欠いている状態をいうのであるが、そこにいう安全性の欠如、すなわち、他人に危害を及ぼす危険性のある状態とは、ひとり当該営造物を構成する物的施設自体に存する物理的、外形的な欠陥ないし不備によつて一般的に右のような危害を生ぜしめる危険性かある場合のみならず、その営造物が供用目的に沿つて利用されることとの関連において危害を生ぜしめる危険性がある場合をも含み、また、その危害は、営造物の利用者に対してのみならず、利用者以外の第三者に対するそれをも含むものと解すべきである。すなわち、当該営造物の利用の態様及び程度が一定の限度にとどまる限りにおいてはその施設に危害を生ぜしめる危険性がなくても、これを超える利用によつて危害を生ぜしめる危険性がある状況にある場合には、そのような利用に供される限りにおいて右営造物の設置、管理には瑕疵があるというを妨げず、したがつて、右営造物の設置・管理者において、かかる危険性があるにもかかわらず、これにつき特段の措置を講ずることなく、また、適切な制限を加えないままこれを利用に供し、その結果利用者又は第三者に対して現実に危害を生ぜしめたときは、それが右設置・管理者の予測しえない事由によるものでない限り、国家賠償法2条1項の規定による責任を免れることができないと解されるのである。』


【国家賠償法】

第2条 道路、河川その他の公の営造物の設置又は管理に瑕疵があつたために他人に損害を生じたときは、国又は公共団体は、これを賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、他に損害の原因について責に任ずべき者があるときは、国又は公共団体は、これに対して求償権を有する。

第3条 前2条の規定によつて国又は公共団体が損害を賠償する責に任ずる場合において、公務員の選任若しくは監督又は公の営造物の設置若しくは管理に当る者と公務員の俸給、給与その他の費用又は公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。
② 前項の場合において、損害を賠償した者は、内部関係でその損害を賠償する責任ある者に対して求償権を有する。


【試験ポイント】✨

よく試験に出る判例が,最判昭45・8・20の無過失責任。

1〇 原文のまま 「公の営造物」とは,民法717条の「土地の工作物」よりも広い。

2✖ 過失の存在を必要としない。【昭和45年8月20日,最高裁判所第1小法廷,損害賠償請求】

3✖ 国家賠償法2条1項『道路、河川その他の公の営造物』

4✖ 国家賠償法3条1項『公の営造物の設置若しくは管理の費用を負担する者とが異なるときは、費用を負担する者もまた、その損害を賠償する責に任ずる。』

5✖『利用者以外の第三者に対するそれをも含む』【昭和56年12月16日,最高裁判所大法廷,大阪国際空港夜間飛行禁止等】