業務・試験対策

MEASURES

公務員試験・行政書士試験民法改正【第576条(権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)】

【新民法(改正後)】

第576条(権利を取得することができない等のおそれがある場合の買主による代金の支払の拒絶)
売買の目的について権利を主張する者があることその他の事由により、買主がその買い受けた権利の全部若しくは一部を取得することができず、又は失うおそれがあるときは、買主は、その危険の程度に応じて、代金の全部又は一部の支払を拒むことができる。ただし、売主が相当の担保を供したときは、この限りでない。


【出典:民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(15)】

『(補足説明) 1 民法第576条の代金支払拒絶権については,同条の適用範囲に目的物上に用益物権があると主張する第三者が存在する場合が含まれるとされるほか,債権売買において債務者が債務の存在を否定した場合にも類推適用されると解されるなど,解釈により,買主の権利取得に危険が生じた場合に柔軟に代金支払拒絶権を肯定していると解される。このことを踏まえ,現行民法第576条の適用範囲を拡げ,「買主の権利取得と相容れない主張がなされ,買主が権利の取得を疑うべき相当の理由がある場合」といった要件に改めるとの立法提案がある(参考資料1 [検討委員会試案]・289頁)。この提案は,同条が規定する「売買の目的につ いて権利を主張する者があるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがある場合」を包含し,これを拡げた要件として,「買主が権利の取得を疑うべき相当の理由がある場合」という案を提示していると考えられる。これに対しては,第14回会議において,抽象的な要件を定めると濫用のおそれがあるから,要件を明確にし適用範囲を限定する方向の検討もすべきであるという意見があった。そこで,このような意見も踏まえ,本文では,現行民法第576条が定める「売買の目的について権利を主張するものがあるために買主がその買い受けた権利の全部又は一部を失うおそれがあるとき」という要件を維持し,これを例示と見た上で「その他買主が権利の取得を疑うべき相当な理由があるとき」との要件を付け加えるという案を提示し,その当否を問うている。この提案における「相当の理由」という要件は,権利取得を疑うことにつき客観的に合理的な根拠を要するとするもので,単なる主観的な危惧感によって代金支払拒絶を肯定する趣旨ではない。もとより,買主が相当の担保を提供した場合に支払拒絶権が消滅するとする同条ただし書の規定内容は,これを維持することを前提としている。2 なお,本文の提案は,あくまで売買の規定としての民法第576条の見直しに係るものであるが,後に検討する不安の抗弁権(中間的な論点整理第58[17 9頁(443頁)])において,双務契約の通則として,本論点で検討する内容をも包摂する規定を設けることとする場合には,売買のパートにおいて規定は不要とすることも考えられる。そこで,売買に規定を設けるか否かを決めるに当たっ ては,不安の抗弁権の在り方に関する検討結果を踏まえる必要がある。』


民法(債権関係)の改正に関する論点の検討(15)詳しくは,こちら