不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例
【最判昭61・11・20】遺言無効確認等,詳しくはこちら
不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例
【判示事項】
不倫な関係にある女性に対する包括遺贈が公序良俗に反しないとされた事例
【裁判要旨】
妻子のある男性がいわば半同棲の関係にある女性に対し遺産の3分の1を包括遺贈した場合であつても、右遺贈が、妻との婚姻の実体をある程度失つた状態のもとで右の関係が約6年間継続したのちに、不倫な関係の維持継続を目的とせず、専ら同女の生活を保全するためにされたものであり、当該遺言において相続人である妻子も遺産の各3分の1を取得するものとされていて、右遺贈により相続人の生活の基盤が脅かされるものとはいえないなど判示の事情があるときは、右遺贈は公序良俗に反するものとはいえない。
理由
上告代理人下光軍二,同佐藤公輝の上告理由第一について 所論の点に関する原審の事実認定は,原判決挙示の証拠関係に照らして首肯するに足り,その判断の過程に所論の違法はない。論旨は,ひつきよう,原審の専権に属する証拠の取捨判断,事実の認定を非難するものにすぎず,採用することができない。
同第二,第三について
原審が適法に確定した,(1)亡Dは妻である上告人A1がいたにもかかわらず,被上告人と遅くとも昭和44年ごろから死亡時まで約7年間いわば半同棲のような形で不倫な関係を継続したものであるが,この間昭和46年1月ころ一時関係を清算しようとする動きがあつたものの,間もなく両者の関係は復活し,その後も継続して交際した,(2)被上告人との関係は早期の時点で亡Dの家族に公然となつており,他方亡Dと上告人A1間の夫婦関係は昭和40年ころからすでに別々に生活する等その交流は希薄となり,夫婦としての実体はある程度喪失していた,(3)本件遺言は,死亡約1年2か月前に作成されたが,遺言の作成前後において両者の親密度が特段増減したという事情もない,(4)本件遺言の内容は,妻である上告人A1,子である上告人A2及び被上告人に全遺産の3分の1ずつを遺贈するものであり,当時の民法上の妻の法定相続分は3分の一であり,上告人A2がすでに嫁いで高校の講師等をしているなど原判示の事実関係のもとにおいては,本件遺言は不倫な関係の維持継続を目的とするものではなく,もつぱら生計を亡Dに頼つていた被上告人の生活を保全するためにされたものというべきであり,また,右遺言の内容が相続人らの生活の基盤を脅かすものとはいえないとして,本件遺言が民法90条に違反し無効であると解すべきではないとした原審の判断は,正当として是認することができる。原判決に所論の違法はなく,論旨は,独自の見解に立つて原判決を論難するものにすぎず,採用することができない。よつて,民訴法401条,95条,89条,93条に従い,裁判官全員一致の意見で,主文のとおり判決する。最高裁判所第一小法廷 裁判長裁判官 谷口正孝 裁判官 角田 禮次郎 裁判官 高島益郎 裁判官 大内 恒夫 裁判官 佐藤 哲郎
なんとも言えない最高裁判決ですね・・相続人らが怒る気持ちがすごくわかります・・
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