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公務員試験・行政書士試験重要判例解説 民法第21条(制限行為能力者の詐術)

【令和2年出題】
【問題】制限行為能力者が、相手方に制限行為能力者であることを黙秘して法律行為を行った場合であっても、それが他の言動と相まって相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、詐術にあたる。

【昭和44年2月13日,最高裁判所第1小法廷,土地所有権移転登記抹消登記手続請求】

【判事事項】

無能力者であることを黙秘することと民法20条にいう「詐術」。


【裁判要旨】

無能力者であることを黙秘することは、無能力者の他の言動などと相まつて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときには、民法20条にいう「詐術」にあたるが、黙秘することのみでは右詐術にあたらない。

思うに、民法20条にいう「詐術ヲ用ヰタルトキ」とは、無能力者が能力者であることを誤信させるために、相手方に対し積極的術策を用いた場合にかぎるものではなく、無能力者が、ふつうに人を欺くに足りる言動を用いて相手方の誤信を誘起し、または誤信を強めた場合をも包含すると解すべきである。したがつて、無能力者であることを黙秘していた場合でも、それが、無能力者の他の言動などと相俟つて、相手方を誤信させ、または誤信を強めたものと認められるときは、なお詐術に当たるというべきであるが、単に無能力者であることを黙秘していたことの一事をもつて、右にいう詐術に当たるとするのは相当ではない
これを本件についてみるに、原判示によれば、Dは、所論のように、その所有にかかる農地に抵当権を設定して金員を借り受け、ついで、利息を支払わなかつたところから、本件土地の売買をするにいたつたのであり、同人は、その間終始自己が準禁治産者であることを黙秘していたというのであるが、原審の認定した右売買にいたるまでの経緯に照らせば、右黙秘の事実は、詐術に当たらないというべきである。それ故、Dが、本件売買契約に当たり、自己が能力者であることを信ぜしめるため詐術を用いたものと認めることはできないとした原審の認定判断は、相当として是認できる。
『そして、詐術に当たるとするためには、無能力者が能力者であることを信じさせる目的をもつてしたことを要すると解すべきであるが、所論Dが黙秘していたことから、 同人に自己が能力者であることを信じさせる目的があつたと認めなければならないものではない。』


判例は,こちら


【新民法(改正対応)】↓

第21条(制限行為能力者の詐術)
制限行為能力者が行為能力者であることを信じさせるため詐術を用いたときは、その行為を取り消すことができない。


【試験ポイント】✨

※ 制限能力者であることを黙していた場合,詐術にあたるかについては,過去の公務員試験に頻繁に出題されています。単に黙秘していた場合は詐術に該当しない。その他,関連判例【大判昭2・5・24】詐術の効果が当該仲介人を通して法律行為の相手方に及ばない場合には,民法20条の適用はない。
解答〇