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【平成18年7月14日,最高裁判所第2小法廷】給水条例無効確認等請求事件

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令和3年行政書士試験出題【問題22】,給水条例無効確認等請求事件,過去問はこちら


【問題】普通地方公共団体は、住民が公の施設を利用することについて不当な差別的取扱いをしてはならないが、この原則は、住民に準ずる地位にある者にも適用される。


【判示事項】

1 普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為が抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらないとされた事例


2 普通地方公共団体の住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用についての不当な差別的取扱いと地方自治法244条3項


3 普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例のうち当該普通地方公共団体の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金の3.57倍を超える金額に改定した部分が地方自治法244条3項に違反するものとして無効とされた事例


【裁判事項】

1 普通地方公共団体が営む水道事業に係る条例所定の水道料金を改定する条例の制定行為は,同条例が上記水道料金を一般的に改定するものであって,限られた特定の者に対してのみ適用されるものではなく,同条例の制定行為をもって行政庁が法の執行として行う処分と実質的に同視することはできないという事情の下では,抗告訴訟の対象となる行政処分に当たらない。


2 普通地方公共団体の住民ではないが,その区域内に事務所,事業所,家屋敷等を有し,当該普通地方公共団体に対し地方税を納付する義務を負う者など住民に準ずる地位にある者による公の施設の利用について,当該公の施設の性質やこれらの者と当該普通地方公共団体との結び付きの程度等に照らし合理的な理由なく差別的取扱いをすることは,地方自治法244条3項に違反する。


3 普通地方公共団体が営む水道事業の水道料金を定めた条例の改正により,当該普通地方公共団体の住民基本台帳に記録されていない別荘に係る給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金の3.57倍を超える金額とすることなどを内容とする水道料金の増額改定が行われた場合において,上記の別荘に係る給水契約者の基本料金が,当該給水に要する個別原価に基づいて定められたものではなく,給水契約者の水道使用量に大きな格差があるにもかかわらず,別荘以外の給水契約者(ホテル等の大規模施設に係る給水契約者を含む。)の1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘に係る給水契約者の1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に基づいて定められたものであることなど判示の事情の下では,上記の水道料金の改定をした条例のうち別荘に係る給水契約者の基本料金を改定した部分は,地方自治法244条3項に違反するものとして無効である。


『別荘給水契約者は,旧高根町の区域内に生活の本拠を有しないという点では 同町の住民とは異なるが,同町の区域内に別荘を有し別荘を使用する間は同町の住民と異ならない生活をするものであることなどからすれば,同町の住民に準ずる地位にある者ということができるから,本件改正条例による別荘給水契約者の基本料金の改定が地方自治法244条3項にいう不当な差別的取扱いに当たるかどうかについて,以下検討する。
『別荘給水契約者は,旧高根町の区域内に生活の本拠を有しないという点では 同町の住民とは異なるが,同町の区域内に別荘を有し別荘を使用する間は同町の住民と異ならない生活をするものであることなどからすれば,同町の住民に準ずる地位にある者ということができるから,本件改正条例による別荘給水契約者の基本料金の改定が地方自治法244条3項にいう不当な差別的取扱いに当たるかどうかについて,以下検討する。上告人の主張によれば,旧高根町は,本件改正条例による水道料金の改定において,別荘以外の給水契約者(これにはホテル等の大規模施設に係る給水契約者も含まれる。)の1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘給水契約者の1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に立った上,別荘給水契約者においてはおおむねその水道料金が基本料金の範囲内に収まっているため基本料金の額により負担額の調整をすることとし,本件別表のとおり別荘給水契約者の基本料金を定めたというのである。
一般的に,水道事業においては,様々な要因により水道使用量が変動し得る中で最大使用量に耐え得る水源と施設を確保する必要があるのであるから,夏季等の一時期に水道使用が集中する別荘給水契約者に対し年間を通じて平均して相応な水道料金を負担させるために,別荘給水契約者の基本料金を別荘以外の給水契約者の基本料金よりも高額に設定すること自体は,水道事業者の裁量として許されないものではない。しかしながら,前記事実関係等によれば,旧高根町の簡易水道事業においては,平成8年度において,水道料金を年間50万円以上支払っている大口需用者が29件あり(記録によれば,これらの大口需用者はいずれも別荘以外の給水契約者であることがうかがわれる。),その年間水道使用量は同町の簡易水道事業における総水道使用量の約20.3%に当たり,一方,別荘給水契約者の件数は1324件であり,その年間水道使用量は同町の簡易水道事業における総水道使用量の約4.7%を占めるにすぎないというのである。このように給水契約者の水道使用量に大きな格差があるにもかかわらず,上告人の主張によれば,本件改正条例による水道料金の改定においては,ホテル等の大規模施設に係る給水契約者を含む別荘以外の給水契約者の1件当たりの年間水道料金の平均額と別荘給水契約者の1件当たりの年間水道料金の負担額がほぼ同一水準になるようにするとの考え方に基づいて別荘給水契約者の基本料金が定められたというのである。公営企業として営まれる水道事業において水道使用の対価である水道料金は原則として当該給水に要する個別原価に基づいて設定されるべきものであり,このような原則に照らせば,上告人の主張に係る本件改正条例における水道料金の設定方法は,本件別表における別荘給水契約者と別荘以外の給水契約者との間の基本料金の大きな格差を正当化するに足りる合理性を有するものではない。また,同町において簡易水道事業のため一般会計から毎年多額の繰入れをしていたことなど論旨が指摘する諸事情は,上記の基本料金の大きな格差を正当化するに足りるものではない。そうすると,本件改正条例による別荘給水契約者の基本料金の改定は,地方自治法244条3項にいう不当な差別的取扱いに当たるというほかはない。』