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行政書士試験過去問 会社法上の公開会社における資金調達

【平成25年行政書士試験出題】

【問題】会社法上の公開会社における資金調達に関する次の記述のうち、会社法の規定に照らし、正しいものはどれか。

1 特定の者を引受人として募集株式を発行する場合には、払込金額の多寡を問わず、募集事項の決定は、株主総会の決議によらなければならない。

2 株主に株式の割当てを受ける権利を与えて募集株式を発行する場合には、募集事項の通知は、公告をもってこれに代えることができる。

3 募集株式一株と引換えに払い込む金額については、募集事項の決定時に、確定した額を決定しなければならない。

4 会社が委員会設置会社である場合には、取締役会決議により、多額の借入れの決定権限を執行役に委任することができる。

5 募集社債の払込金額が募集社債を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、株主総会の決議によらなければならない。


【コーポレート・ガバナンス強化改正(平成27年5月1日施行)出典:法務省】

【社外取締役の機能の活用】

取締役会の業務執行者に対する監督機能を強化するために,社外取締役をより積極的に活用すべきであるとの指摘が強くされていたことを受け,次の3つの改正。

① 監査等委員会設置会社制度の創設

現行法における監査役会設置会社及び委員会設置会社(改正後の名称は,指名委員会等設置会社)に加えて,監査等委員会設置会社制度が創設。この制度は,3人以上の取締役から成り,かつ,その過半数を社外取締役とする監査等委員会が監査を担うとともに,業務執行者を含む取締役の人事に関して株主総会における意見陳述権を有するというものであって,社外取締役の機能を活用しやすい機関設計を創設するもの。

② 社外取締役等の要件の厳格化

株式会社又は子会社の業務執行者等に加え,親会社の業務執行者等及び兄弟会社の業務執行者等や,その株式会社の業務執行者等の近親者も,その株式会社の社外取締役等となることができないこととし,社外取締役等による業務執行者に対する監督等の実効性を確保。

③ 社外取締役を置くことが相当でない理由の説明

社外取締役を置いていない上場会社等の取締役は,定時株主総会において,社外取締役を置くことが相当でない理由を説明しなければならないこととし,社外取締役の導入を促進すること。

【会計監査人の独立性の強化】

会計監査人の選解任等に関する議案の内容の決定権を有する機関を,取締役又は取締役会から監査役又は監査役会に変更することとして,会計監査人の独立性を強化。

【親子会社に関する規律の整備】

(1) 多重代表訴訟制度の創設

完全親会社の株主を保護するため,一定の要件の下で,完全親会社の株主が,その完全子会社の取締役等の責任を追及する制度(多重代表訴訟制度)が創設。

(2) 組織再編の差止請求制度の拡充

合併等の組織再編における株主を保護するため,通常の組織再編についても,株主は,一定の要件の下,組織再編の差止めを請求することができる。

(3) 詐害的会社分割によって害される債権者の保護規定の新設

詐害的会社分割(分割会社が,承継会社に債務の履行の請求をすることができる債権者(承継債権者)と,当該請求をすることができない債権者(残存債権者)を恣意的に選別した上で,承継会社に優良事業や資産を承継させるなどする会社分割が行われた場合に,残存債権者の保護を直接的かつ簡明に図るために,分割会社が残存債権者を害することを知って会社分割をした場合には,残存債権者は,承継会社等に対して,承継した財産の価額を限度として,債務の履行を請求することができる。


【募集株式の発行等】

公開会社

原則:取締役会の決議。ただし,第三者に特に有利な金額で行われる募集株式発行等は,株主総会の特別決議が必要。


非公開会社

株主総会の特別決議が必要。


【試験ポイント】✨

1✖ 会社法199条2項・3項,201条1項

「払込金額の多寡を問わず」が間違い。

2✖ 会社法第202条(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)5項

3✖ 会社法第199条(募集事項の決定)1項2号『二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法』

4〇 第416条(指名委員会等設置会社の取締役会の権限)4項,「委員会設置会社」→「指名委員会等設置会社」(法改正)

5✖ 募集社債には,このような規定はない。因みに,取締役会設置会社の場合,「第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項」は取締役会の専決事項。


【会社法(改正対応)】↓

第199条(募集事項の決定)
株式会社は、その発行する株式又はその処分する自己株式を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集株式(当該募集に応じてこれらの株式の引受けの申込みをした者に対して割り当てる株式をいう。以下この節において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集株式の数(種類株式発行会社にあっては、募集株式の種類及び数。以下この節において同じ。)
二 募集株式の払込金額(募集株式一株と引換えに払い込む金銭又は給付する金銭以外の財産の額をいう。以下この節において同じ。)又はその算定方法
三 金銭以外の財産を出資の目的とするときは、その旨並びに当該財産の内容及び価額
四 募集株式と引換えにする金銭の払込み又は前号の財産の給付の期日又はその期間
五 株式を発行するときは、増加する資本金及び資本準備金に関する事項
2 前項各号に掲げる事項(以下この節において「募集事項」という。)の決定は、株主総会の決議によらなければならない。
3 第1項第2号の払込金額が募集株式を引き受ける者に特に有利な金額である場合には、取締役は、前項の株主総会において、当該払込金額でその者の募集をすることを必要とする理由を説明しなければならない。
4 種類株式発行会社において、第1項第1号の募集株式の種類が譲渡制限株式であるときは、当該種類の株式に関する募集事項の決定は、当該種類の株式を引き受ける者の募集について当該種類の株式の種類株主を構成員とする種類株主総会の決議を要しない旨の定款の定めがある場合を除き、当該種類株主総会の決議がなければ、その効力を生じない。ただし、当該種類株主総会において議決権を行使することができる種類株主が存しない場合は、この限りでない。
5 募集事項は、第1項の募集ごとに、均等に定めなければならない。

第201条(公開会社における募集事項の決定の特則)
第199条第3項に規定する場合を除き、公開会社における同条第2項の規定の適用については、同項中「株主総会」とあるのは、「取締役会」とする。この場合においては、前条の規定は、適用しない。
2 前項の規定により読み替えて適用する第199条第2項の取締役会の決議によって募集事項を定める場合において、市場価格のある株式を引き受ける者の募集をするときは、同条第1項第2号に掲げる事項に代えて、公正な価額による払込みを実現するために適当な払込金額の決定の方法を定めることができる。
3 公開会社は、第1項の規定により読み替えて適用する第199条第2項の取締役会の決議によって募集事項を定めたときは、同条第1項第4号の期日(同号の期間を定めた場合にあっては、その期間の初日)の2週間前までに、株主に対し、当該募集事項(前項の規定により払込金額の決定の方法を定めた場合にあっては、その方法を含む。以下この節において同じ。)を通知しなければならない。
4 前項の規定による通知は、公告をもってこれに代えることができる。
5 第3項の規定は、株式会社が募集事項について同項に規定する期日の2週間前までに金融商品取引法第4条第1項から第3項までの届出をしている場合その他の株主の保護に欠けるおそれがないものとして法務省令で定める場合には、適用しない。

第202条(株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合)
株式会社は、第199条第1項の募集において、株主に株式の割当てを受ける権利を与えることができる。この場合においては、募集事項のほか、次に掲げる事項を定めなければならない。
一 株主に対し、次条第二項の申込みをすることにより当該株式会社の募集株式(種類株式発行会社にあっては、当該株主の有する種類の株式と同一の種類のもの)の割当てを受ける権利を与える旨
二 前号の募集株式の引受けの申込みの期日
2 前項の場合には、同項第1号の株主(当該株式会社を除く。)は、その有する株式の数に応じて募集株式の割当てを受ける権利を有する。ただし、当該株主が割当てを受ける募集株式の数に一株に満たない端数があるときは、これを切り捨てるものとする。
3 第1項各号に掲げる事項を定める場合には、募集事項及び同項各号に掲げる事項は、次の各号に掲げる場合の区分に応じ、当該各号に定める方法によって定めなければならない。
一 当該募集事項及び第一項各号に掲げる事項を取締役の決定によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(株式会社が取締役会設置会社である場合を除く。) 取締役の決定
二 当該募集事項及び第1項各号に掲げる事項を取締役会の決議によって定めることができる旨の定款の定めがある場合(次号に掲げる場合を除く。) 取締役会の決議
三 株式会社が公開会社である場合 取締役会の決議
四 前3号に掲げる場合以外の場合 株主総会の決議
4 株式会社は、第1項各号に掲げる事項を定めた場合には、同項第2号の期日の2週間前までに、同項第1号の株主(当該株式会社を除く。)に対し、次に掲げる事項を通知しなければならない。
一 募集事項
二 当該株主が割当てを受ける募集株式の数
三 第1項第2号の期日
5 第199条第2項から第4項まで及び前二条の規定は、第1項から第3項までの規定により株主に株式の割当てを受ける権利を与える場合には、適用しない。

第362条(取締役会の権限等)
取締役会は、すべての取締役で組織する。
2 取締役会は、次に掲げる職務を行う。
一 取締役会設置会社の業務執行の決定
二 取締役の職務の執行の監督
三 代表取締役の選定及び解職
3 取締役会は、取締役の中から代表取締役を選定しなければならない。
4 取締役会は、次に掲げる事項その他の重要な業務執行の決定を取締役に委任することができない。
一 重要な財産の処分及び譲受け
二 多額の借財
三 支配人その他の重要な使用人の選任及び解任
四 支店その他の重要な組織の設置、変更及び廃止
五 第676条第1号に掲げる事項その他の社債を引き受ける者の募集に関する重要な事項として法務省令で定める事項
六 取締役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
七 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除
5 大会社である取締役会設置会社においては、取締役会は、前項第6号に掲げる事項を決定しなければならない。

第416条(指名委員会等設置会社の取締役会の権限)
指名委員会等設置会社の取締役会は、第362条の規定にかかわらず、次に掲げる職務を行う。
一 次に掲げる事項その他指名委員会等設置会社の業務執行の決定
イ 経営の基本方針
ロ 監査委員会の職務の執行のため必要なものとして法務省令で定める事項
ハ 執行役が二人以上ある場合における執行役の職務の分掌及び指揮命令の関係その他の執行役相互の関係に関する事項
ニ 次条第2項の規定による取締役会の招集の請求を受ける取締役
ホ 執行役の職務の執行が法令及び定款に適合することを確保するための体制その他株式会社の業務並びに当該株式会社及びその子会社から成る企業集団の業務の適正を確保するために必要なものとして法務省令で定める体制の整備
二 執行役等の職務の執行の監督
2 指名委員会等設置会社の取締役会は、前項第1号イからホまでに掲げる事項を決定しなければならない。
3 指名委員会等設置会社の取締役会は、第1項各号に掲げる職務の執行を取締役に委任することができない。
4 指名委員会等設置会社の取締役会は、その決議によって、指名委員会等設置会社の業務執行の決定を執行役に委任することができる。ただし、次に掲げる事項については、この限りでない。
一 第136条又は第137条第1項の決定及び第140条第4項の規定による指定
二 第165条第3項において読み替えて適用する第156条第1項各号に掲げる事項の決定
三 第262条又は第263条第1項の決定
四 第298条第1項各号に掲げる事項の決定
五 株主総会に提出する議案(取締役、会計参与及び会計監査人の選任及び解任並びに会計監査人を再任しないことに関するものを除く。)の内容の決定
六 第348条の二第2項の規定による委託
七 第365条第1項において読み替えて適用する第356条第1項(第419条第2項において読み替えて準用する場合を含む。)の承認
八 第366条第1項ただし書の規定による取締役会を招集する取締役の決定
九 第400条第2項の規定による委員の選定及び第401条第1項の規定による委員の解職
十 第402条第2項の規定による執行役の選任及び第403条第1項の規定による執行役の解任
十一 第408条第1項第1号の規定による指名委員会等設置会社を代表する者の決定
十二 第420条第1項前段の規定による代表執行役の選定及び同条第2項の規定による代表執行役の解職
十三 第426条第1項の規定による定款の定めに基づく第423条第1項の責任の免除
十四 補償契約の内容の決定
十五 役員等賠償責任保険契約の内容の決定
十六 第436条第3項、第441条第3項及び第444条第5項の承認
十七 第454条第5項において読み替えて適用する同条第1項の規定により定めなければならないとされる事項の決定
十八 第467条第1項各号に掲げる行為に係る契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
十九 合併契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十 吸収分割契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十一 新設分割計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十二 株式交換契約(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定
二十三 株式移転計画の内容の決定
二十四 株式交付計画(当該指名委員会等設置会社の株主総会の決議による承認を要しないものを除く。)の内容の決定

第676条(募集社債に関する事項の決定)
会社は、その発行する社債を引き受ける者の募集をしようとするときは、その都度、募集社債(当該募集に応じて当該社債の引受けの申込みをした者に対して割り当てる社債をいう。以下この編において同じ。)について次に掲げる事項を定めなければならない。
一 募集社債の総額
二 各募集社債の金額
三 募集社債の利率
四 募集社債の償還の方法及び期限
五 利息支払の方法及び期限
六 社債券を発行するときは、その旨
七 社債権者が第698条の規定による請求の全部又は一部をすることができないこととするときは、その旨
七の二 社債管理者を定めないこととするときは、その旨
八 社債管理者が社債権者集会の決議によらずに第706条第1項第2号に掲げる行為をすることができることとするときは、その旨
八の二 社債管理補助者を定めることとするときは、その旨
九 各募集社債の払込金額(各募集社債と引換えに払い込む金銭の額をいう。以下この章において同じ。)若しくはその最低金額又はこれらの算定方法
十 募集社債と引換えにする金銭の払込みの期日
十一 一定の日までに募集社債の総額について割当てを受ける者を定めていない場合において、募集社債の全部を発行しないこととするときは、その旨及びその一定の日
十二 前各号に掲げるもののほか、法務省令で定める事項