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行政書士試験過去問民法 物上代位判例【一問一答】

【行書一答】
【問題66】対抗要件を備えた抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され、譲受人が第三者に対する対抗要件を備えた後であっても、第三債務者がその譲受人に対して弁済する前であれば、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。【平成26年出題】

【平成10年1月30日, 最高裁判所第2小法廷,取立債権】

【判事事項】

抵当権者による物上代位権の行使と目的債権の譲渡


【裁判要旨】

抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができる。


【参照法条】

民法304条,民法372条,民法467条

『一 本件は、抵当権者である上告人が物上代位権を行使して差し押さえた賃料債権の支払を抵当不動産の賃借人である被上告人に対して求める事案である。被上告人は、右賃料債権は上告人による差押えの前に抵当不動産の所有者であるD建設株式会社から株式会社Eに譲渡され被上告人が確定日付ある証書をもってこれを承諾したから、上告人の請求は理由がないと主張する。上告人は、右主張を争うとともに、本件債権譲渡の目的は上告人の債権回収を妨害することにあるから右主張は権利の濫用であるなどと主張する。
上告人の本件請求は、D建設の被上告人に対する平成5年7月分から同6年3月分までの9箇月分の賃料6533万6400円(月額725万9600円)の支払を求めるものである。第一審判決は、賃料月額を200万円と認定した上、上告人の権利濫用の主張は理由があるから本件においては物上代位が債権譲渡に優先すると判断して、本件請求を1800万円の限度で認容すべきものとした。双方が各敗訴部分を不服として控訴したが、原判決は、第一審判決と同様の事実を認定した上、債権譲渡が物上代位に優先し、上告人の権利濫用の主張は失当であると判断して、被上告人の控訴に基づき第一審判決中上告人の請求を認容した部分を取り消して右部分に係る請求を棄却し(原判決主文第一、二項)、上告人の控訴を棄却した。
論旨は、専ら、原審認定事実を前提としても、債権譲渡が物上代位に優先し、かつ、上告人の権利濫用の主張は失当であるとした原審の判断には、法令の解釈適用の誤りがあると主張するものである。
二 原審の適法に確定した事実関係は、次のとおりである。
1 D建設は第一審判決添付物件目録記載の建物(建物の種類は「共同住宅店舗倉庫」。以下「本件建物」という。)の所有者である。
2(一)上告人は、平成2年9月28日、F産業株式会社に対し、30億円を、 弁済期を同5年9月28日と定めて貸し付けた。
(二)上告人とD建設は、平成2年9月28日、本件建物について、被担保債権を上告人のF産業に対する右貸金債権とする抵当権設定契約を締結し、かつ、その旨の抵当権設定登記を経由した。
(三)F産業は、平成3年3月28日、約定利息の支払を怠り、右貸金債務についての期限の利益を喪失した。
(四)F産業は、平成4年12月、倒産した。
3 D建設は、本件建物を複数の賃借人に賃貸し、従来の1箇月当たりの賃料の合計額は707万1762円であったが、本件建物の全部を被上告人に賃貸してこれを現実に利用する者については被上告人からの転貸借の形をとることとし、平成5年1月12日、本件建物の全部を、被上告人に対して、期間を定めずに、賃料月額200万円、敷金1億円、譲渡転貸自由と定めて賃貸し、同月13日、その旨の賃借権設定登記を経由した。
4 Eは、平成5年4月19日、D建設に対して7000万円を貸し付けた。D建設とEは、その翌日である同月20日、本件建物についての平成5年5月分から同8年4月分までの賃料債権を右貸金債権の代物弁済としてD建設がEに譲渡する旨の契約を締結し、被上告人は、同日、これを承諾した。右三者は、以上の趣旨が記載された債務弁済契約書を作成した上、これに公証人による確定日付(平成5年4月20日)を得た。
5 東京地方裁判所は、平成5年5月10日、抵当権者である上告人の物上代位権に基づき、D建設の被上告人に対する本件建物についての賃料債権のうち右2記載の債権に基づく請求債権額である38億6975万6162円に満つるまでの部分を差し押さえる旨の差押命令を発し、右命令は同年6月10日に第三債務者である被上告人に送達された(なお、上告人は、その後、被上告人の転借人に対する本件建物の転貸料債権について抵当権に基づく物上代位権を行使して差押命令を得たので、同6年4月8日以降支払期にある分につき、右賃料債権の差押命令の申立てを取り下げた。)。
三 原審は、右事実関係に基づき、民法304条1項ただし書が払渡し又は引渡しの前の差押えを必要とする趣旨は、差押えによって物上代位の目的債権の特定性を保持し、これによって物上代位権の効力を保全するとともに、第三者が不測の損害を被ることを防止することにあり、この第三者保護の趣旨に照らせば、払渡し又は引渡しの意味は債務者(物上保証人を含む。)の責任財産からの逸出と解すべきであり、債権譲渡も払渡し又は引渡しに該当するということができるから、目的債権について、物上代位による差押えの前に対抗要件を備えた債権譲受人に対しては 物上代位権の優先権を主張することができず、このことは目的債権が将来発生する賃料債権である場合も同様であるとして、上告人の本件請求は理由がないものと判断した。
四 しかしながら、原審の右判断は是認することができない。その理由は、次のとおりである。
1 民法372条において準用する304条1項ただし書が抵当権者が物上代位権を行使するには払渡し又は引渡しの前に差押えをすることを要するとした趣旨目的は、主として、抵当権の効力が物上代位の目的となる債権にも及ぶことから、右債権の債務者(以下「第三債務者」という。)は、右債権の債権者である抵当不動産の所有者(以下「抵当権設定者」という。)に弁済をしても弁済による目的債権の消滅の効果を抵当権者に対抗できないという不安定な地位に置かれる可能性があるため、差押えを物上代位権行使の要件とし、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前には抵当権設定者に弁済をすれば足り、右弁済による目的債権消滅の効果を抵当権者にも対抗することができることにして、二重弁済を強いられる危険から第三債務者を保護するという点にあると解される。
2 右のような民法304条1項の趣旨目的に照らすと、同項の「払渡又ハ引渡」には債権譲渡は含まれず、抵当権者は、物上代位の目的債権が譲渡され第三者に対する対抗要件が備えられた後においても、自ら目的債権を差し押さえて物上代位権を行使することができるものと解するのが相当である。
けだし、(一)民法304条1項の「払渡又ハ引渡」という言葉は当然には債権譲渡を含むものとは解されないし、物上代位の目的債権が譲渡されたことから必然的に抵当権の効力が右目的債権に及ばなくなるものと解すべき理由もないところ、 (二)物上代位の目的債権が譲渡された後に抵当権者が物上代位権に基づき目的債権の差押えをした場合において、第三債務者は、差押命令の送達を受ける前に債権譲受人に弁済した債権についてはその消滅を抵当権者に対抗することができ、弁済をしていない債権についてはこれを供託すれば免責されるのであるから、抵当権者に目的債権の譲渡後における物上代位権の行使を認めても第三債務者の利益が害されることとはならず、
(三)抵当権の効力が物上代位の目的債権についても及ぶことは抵当権設定登記により公示されているとみることができ、
(四)対抗要件を備えた債権譲渡が物上代位に優先するものと解するならば、抵当権設定者は、抵当権者からの差押えの前に債権譲渡をすることによって容易に物上代位権の行使を免れることができるが、このことは抵当権者の利益を不当に害するものというべきだからである。そして、以上の理は、物上代位による差押えの時点において債権譲渡に係る目的債権の弁済期が到来しているかどうかにかかわりなく、当てはまるものというべきである。
五 以上と異なる原審の判断には法令の解釈適用を誤った違法があり、右違法は判決に影響を及ぼすことが明らかであって、論旨はこの趣旨をいうものとして理由がある。そして、前記事実関係の下においては、上告人の本件請求は1800万円 (平成5年7月分から同6年3月分までの月額200万円の割合による賃料)の限度で理由があり、その余は理由がないというべきであるから、第一審判決の結論は正当である。したがって、原判決のうち、第一審判決中被上告人敗訴の部分を取り消して右部分に係る請求を全部棄却すべきものとした部分(原判決主文第1、2項) は破棄を免れず、右部分については被上告人の控訴を棄却すべきであるが、上告人の控訴を棄却した部分は正当であるから、その余の本件上告を棄却すべきである。よって、裁判官全員一致の意見で、主文のとおり判決する。』


【民法(改正対応)】↓

304条(物上代位)
先取特権は、その目的物の売却、賃貸、滅失又は損傷によって債務者が受けるべき金銭その他の物に対しても、行使することができる。ただし、先取特権者は、その払渡し又は引渡しの前に差押えをしなければならない。
2 債務者が先取特権の目的物につき設定した物権の対価についても、前項と同様とする。

第372条(留置権等の規定の準用)
第296条、第304条及び第351条の規定は、抵当権について準用する。

第467条(債権の譲渡の対抗要件)
債権の譲渡(現に発生していない債権の譲渡を含む。)は、譲渡人が債務者に通知をし、又は債務者が承諾をしなければ、債務者その他の第三者に対抗することができない。
2 前項の通知又は承諾は、確定日付のある証書によってしなければ、債務者以外の第三者に対抗することができない。


解答〇