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令和5年行政書士試験過去問解説 行政行為の瑕疵

【令和5年行政書士試験出題】

【問題】行政行為の瑕疵に関する次のア~オの記述のうち、最高裁判所の判例に照らし、妥当なものの組合せはどれか。

ア ある行政行為が違法である場合、仮にそれが別の行政行為として法の要件を満たしていたとしても、これを後者の行為として扱うことは、新たな行政行為を行うに等しいから当然に許されない。

イ 普通地方公共団体の長に対する解職請求を可とする投票結果が無効とされたとしても、前任の長の解職が有効であることを前提として、当該解職が無効とされるまでの間になされた後任の長の行政処分は、当然に無効となるものではない。

ウ 複数の行政行為が段階的な決定として行われる場合、先行行為が違法であるとして、後行行為の取消訴訟において先行行為の当該違法を理由に取消しの請求を認めることは、先行行為に対する取消訴訟の出訴期間の趣旨を没却することになるので許されることはない。

エ 行政行為の瑕疵を理由とする取消しのうち、取消訴訟や行政上の不服申立てによる争訟取消しの場合は、当該行政行為は行為時当初に遡って効力を失うが、職権取消しの場合は、遡って効力を失うことはない。

オ 更正処分における理由の提示(理由附記)に不備の違法があり、審査請求を行った後、これに対する裁決において処分の具体的根拠が明らかにされたとしても、理由の提示にかかる当該不備の瑕疵は治癒されない。


1 ア・イ

2 ア・エ

3 イ・オ

4 ウ・エ

5 ウ・オ


【昭和29年7月19日,最高裁判所大法廷,土地買収不当処分取消請求】

【判事事項】

一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員会の委員が、県農地委員会の委員として右計画に関する訴願裁決に関与することの適否

二 行政事件訴訟特例法第11条によつて請求を棄却するについて理由を示さない違法がある一事例

三 自作農創設特別措置法施行令(昭和23年2月政令第36号による改正前)第43条によつて定められた農地買収計画を訴願裁決で同令第45条によるものとして維持することの可否


【裁判要旨】

一 農地買収計画に対する異議決定に関与した村農地委員が、県農地委員会の委員して、右計画に対する訴願裁決に関与することは違法ではない。

二 行政事件訴訟特例法第11条によつて農地買収計画に関する訴願裁決の取消を求める請求を棄却するについて、単に一般的に農地買収は公共の福祉のためになされる旨を判示し、具体的に当該事件について裁決を取消しまたは変更することが公共の福祉に適合しない理由について首肯するに足りる理由を示さないのは違法である。

三 自作農創設特別措置法施行令(昭和23年2月政令第36号による改正前)第43条によつて定めた農地買収計画を、右計画に関する訴願裁決で同令第45条により買収を相当とし維持することは違法ではない。


【昭和35年12月7日,最高裁判所大法廷,村長解職投票無効確認請求】

【判事事項】

村が吸収合併によつてなくなつた後における村長解職賛否投票の効力に関する訴の利益。


【裁判要旨】

村長解職賛否投票の効力に関する訴は、右村が吸収合併によつてなくなつた後においては、その利益がなくなつたものと解すべきである。


【平成21年12月17日,最高裁判所第一小法廷,建築確認処分取消等請求,追加的併合申立て事件】

【判事事項】

東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条3項に基づく安全認定が行われた上で建築確認がされている場合に,建築確認の取消訴訟において安全認定の違法を主張することの可否


【裁判要旨】

東京都建築安全条例(昭和25年東京都条例第89号)4条1項所定の接道要件を満たしていない建築物について,同条3項に基づく安全認定(建築物の周囲の空地の状況その他土地及び周囲の状況により知事が安全上支障がないと認める処分。これがあれば同条1項は適用しないとされている。)が行われた上で建築確認がされている場合,安全認定が取り消されていなくても,建築確認の取消訴訟において,安全認定が違法であるために同条1項違反があると主張することは許される。


【昭和43年11月7日,最高裁判所第一小法廷,所有権確認等請求】

【判事事項】

農地の売渡処分完了後において農業委員会のした当該農地の買収計画お−よび売渡計画の取消処分が有効とされた事例


【裁判要旨】

農地の買収処分に続いて売渡処分が完了した後においても、右買収処分が在村地主甲の自作地を不在地主乙の小作地と誤認してされたものであり、売渡の相手方が、当該農地について所有権移転登記を経由したが、その引渡を受けていない等判示の事実関係のもとにおいては、他に特段の事情がないかぎり、農業委員会は、前記の実体法上の違法を理由として、当該農地の買収計画および売渡計画を取り消すことができる。


【昭和47年12月5日,最高裁判所第三小法廷,法人税課税処分取消請求】

【判事事項】

一、法人税青色申告についてした更正処分が理由附記の不備のため違法とされた事例

二、青色申告についてした更正処分の理由附記の不備と審査裁決による缺疵の治癒


【裁判要旨】

一、法人税青色申告についてした更正処分の通知書に、係争事業年度所得の更正の理由として、「営業譲渡補償金計上もれ1155万円」、「認定利息(代表者)計上もれ1万9839円」、清算所得の更正の理由として、「代表者仮払金39万6890円」、「営業譲渡補償金905万円」と記載されているにすぎない場合には、いずれも理由附記として不備であつて、その更正処分は違法である。

二、青色申告についてした更正処分における理由附記の不備の缺疵は、同処分に対する審査裁決において処分理由が明らかにされた場合であつても、治癒されないと解すべきである。


【試験ポイント】

ア✖【昭和29年7月19日,最高裁判所大法廷,土地買収不当処分取消請求】

イ〇【昭和35年12月7日,最高裁判所大法廷,村長解職投票無効確認請求】

ウ✖ いわゆる違法性の承継という。【平成21年12月17日,最高裁判所第一小法廷,建築確認処分取消等請求,追加的併合申立て事件】

エ✖ 職権による取消・撤回が可能。【昭和43年11月7日,最高裁判所第一小法廷,所有権確認等請求】

オ〇【昭和47年12月5日,最高裁判所第三小法廷,法人税課税処分取消請求】

解答3